2021年にシェアサービスが開始して以降、首都圏を中心に見かける機会が増えてきた電動キックボード。歩くよりも早く、アプリなどで手軽に利用できるという丁度よさがヒットの秘密なのでしょうか?
なにより、バイク乗りとして気になることが一点。それは「乗り物として面白いかどうか」です。
今回は電動キックボードシェアサービス『LUUP(ループ)』を利用し、ちょっとしたツーリングに出かけてみました。
電動キックボードの需要は増えている?
東京や大阪など、都市圏を中心に利用が増えている電動キックボード。2022年現在は小型特殊自動車として走行が可能で、普通自動車や普通自動二輪などの免許が必要です。
今後はさらに需要が増えそうかも…と思われるのは、2022年4月、道路交通法の一部を改正する法律案が可決されたから。いずれはほぼ自転車と同等の扱い、つまり免許が不要になるということが決まったのです。(ただし速度や通行帯などの条件付き)
今回筆者が利用した『LUUP』では、現在の道路交通法に適した電動キックボードを、基本料金50円+1分当たり15円で利用することができます。
具体的なレンタル方法は公式サイトを見ていただくとして、今回は1時間ほどお借りし、ツーリングに出かけてみることにしました。
意外と簡単、電動キックボードの操作
まずは簡単に、車両の操作方法をご紹介します。
LUUPの電動キックボードのサイズは1,300×591×1,350mmほど。乗ってみるとこんな感じです。
ボード面は広く、両足で乗っても十分なスペースがあります。身長156cmの筆者は軽く腕を曲げた状態でハンドルをにぎることができ、快適な乗車姿勢を保つことができました。
なによりも驚いたのが、25kgほどという車両重量。手で持ち上げられるほど軽く、比較的力の弱い女性であっても簡単に取り回しできるでしょう。
操作方法は意外に簡単です。スクーターのように、すべての操作を手で行います。
一点大きく違うのが、アクセルのオンオフの方法です。
電動キックボードの場合、アクセルは右手の親指の位置にあるレバーで操作します。細かな調整はできませんが、そもそも最大でも時速15kmしか出せないため、問題はありませんでした。
また操作とは関係ありませんが、すべての車両にスマホホルダーが設置されている点には驚きました。スマホで地図アプリの画面をチェックすることができるため、ユーザーにとっては非常に助かる装備です。
電動キックボードの走りは爽快!
それではさっそく街を走ってみましょう。筆者にとって、電動キックボードで公道を走行するのは初めてのこと。これまでは展示会のコース内でしか乗る機会がありませんでした。
緊張しながらも、まずは片足でこぎながら助走をつけます。そしてレバーをゆっくりと押すと…
「うわぁ、進み始めた!」
第一印象としては、地面を滑っているみたいな不思議な乗り心地。走り始めにグイっと加速がある以外は、一定速度でスルスルと無音で進むのです。
これはスピードが出ないよう制限されているためなのですが、まるで低空飛行を続ける金斗雲に乗っているような気分でした。まわりの風景や状況を見回す余裕があるゆったり速度のため、観光地での利用にはピッタリです。
操作感としては、カーブの際に視点・体重移動をする点においてはバイクと似ているかもしれません。しかし電動キックボードの場合は立って乗るため、より体全体を使って曲がる面白さがありました。
操作感は近いようで違うため、普段バイクに乗っている人ほど違和感を覚えやすいかもしれません。
5分ほど走ると運転に慣れ、徐々に楽しめるようになってきました。
「気持ちいい~!」
風を直接あび、髪をなびかせながら走る感覚はバイクでは有り得ません。ゆるやかに空気を切って進むのが気持ちいい!爽快感が抜群でした。(LUUPの電動キックボードはヘルメットの着用が任意です)
それだけではありません。パッと乗車してすぐに走り出せる手軽さや、押して歩ける身軽さはバイクにないものでした。
ちなみに、登り坂での性能も案外悪くありません。
坂に差しかかった瞬間にガクンとスピードが落ちるものの、ゆっくりと進み続けます。押して歩くよりは確実に楽に上り切ることができたのでした。かなり強烈な坂道だったため、この結果は意外です。
ただし、低速での走行はバランスがとりづらく、転倒のリスクが高まります。不安な方は押して歩いたり、坂道を避けるルートを通ったりすることをおすすめします。
電動キックボードで注意すべきポイント
走り始めて30分ほどたった頃でしょうか。違和感を覚えたのは腕でした。
「なんだか痺れてきたな…」
まるで分厚い皮膚が1枚できたような感覚が、両腕の指先から肘にかけてあるのです。原因は振動でした。
電動キックボードのサスペンションは小さく、衝撃吸収能力は一般的なバイクと比べるとかなり低めです。アスファルトの表面の凹凸によって車体全体が細かく震え続け、一時的な痺れに繋がっていたのです。
特に路面が荒い区間では「ブーン」という低い音が鳴り、ハンドルが振動しているのが目で見ても明らかなほど。
長時間乗るには路面が滑らかであることが条件といえますが、そんな道は滅多にありません。現実的に考えて、電動キックボードは長時間乗って遊ぶ用途にそれほど向いていないように思いました。
また、タイヤが10インチと小さい点にも注意が必要です。
段差などを乗り越える能力は、タイヤの径が大きいほど高くなります。実験してみたところ、電動キックボードでは小さな段差を越えることすら困難でした。無理やり突破しようとするとジャックナイフのように後輪が持ち上がり、派手に転倒するリスクを感じます。
段差がある場合は一旦降車し、押し歩きで乗り越えるべきでしょう。アスファルトのえぐれやマンホールなど、凹凸の多い場所にも注意をする必要があります。
そして最も気を付けるべき場所は、片側2車線以上の交通量が多い道です。
電動キックボードは道路の左側を走ることが義務付けられていますが、他の車との距離が近く、路上駐車も多いためヒヤッとするシーンが少なくありませんでした。自分の命を守るためには、車やバイク以上に周囲の状況をよく見て運転する必要を感じました。
(LUUPの場合、特に交通量が多く危険な道は降車して、手で押しながら通行するよう指定しています)
まだまだ課題が多い
今回ツーリングに出かけてみて、電動キックボードの便利さと爽快さはとてもわかりました。
なにより歩くにはちょっと遠いけど、電車やタクシーに乗るほどでもない。そんな微妙な距離を埋めてくれる手軽でラクチンなモビリティとして、電動キックボードが優秀なのは確かです。
しかし安全面では不安な点が多い上、冒頭でご紹介した通り、今後は免許を持たないユーザーが増えることが予想されます。ひとりの乗り物好きとして電動キックボードには魅力を感じますが、手放しで歓迎するにはまだまだ課題が多く残されているようです。
文/高木はるか
アウトドア系ライター。つよく、しぶとく、たくましくをモットーにバイクとキャンプしてます。 愛車はversys650、クロスカブ110、スーパーカブ90。
高木はるかの記事は下記のサイトから
https://riding-camping-haruka.com
編集/inox.