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求人募集でウソをつくとどうなる?「言うてた給料と全然違うがな!」 と会社を訴えた判例を解説

2022.11.13

こんにちは。

弁護士の林 孝匡です。

今回は、裁判例のザックリ解説です。

中途入社した社員が

「言うてた給料と全然ちがうがな!」

と、会社を訴えた事件を解説します。

この社員、慰謝料100万円を勝ちとりました。
(日新火災海上保険事件:東京高裁 H12.4.19)

人事部などの方にお伝えしたいことはザックリ、

●求人のときにウソついちゃダメ
●話、盛っちゃダメ

です。

逆に、転職を考えてる方は、ウソをつかれたら慰謝料請求できる可能性があります。

では、裁判例の解説に入ります。

就職情報誌に書かれていたこと

会社は、就職情報誌「B-ing(平成3年6月27日号)に、以下の記載をしていました。


第2新卒としてやり直してみたい方。〜もちろんハンデはなし。たとえば89年卒の方なら、89年に当社に入社した社員の現時点での給与と同等の額をお約束いたします


ものすごいダンディでスマートなオファーなんですが、

ウソっぱちだったんです。

社内での運用基準

会社は、そんな給与を払うつもりはありませんでした。

社内では、中途採用者に対して、そこまで厚遇はしないとの運用でした。

具体的には、新卒同年次定期採用者の現実の格付けのうち下限の格付けによって定めることと、決めていたんです。会社はそれを隠しました。

就職情報誌でウソをつき、英国風紳士を気取り、Xさんに「同じ世代の同期と同じ給料がもらえる」と期待を抱かせました。

入社に至るまでの経緯

Xさんは就職情報誌の情報を信じ、1次面接、2次面接を通過し、内定の通知をもらいました。面接でも。会社は真実を告げませんでした。

その後、Xさんは真実を知ることがないまま入社しました。

入社して、しばらく働いていたのですが…

言うてたんと違うがな!

入社から約1年後…。

Xさんが労働組合から資料を得るなどして調査した結果、驚愕しました。

自分の給料が、新卒同年次定期採用者の現実の格付けのうち下限の格付けだったからです。

言うてたんと違うがな!

Xさんが人事部次長に抗議したところ、

人事部次長は、

「採用時には下限にすることが決まっている。しかし努力すれば上がっていく」旨の説明をしました。ダンディさもスマートさのカケラもありません。

Xさんは「何だよそれ!」と激怒です。

労働基準監督署に駆け込む

Xさんは労基に駆け込みました。

労基さん!求人広告の内容と実際の雇用条件とが違います!

という申告です。

労基は動いてくれました。

会社に対して是正措置の行政指導を出してくれました。

会社からの嫌がらせ

ここからは、あるあるなんですが、会社からの嫌がらせが始まります。

「テメェ、労基にチクってんじゃねーよ」ってやつです。

Xさんは、肉体労働を中心とする部署への異動を命じられました。

印刷物の製本、運搬などカナリきつい部署でした。

Xさんは、たまりかねず、提訴!

裁判所の判断

慰謝料100万はらえ!との判決になりました。

理由は、

●求人雑誌でウソをついた
●Xさんはもらえる給与について騙された
●下限の事実を知って精神的衝撃を受けた
●労働基準法15条違反(労働条件の明示違反)
●信義誠実の原則に反する
●あと、配置転換の合理性もない!

というものでした。

まとめ

今回は、中途入社した社員が「言うてた給料と全然ちがうがな!」とブチギレた事件について解説しました。

人事部などの方は、

●求人のときにウソついちゃダメ
●話、盛っちゃダメ

ということを押さえていただければと思います。

転職を考えている方へのアドバイスとしては、録音しておきましょう。

「なんか耳障りいいこといってるけど、ホントかなぁ」

と感じることがあれば、録音です。

録音がなければ、言った言わないの水掛論になってしまうんです…。

録音があれば、かなり有利に戦えます。

今回は以上です。

では、また次の記事でお会いしましょう!

取材・文/林 孝匡(弁護士)
【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。コンテンツ作成が専門の弁護士です。
webメディアで皆様に知恵をお届け中。「こんなこと解説してくれや!」があれば、下記URLからポストお願いします。
 https://hayashi-jurist.jp(←プロフィールもコチラ)
 https://twitter.com/hayashitakamas1

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