10月20日の外国為替市場で円安が進行し、32年ぶりに1ドル=150円台になった。この円安はどこまで続くのだろうか。
円安が生活にも影響
「ガソリンが高い」「食品の値上げ」「電気料金の値上げ」など生活費を圧迫するような頭が痛い知らせが多い。
日本は食料自給率が低く、カロリーベースの食料自給率は38%(令和3年度)と残り60%超は輸入に頼っている。小麦、牛肉、豚肉、果物、大豆・・・たくさんの食材を輸入に頼っている。たとえ、国内産だとしてもその牛がえさとして食べるとうもろこしは100%輸入、野菜や果物のビニールハウスのための燃料も輸入となっている。
輸入するには、円で外貨のものを買っているため、円の価値が下がるつまり円安になると、同じ価値でも以前より円をたくさん出さないと買えないことになり、輸入品の価格が上がり、さらに輸入品をえさまたは原材料とする国内産のものも値上がりしてしまう。
日経新聞によると、2022年度の世帯(2人以上)の支出額は全体平均で2021年度に比べて約8万円増えるらしい。その分給与が増えていれば良いが、増えていない場合は負担が増すことになる。
輸出企業が多い日本にとっては、円安は企業の業績上げる効果があり、輸出企業に勤める人にとっては円安も悪いばかりではない。
ただ、このまま円安が続けば生活費を圧迫していくことになる。円安はいつまで続くのだろうか。
なぜこんなに円安になったのか
これまで景気が緩やかに拡大していたが、2020年に新型コロナウィルス感染症が拡大し、ロックダウンなどで経済が停滞した。そこで、各国の中央銀行は大幅な金融緩和政策をとり、丘が市場に出回り米国株式市場は史上最高値を更新し、経済も回復してきた。
そのなかで、米国の物価は上昇し、2022年9月時点の米国消費者物価指数は前年比8.2%、11月には8.1%予想となっている。
米国国内では、2021年ではコロナ後の需要の急回復と供給不足から、一時的に消費者物価指数が上昇しただけのこととらえ、利上げはせず、量的緩和である国債買入を段階的に減らしていた。しかし、2021年末の12月には米国消費者物価指数は前年比6.8%と7%近くまで急上昇し、2022年にはゼロ金利解除と利上げを開始し現在3.25%まで利上げした。金利が3.25%でも、消費者物価指数が8.2%だと、ドルの価値は4.95%目減りすることになる。例えば、100万円持っていたら年間約5万円目減りしていくことになる。
まだまだ物価は落ち着きそうにないため、米国国内で物価がどんどん上がっていく状態を鎮静化するためには、金利を今後も引き上げていく見込みだ。
コロナ後はゼロ金利と量的緩和により、低い金利でドルを調達できることから大量の資金が米国株式市場などに流れていた。金利を上げることで、低金利だからと余分に借りて購入、投資する動きはなくなっていき、物の価値がバブルのように上がっていく動きを冷やすことができるだろう。
一方世界のなかでは、米国金利が上がると、米ドル投資がさらに魅力を増す。米ドル建の債券を高い金利で運用できるし、米ドルは安全資産と考えられているから、米ドルの価値は増し、ドルが世界で独歩高している。
しかしながら、米ドル建債務を持つ新興国は金利が上がることで支払利息負担が増え、日本でも急激な円安で輸入品が上がってしまうなど、米国以外の国までその影響は及ぶ。
米国バイデン大統領いわく「ドルの強さに懸念していない」とのことから、米国はドル高を容認し、米国国内のインフレ鎮静化を優先するものと思われる。
2000年代の円高への流れ
現在米国の利上げにより、ドル高円安の動きとなっているが、2000年代の動きで見ると米国が利上げをすると、その後バブル崩壊、円高という流れになっている。
しばらくは、米国が段階的に利上げすることで、ドル高の流れは変わらないものと思われる。
しかしながら、段階的な利上げによりインフレを少しずつ抑え、うまく景気後退もしないようにするのは、過去の経験則からなかなか難しい。これまでは米国利上げにより急激に景気が冷え込み、バブル崩壊、円高の流れとなっている。過去が繰り返される可能性は高い。
(参考)
日経新聞 2022年10月15日朝刊「止まらぬ円安、家計や企業に痛み 生活費は年8万円増も」
取材・文/大堀貴子
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