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犬の放し飼いは違法?飼い主の法的責任と噛まれた場合の損害賠償請求の方法

2022.11.14

他人が放し飼いにしている犬に噛まれたり、おしっこをかけられたりした場合、飼い主に対して損害賠償を請求できます。

今回は、犬の放し飼いについて発生する法的責任や、損害賠償請求の手続き・ポイントなどをまとめました。

1. 犬の放し飼いは違法?問題ない?

犬の放し飼いは、動物愛護管理法※の努力義務違反、または各自治体の条例違反に該当する可能性があります。
※正式名称:動物の愛護及び管理に関する法律

1-1. 動物愛護管理法の努力義務に違反する場合あり

動物愛護管理法7条1項では、動物の所有者・占有者に対して、以下の事項についての努力義務を課しています。

・動物の健康および安全を保持すること
・動物が人の生命、身体、財産に害を加えないようにすること
・動物が人の生活環境の保全上の支障を生じさせないようにすること
・動物が人に迷惑を及ぼさないようにすること

環境大臣は、上記の努力義務に関して「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」を策定・公表しています(同条7項)。同基準では、以下に挙げる場合を除いて、犬の放し飼いをしないことを求めています。

<放し飼いOKの場合>

(1)さく等で囲まれた自己の所有地・屋内など、人の生命・身体・財産に危害を加え、並びに人に迷惑を及ぼすことのない場所において飼養・保管する場合

(2)次のいずれかに該当する場合であって、適正なしつけ・訓練がなされており、人の生命・身体・財産に危害を加え、並びに人に迷惑を及ぼし、自然環境保全上の問題を生じさせるおそれがないもの

(a)警察犬、狩猟犬等を、その目的のために使役する場合

(b)人・家畜・農作物等に対する野生鳥獣による被害を防ぐための追い払いに使役する場合

参考:家庭動物等の飼養及び保管に関する基準|環境省

したがって、路上など他人が出入りする場所において、みだりに犬を放し飼いにする行為は、動物愛護管理法の努力義務に違反する可能性があります。

ただし、あくまでも努力義務にとどまるため、刑事罰などの具体的なペナルティは設けられていません。

1-2. 条例違反に当たる場合は刑事罰の可能性も

犬の放し飼いは、条例で禁止している自治体が多数存在します。この場合、違反すると刑事罰の対象となる可能性があります。

たとえば千葉県の動物愛護管理条例18条では、犬を飼養または保管する者に対して、一部の例外的場合を除いて犬を係留しておくことを義務付けています。

犬の係留義務違反は犯罪とされており、法定刑は「30万円以下の罰金」です(同条例32条)。実際に、犬の係留義務違反で逮捕された例も報道されています。

参考:犬の放し飼い容疑で異例の逮捕はなぜ? 長年の近所トラブル背景に|朝日新聞DIGITAL

2. 放し飼いの犬が他人に損害を与えた場合の法的責任

放し飼いにしている犬が他人に損害を与えた場合、飼い主は刑事責任や損害賠償責任を負います。

<刑事責任>

(1)過失傷害罪(刑法209条1項)
要件:過失により他人を傷害したこと
法定刑:30万円以下の罰金

(2)業務上過失傷害罪(刑法211条前段)
要件:業務上必要な注意を怠り、その結果として他人を傷害したこと
法定刑:5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金

(3)重過失傷害罪(刑法211条後段)
要件:重大な過失により他人を傷害したこと
法定刑:5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金

<損害賠償責任(動物の占有者等の責任)>

要件:
(1)動物の占有者または占有者に代わる管理者であること

(2)動物が他人に損害を加えたこと

※動物の種類・性質に従い、相当の注意をもって管理をしたときは免責される

3. 犬の飼い主に対する損害賠償請求の手続き・ポイント

放し飼いの犬に噛まれたり、おしっこをかけられたりして損害を負った場合、飼い主に対して損害賠償を請求できます。

3-1. 犬の飼い主に対する損害賠償請求の手続き

犬の飼い主に対して損害賠償を請求する手続きとしては、以下の例が挙げられます。

(1)示談交渉

飼い主と直接交渉を行い、損害賠償の精算について合意します。

(2)支払督促

裁判所に申立てを行い、飼い主に対して損害賠償の支払いを督促してもらいます。仮執行宣言付支払督促が発送されると、強制執行の申立てが可能となります。

参考:支払督促|裁判所

(3)訴訟

裁判所の公開法廷にて、飼い主の損害賠償責任を争います。飼い主に損害賠償の支払いを命ずる判決が確定すると、強制執行の申立てが可能となります。

なお、請求額が60万円以下の場合には、審理が原則1回で終了する少額訴訟の利用が可能です。

参考:少額訴訟|裁判所

3-2. 損害賠償請求を成功させるためのポイント

犬の飼い主に対する損害賠償請求に当たっては、被った損害が犬の行為に起因することを立証できるかどうかがポイントとなります。

飼い主が事実を認めていれば問題ありませんが、否認している場合は証拠に基づく立証が必要です。医師の診断書や目撃者の証言などが有力な証拠となりますので、損害賠償請求を行う前に準備を整えておきましょう。

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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