YouTubeやNETFLIXといった動画コンテンツの流行に伴い、スマートフォンの大画面化が進む昨今。特に、処理性能に優れ、アプリゲームなども快適にこなせるハイエンドスマートフォンは、この傾向が顕著に出ているといえます。
具体的に、2022年発売のハイエンドスマートフォンを見比べてみると、「Xperia 1 IV」が約6.5インチ、「AQUOS R7」が約6.6インチ。比較的コンパクトなサイズ感の「iPhone 14 Pro」や「Xperia 5 IV」でも約6.1インチと、6インチ以上が当たり前になっています。
そんな中、2022年11月に新発売となる「ASUS Zenfone 9」は、5.9インチディスプレイを搭載したコンパクト×軽量なハイエンドスマートフォンとなります。前モデル「Zenfone 8」と同様に、小さな筐体に最先端の高性能を詰め込みながら、おサイフケータイ機能や防水防塵といった“日本仕様”にもしっかりと対応している、扱いやすい製品です。
本記事では、実際にZenfone 9を試しながら、使用感や操作性、機能について紹介していきます。スマートフォンは、片手にすっぽりと収まるサイズ感が良いという人は、ぜひ参考にしてください。
デザイン・ディスプレイ
先にも触れた通り、Zenfone 9のディスプレイサイズは5.9インチ。有機ELパネルとなっており、120Hzリフレッシュレートにも対応しています。本体サイズは高さ約146.5mm×幅約68.1mm×奥行き約9.1mmで、最新のスマートフォンとしてはかなりコンパクトなサイズ感。成人男性としては小さい筆者の手のひらでも、すっぽりと収まります。奥行きは若干分厚い印象もありますが、横幅が狭い分、ある程度の厚みがあったほうが手になじみやすいので、実際に持っても違和感はありません。
ディスプレイサイズに伴い、本体質量が約169gに収められているのも、使い勝手を向上させるポイントです。扱いやすいのはもちろん、サイズも相まって、ポケットに入れて持ち運ぶ際にも、ストレスになりにくいのが魅力です。
背面には、ポリカーボネートとポリウレタンを配合した新素材を採用しており、大理石のような独特な手触り。指紋を含む汚れが目立たないため、カバーを付けずに使用するのもおすすめです。本体カラーはミッドナイトブラック、ムーンライトホワイト、サンセットレッド、スターリーブルーの4色となっており、シンプルな色合いから、ポップでかわいいデザインまで用意されています。なお、購入時には本体カラーに適した専用カバーも同梱されます。
ボタン類は本体右側面に集約されており、上から音量調節ボタン、指紋認証センサー内蔵の電源ボタンとなります。本体底面にはUSB Type-CポートとSIMスロット、天面にはイヤホンジャックを搭載。有線イヤホンユーザーにもおすすめです。
機能・性能
片手でも扱いやすいコンパクトスマートフォンということもあり、Zenfone 9には片手操作に適した機能が豊富に搭載されているのが特徴です。
電源ボタン「Zen Touch」を使った「スマートキー機能」は特に優秀。ダブルクリック、長押しの操作に、Googleアシスタントの起動や音声入力、アプリの起動といった任意のアクションを設定できます。また、Zen Touchのスワイプ操作で通知の表示やWebページの先頭・最後に移動するといった操作も行えます。
実際に使っていて少し気になったのが、本体を握って使用する際や、本体を横に持って操作する際に、スマートキー機能のスワイプ操作が誤作動してしまうシーン。慣れればこのようなミスは少なくなりますが、初めは若干ストレスに感じる人もいるかもしれません。
本体背面のダブルタップにも、スクリーンショットやカメラアプリのレコーダーの起動といったショートカットを割り当て可能。また、設定したアプリに素早くアクセスできる「エッジツール」機能も搭載されています。
これらの機能を駆使することで、Zenfone 9では大抵の操作が片手で行えます。電車内で立っている時などにも、安定した操作ができるように、多数の独自機能が搭載されているのも、本製品の魅力です。
バッテリー容量は4300mAhで、本体サイズを考えれば十分な容量でしょう。また、バッテリーの劣化を抑える「低速充電」や「予約充電」といった機能も搭載されているので、長期間同じスマートフォンを使いたいという人でも安心でしょう。
個人的に、Zenfone 9を使っていて、最も気に入っているのが、オーディオ性能。基本的に大きい筐体のほうが、大型のスピーカーを搭載できるため、音質にもこだわりを出しやすいと考えられるのですが、Zenfone 9はコンパクトな筐体ながら、キビキビとした迫力のある音の再生ができます。最大音量も大きいので、外付けスピーカーなどがなくても、音楽やゲームを楽しむことができます。
そのほか、搭載CPUは最新世代の「Snapdragon 8+ Gen 1」。高性能がゆえに、発熱が心配という人もいるかもしれませんが、Zenfone 9ではベイパーチャンバーが搭載されており、対策は万全。実際に負荷の大きいゲームなどをプレイしていると、本体全体がほんのりと温かくなることがわかりますが、極端に一部が厚くなることはなく、うまく排熱できていることがわかります。
メモリ、ストレージの構成は下記の3モデルに分かれています。
・メモリ8GB+ストレージ128GB
・メモリ8GB+ストレージ256GB
・メモリ16GB+ストレージ256GB
最小構成のメモリ8GB+ストレージ128GBモデルのみが、4色展開となっており、メモリ8GB+ストレージ256GBモデルはミッドナイトブラック、ムーンライトホワイトの2色、最大構成のメモリ16GB+ストレージ256GBではミッドナイトブラックの1色のみとなります。価格が最も抑えられる最小構成にカラーバリエーションを持たせる意図も十分理解できますが、サンセットレッド、スターリーブルーの2色は他メーカーのスマートフォンではあまり見られない、特徴的なカラーなので、どちらか一方でも、上位モデルで展開欲しかったと感じています。
そのほか、前モデルより搭載されているIP65/IP68の防水防塵性能やおサイフケータイ機能にもしっかりと対応。メイン端末としても十分扱いやすい仕様になっています。
カメラ
アウトカメラは5000万画素の広角カメラと、1200万画素の超広角カメラの2眼構成。特徴的なのが、広角カメラに内蔵されている、6軸の「ハイブリッドジンバルスタビライザー」で、写真、動画のどちらにおいても、手振れが少なく、きれいな撮影ができるようになっています。
下図はすべてZenfone 9にて撮影し、サイズを調節したのみの写真となります。
色味は若干暗めなものの、精細な写真の撮影が可能。特にAF速度は優秀で、さっとスマートフォンを構えるだけで、被写体を認識し、ピンを合わせてくれます。
近年のハイエンドスマートフォンの多くに搭載されている、望遠レンズは非搭載となっており、デジタルズームは最大8倍。望遠レンズがない点は少し残念ですが、本体のサイズ感を加味すると仕方のない部分でしょう。最大倍率での撮影は、デジタルズームということもあり、画質の劣化が見られますが、文字を視認できるレベルは保たれています。
カメラアプリは、下部に表示されるタブを切り替えることで、「動画」「ポートレート」「タイムラプス」のように撮影モードを変えられます。加えて、画面を上から下にスワイプすることで、フラッシュや比率の変更ができるメニューが表示されます。これも、Zenfone 9を片手で簡単に操作するための機能といえるでしょう。
コンパクトスマートフォンの使い勝手を追求したZenfone 9
冒頭でも触れた通り、大画面化が進むスマートフォン市場において、あえて逆方向に進んだZenfone 9。ただ小さくて持ちやすいだけでなく、オーディオ性能やカメラ性能、排熱といった各ポイントにもこだわりが感じられます。
販売価格は、メモリ、ストレージの構成によって異なります。それぞれ下記の通り。
・メモリ8GB+ストレージ128GB:9万9800円
・メモリ8GB+ストレージ256GB:11万2800円
・メモリ16GB+ストレージ256GB:12万9800円
いずれのモデルも、ハイエンドスマートフォンとしてはかなり抑えられた価格も魅力。コンパクトボディを活かした多数の機能を搭載しており、使えば使うほど馴染む「相棒」のような存在になることを予感させてくれる、多くの人に体験してほしい1台です。
取材・文/佐藤文彦