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米中対立のカギを握る台湾の半導体企業「TSMC」の正体

2022.11.12

TSMCからみえる半導体の地政学

特にコロナ禍以降、サプライチェーンが滞り、世界的な半導体不足がさまざまな産業へと波及していますが、現在、半導体をめぐる攻防は国と国の激しい勢力争いにも発展しています。

なぜならハイテク産業が集めた情報はデータセンターに集まりますが、集めた情報の心臓部に当たる部分が半導体チップだからです。

また自動車にも半導体が使われています。通常の自動車の場合、半導体は最低でも30個は使用されており、高級車になると100個以上の半導体チップが使われているといいます。

さらに今後やってくる電気自動車(EV)の時代や自動運転の時代にになれば半導体の役割はさらに重要になるでしょう。

このように半導体の能力は産業の成長へと直結しており、半導体をめぐる攻防は今後激しくなることは間違いありません。

そこで今回は特に激化する米中の半導体をめぐる対立とカギとなる台湾の半導体企業TSMC(台湾セミコンダクター)の行方から、半導体の地政学について解説していきます。

TSMCとはどんな企業なのか

半導体を受託生産するファウンドリ(半導体チップの製造を行う企業)として世界最大手の企業が台湾に本拠地があるTSMCです。現在、世界の半導体技術はTSMCが握っているといっても過言ではないほど影響力は絶大です。

実際、TSMCの技術力は他のファウンドリを圧倒しており、米国の大手半導体企業のエヌビディアやクアルコムなどの世界的半導体メーカーのほとんが製造をTSMCに委託しています。

つまりTSMCの生産力なくして半導体企業は製品を市場に送り出せないことを意味しています。

そのため半導体メーカーの多くはTSMCに依存している構図にもなっているのです。

そして台湾にあるTSMCの技術を呼び込もうと、各国が誘致に躍起になっています。

なぜなら次世代産業のカギとなる半導体製造において、TSMCは欠かすことができない存在だからです。

半導体をめぐる地政学とは

TSMCは2020年5月に新たに米アリゾナ州に工場を建設する計画を発表しましたが、その裏には米政府の強力な働きかけがあったといいます。

実は米国といえども半導体分野においては設計自体は優れている企業は豊富にあるものの、半導体の製造となると有力なファウンドリーが国内には存在していません。もしもTSMCが米国にあれば国内だけでサプライチェーンを完結することができます。

とはいえ懸念材料も存在します。たとえばTSMCのある台湾と比べて米国で工場を建設する場合、コストが2~3倍かかるといわれており、その差を米国側が補助金で埋めるかたちになるはずです。仮に米国政府の補償が少ない場合、TSMCのビジネス上のメリットが減ることになります。そのためTSMCのアリゾナ工場の完成(2024年予定)までに、TSMCと米国政府の間ではギリギリまで細かな交渉が続くことが予想されます。

なぜこれほどまでにバイデン政権がTSMCに躍起になるのかというと、半導体のサプライチェーンを握ることが国家安全保障上とても重要だからです。一方のTSMC側の企業論理で考えれば、米国が高コストを補填してくれない限りビジネスとしては魅力に欠けるはずです。

こうした2つの異なる論理がどのような着地点を見せるのかも今後の注目ポイントでしょう。

一方の中国はといえば、中国政府も米国政府と同じように国内で半導体のサプライチェーンを簡潔したいと考えています。そのため米国がTSMCを誘致したように、中国も台湾の半導体能力を欲しています。また地政学的にも中国と台湾はとても近いことから、どうにかして手中に収めたいとも考えるでしょう。

だからこそ台湾をめぐる米中の対立は激化しており、今後も半導体をめぐる両者の主導権争いが長く続くことは間違いないでしょう。両国にとって譲れない技術が台湾にはあるのです。

半導体とゲーム産業の関係

実は半導体とゲーム産業も近い関係にあります。

たとえば米ゲーム会社のエピック・ゲームズは「アンリアルエンジン」というゲームエンジンを開発しており、これはゲーム開発だけでなくNASAの宇宙飛行士の訓練やウォルト・ディズニーの映画製作にも使用されるなど大成功しています。

またエピック・ゲームズはフォートナイトを開発しており、このゲームにはエヌビディアの技術が投入されることでより没入感の高いゲーム体験を実現しています。

実際、エピック・ゲームズのゲームはVR空間とも相性が良いと期待されており、いずれやってくるメタバース時代において、半導体市場を牽引する存在としてゲーム産業はさらに発展していくことが予想されます。

今よりも求められるデータ量が膨大になるため、それを処理する半導体の開発が今後追いついていくことで、メタバースやゲーム産業のハード自体もさらに進化していくはずです。

そのとき最先端の半導体技術がある国がゲーム産業においても有利になることは間違いなく、米国と中国は次世代産業においても、国家間、あるいは企業間でライバル関係にあり続けることが予想されます。

また日本企業のなかではプレイステーションを持つソニーがエピック・ゲームズにも投資をしており、ソニーがVR空間で他国にはない新たな世界観を提示できるのかについても注目したいところです。

このようにゲーム産業は先端半導体の宝庫でもあるのです。

おわりに

コロナ禍ではっきりとしたことのひとつが、良くも悪くもサプライチェーンの影響は国を超えて、さまざまな産業に波及するという事実です。

特に半導体は戦略物資であるため、半導体をめぐる攻防は国家間をめぐる地政学を考えるうえでも外すことができない重要な分野といえます。

半導体という視点で世界の潮流を眺めることで新たな発見があるかもしれません。

少なくとも今後10年、20年先の未来を考える上で、半導体を通して世界の潮流を考察することが重要であると筆者は考えます。

文/鈴木林太郎

編集/inox.

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