車社会のアメリカ。「1人1台必要」とも言われるほど車の普及率は高く、日本のように公共交通機関が充実していないアメリカでは欠かせない足となる車。
しかし、その車の盗難率が高いのもアメリカ社会。特にCOVID-19以降、車の盗難は増えている。そんな車の盗難防止の歯止めとなる、車のライセンスプレートのデジタル化が始動している。
アメリカの車の盗難の現状
CHP(カリフォルニア・ハイウェイ・パトロール)の調べによると、筆者が住むロサンゼルス市は2019年は39.848件、2020年は52.187件、2021年は60.443件とCOVID-19以降車の盗難は増え続けている。
そして、そのほとんどが組織的に行われていることが多く、車の盗難に有する時間は1分以内で、盗んだ車の高額なパーツが分解され販売されているのだという。
この車の盗難は他人ごとではない。実際、我が家が保有するキャンピングカー(RV)も2019年に丸ごと盗難され、警察に届けたが、今のところ見つかっていない。そして、先日は知り合いのピックアップトラックが盗まれ、その車が発砲事件に巻き込まれるという映画のようなケースも発生した。
日本では車上荒らしに合うことはあっても、車が丸ごと盗まれることはなかなかなく、盗まれると大きな事件になるが、アメリカでは日常茶飯事。多くの車が盗まれているため、警察も一件一件探すことはしてくれず、我が家のキャンピングカーも防犯カメラに盗難されている様子が一部始終映っていたが、それでも見つからないのが現状だ。
デジタルライセンスがCAで解禁
2018年よりカリフォルニア州の一部でパイロット版のデジタルナンバープレート「RPlat」が始動していたが、今年カリフォルニア州全土で正式に許可され使用可能に。
「Reviver」が販売するこのデジタルライセンスプレートは、ただライセンスプレートがデジタル化されるだけではない。自分のスマートフォンを使用して、表示を白黒反転させることができるのはもちろん、車が盗まれた時の表示や、アンバーアラート(児童誘拐)の表示も可能。アプリを使って車がどこにあるかも検索可能になる。
また、アメリカでは1年に1度車の登録更新が必要で、更新ごとにライセンスプレートにシールを貼らないといけないが、この地味に面倒な手続きも、シールを貼る必要なくDMVとの面倒なやり取りもなくアプリで簡単に更新できるようになる。
現在このデジタルライセンスプレートが許可されているのは、カリフォルニア州、ミシガン州、アリゾナ州の3州と、テキサス州はコマーシャル車のみ許可されているが、他のいくつかの州も検討中とのことだ。
支払いはサブスクスタイルでも可能
料金は電池式のデジタルライセンスプレートの場合は$19.95/月(48カ月)のサブスクスタイルもしくは$215.40(4年間)。配線式の場合は$24.95/月(48カ月)もしくは$275.40(4年間)。
通常のライセンスプレートはお金がかからないため、これを高く思うか、もしくは盗難などのことを考え保険代ととらえるかは人それぞれだが、長きにわたり使用されてきたライセンスプレートも、デジタル化への波が押し寄せていることには間違いない。
今後このデジタルライセンスプレートが広がりを見せれば、新車の標準搭載も考えられる。
アメリカのライセンスプレートは州によりデザインが異なり、個人的には味があり好きだが、デジタルプレートが当たり前になる日もそう遠い日ではないのかもしれない。
文/舟津カナ
編集/inox.