太陽電池や風力発電などの再生可能エネルギーはエコで安価な一方、発電量が不安定という課題があるため、電気を貯める蓄電地との併用が必要とされている。蓄電池の主要な原材料であるリチウムイオンも供給や環境面で問題があることから、代替技術としてフィンランドのPolar Night Energy 社が開発する世界初の「砂電池」が大きな注目を集めている。
砂電池といっても発電するのではなく、砂が入った専用タンクで再生可能エネルギーから作った熱を数ヶ月間保存ができる装置で、主に水を温めるボイラーとして使用する。タンクの構造はシンプルで、可燃物を含まなければどんな砂でも使える上にどこでも設置でき、運用も含めてコストが低いというメリットがある。600度から1000度に加熱した砂からは最大で100MWの熱を作り出すことができ、フィンランドでは電力会社と協力し、地域に敷設されている温水を使用した暖房ネットワークや市営プールなどの熱源として利用されている。
現在は貯めた熱から再度電気を作るにはガスタービンを使用するなどコストがかかる上に非効率だが、研究そのものはあることから将来は本当に砂から電気を作る「砂電池」が登場するかもしれない。
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日本の家庭用エネルギー消費は給湯が約30%を占めており、この冬は燃料価格の高騰が心配されていることから、低コストで環境にやさしい「砂電池」が普及するかもしれない。
砂で熱を貯めるタンクは使用する熱量でサイズを変えられ、シンプルな構造で製造コストを抑え、メンテナンスはほぼ不要で数十年間使用できる。(@Polar Night Energy)
既存の再生可能エネルギーの短所を補う砂電池は、ほとんどの熱伝達システムに接続できてヒートポンプと互換性があることも注目されている。(@Polar Night Energy)
文/野々下 裕子