全国初の太陽光パネル設置義務化の条例。東京都は3年後の2025年4月に始める方針を固めた。小池都知事肝いりの政策の一つだが、これは新築一戸建て住宅に太陽光パネルの設置を義務化するもの。
現在、都内で住まいの購入を考えている人や新築一戸建てを夢見ている人にとっては、気になって仕方ないことだろう。毎日、真面目に新聞やニュースや都のHPを見ていなければ気付かないまま過ぎ去っていく事案かもしれない。
「太陽光パネルなんて自分とは関係ない」そう思っている人も、いつの間にか義務化になっているかもしれない。だから今のうちに知っておくべきだ。
そもそも太陽光パネルについては以前から様々な意見が飛び交っていたため、一度は耳にしたことがあるはず。だが、一体なぜ太陽光パネルが必要なのか?メリットはなんなのか?そもそも設置する理由がわからない人も多いのではないだろうか。
実はそんな幾つかの疑問について東京都が説明している。今回は全国初の条例について大事なポイントを中心に抜粋して紹介していこう。
「太陽光パネルの設置義務化の条例」に関する“素朴なギモン”
Q:なぜ「太陽光パネルの設置義務化の条例」を新設するのか?
A:中小規模新築建物(延床面積2,000㎡未満)に対し新たに制度を導入することで更なる脱炭素化やレジリエンス向上を促進するためです。
現在、都内CO2排出量の約7割が建物でのエネルギー使用に起因しており、脱炭素化に向け建物への更なる対策が急務となっています。
未来の東京の姿を形づくる新築建物への対策が脱炭素化・良質な都市環境の実現に向け極めて重要と考えています。
Q:日当たりの悪い住宅や狭小住宅も設置しなければならない?
A:本制度は義務対象の住宅供給事業者に対し、日照などの立地条件や住宅屋根の大きさなど個々の住宅の形状等を踏まえ、太陽光パネルの設置を進め、供給する建物全体で設置基準の達成を求める仕組みとなっています。
義務対象の事業者がどの建物に太陽光パネルを設置するかについては、日照などの立地条件や住宅の形状等を踏まえて判断することとなります。
なお、屋根の面積が一定規模未満の住宅等については太陽光パネルの設置対象から除外されます
Q:太陽光パネル設置のメリットは?
A:例えば4kWの太陽光パネルを設置した場合、初期費用92万円が10年(現行の補助金を活用した場合6年)で回収可能です。
また、30年間の支出と収入を比較すると最大152万円のメリットを得られる計算となっています。このほかリース等を利用して初期費用をゼロにする方法もあります。
Q:経済的メリット以外の利点は?
A:災害時の生命線となる電力の確保や脱炭素社会の実現に貢献します。
災害時には、スマホやテレビ、冷蔵庫などの家電機器等が重要な役割を果たし、停電時等においても自立運転ができる太陽光パネルの設置は、生命線となる電力を確保する役割を果たします。
また4kWの太陽光パネルで1年間発電した場合のCO2削減量はスギ林約200本分の吸収量に相当し、設備を導入することで脱炭素社会の実現に大きく貢献することができます。
Q:太陽光パネルの設置義務化は東京だけ?
A:海外諸都市・国内自治体においても脱炭素化に向けた取り組みが進んでいます。
米国ではニューヨーク市やカリフォルニア州でも義務化を行ない、国内では京都府・市が2022年から一定規模以上の新築建物等を対象に設置の義務化を行なっています。さらに群馬県や川崎市でも設置の義務化が予定されています。
太陽光パネルにまつわる気になるウワサ…東京都はこう語る!
東京都は少々突っ込んだ質問にも回答している。ここからはそんなQ&Aを紹介していこう。
Q:太陽光パネルは火事の際は消火できないと聞いたが…
A:太陽光パネルが設置されている住宅等の火災においても、水による消火は可能であり、消火活動において直接水をかける場合は活動隊員の安全確保の観点から、噴霧状の放水や放水距離を確保するほか、必要に応じて絶縁性の高い防護衣、手袋及び長靴等を着用しています。
さらに鎮火後、必要に応じて太陽光パネルを消防活動用の遮光シートで覆うことで再出火防止を図っています。
Q:太陽光パネルの原料には鉛など有害なものが使われているのでは?廃棄により有害物質が溶出して環境破壊につながることは?
A:太陽光パネルによっては鉛などの有害物質が使用されているものもあり、廃棄に当たっては地下水汚染対策がされている管理型最終処分場に埋め立てるなど専門事業者を通じた適切な処理が行なわれます。
なお、太陽光パネルに含まれる有害物質の含有情報についてはメーカー等が公表しています。
Q:ライフサイクルで考えると太陽光パネルは環境にやさしいのか?
A:太陽光パネルは発電開始1〜3年でライフサイクルで消費するエネルギーを回収し、その後も自然のエネルギーで電力を生み出し続けることができます。今後の発電性能向上等により、この回収期間はさらに短くなるものと予想されています。
Q:太陽光パネルの生産は中国に集中しており、新彊ウイグル自治区における人権問題が懸念されているが社会的な問題はないのか?
A:住宅用の太陽光パネルのシェアが多い国内メーカーのヒアリングによれば、当該地区の製品を取り扱っている事実はないとの回答を得ています。
都はヒアリング等を通じ、国内太陽光パネルメーカー等の状況把握に努めています。また、業界団体である太陽光発電協会では「持続可能な社会の実現に 向けた行動指針」を掲げ、会員企業、太陽光発電産業に係る事業者に人権の尊重を順守した事業活動を行なうこと等を推進しています。
都はこうした関係団体と連携を図りながら、国が策定する「サプライチェーンにおける人権尊重のた めのガイドライン」も踏まえ、SDGsを尊重した事業活動を推進していきます。
調べてみると東京都は都民が抱くような数々の疑問について回答していた。だからといってすべての人が納得し、すべての不安が解消されたわけではない。
水害等で水没した時に感電しないのか?既存の発電所をどれぐらい補えるのか?既存の発電所のコストダウン、電気料金のダウンにつながるのか?補うことにならずパネル設置費用が電気代に上乗せ、結局、国民負担にならないか?など、まだまだ不透明な部分も多く今後も議論されていくべきだろう。
文/太田ポーシャ