■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議
スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は、スペースXのサービス「Starlink」やアップル、楽天モバイルなどで注目される〝衛星通信サービス〟について話し合っていきます。
Starlinkはどんなサービス?
房野氏:イーロン・マスク氏がCEOを務めるスペースX社の衛星通信サービス「Starlink」ですが、KDDIが国内の法人企業や自治体への提供に関する契約を締結。今年中に法人・自治体向けにStarlinkを提供開始するという発表会を行いました。法人向けStarlinkの説明もされましたが、石川さんは個人向けのStarlinkを購入されていましたよね。お値段はいくらなんですか?
石川氏:Starlinkの「レジデンシャル」というプランを契約して、アンテナ代が約7万円、月々の利用料が1万2300円。20万円のスマホを買ってると、安いんじゃないかなって思えてくるから不思議。
石野氏:普通に安いなと思ったんですよ。
法林氏:安いよ。
石野氏:iPhoneすら買えない値段じゃないですか。
法林氏:0.5iPhone分くらい(笑)
石野氏:そうそう。衛星通信の民主化が起きたと思いつつも、Twitterで見たんですけど、よくよく考えると、Starlinkを買っている人は、みんな広い屋上付きの一軒家を持っていて、“一軒家マウント”をされているってことに気づいたんです(笑)。僕も購入を検討したんですけど、置く場所もないし、ベランダでは受信できないので。
法林氏:屋上に置いているの?
石川氏:今は3階のベランダに置いています。ベランダに直置きなんですけど、ルーターはうっすらドアを開けて家にケーブルを引き込んで繋いでいます。それだと、どうしてもアンテナ受信が7割程度しかできないので、通信が繋がらない時間が結構出てきます。40秒に1回ぐらい繋がらないタイミングが出てくる状況なので、アンテナを屋上に付けようと思って、今、工事業者を探しています。屋上に置けば、ほぼ繋がった状態になるので。
石野氏:ほら、やっぱり屋上がないといけない。隠れた通信料金として“家代”っていうのが含まれているんですよ(笑)
石川氏:自分がStarlinkを導入したのは、スマホ業界的に宇宙が盛り上がりつつあるからというのが1つ。楽天モバイル然り、T-mobile然り。実際に使ってみると、大きいアンテナがないと厳しいと思いました。Starlinkは50センチくらいのアンテナが必要なので。というわけで、スマホと直接通信するって結構大変なことだろうなと実感できます。
あと、ウチの周りって住宅が密集しているので、地震が起きて電柱が倒れたらほぼアウト。光回線はたぶん止まるし、下手したら基地局も通信できなくなると思うので、衛星通信があってもいいかなって思ったんです。こういうのって早めに導入しておくと、いろんな仕事が舞い込んでくるし。先日も自宅にテレビ局が取材に来ました。早めに導入して早めに記事を書くことが大事(笑)
石野氏:それができなくて悔しいんですよ。導入を検討した時に、「あ、家がない」と思って(笑)
法林氏:石川君が説明してくれた通り、本来、衛星用アンテナが必要。災害時、衛星とは通信できるかもしれないけど、日本全国で携帯電話が使えないって事態までに行くかどうかはちょっと読めない。
石川氏:自宅のある地域で使えないという事態はあると思うので。
法林氏:KDDIが説明したように、自治体が回線として1つ持つことはあると思う。もしかしたら町内会で1個持つとかもあるかもしれないけど、そこまで必要なものかというのが正直なところ。ただ、一昔前に比べると、コストも含めて衛星通信ができる環境が整ってきたのは事実。でも僕だったら、そのお金があったら、もう1本光回線を引くかな。光回線が2本あると幸せですよ。
房野氏:Starlinkって何Mbpsぐらい出るんですか?
石川氏:今は、いい時は200Mbpsくらい出ます。
房野氏:そんなに速いんですね。
石川氏:ただ、それは今、ユーザーが少ないだろうから。自分が買った時は、それこそ都内に数十人くらいしかいないと思ったし、その後、Starlinkのサイトで申し込みができなくなっていたんです。どうやら人数制限があるらしくて。
法林氏:環境はよくなってきたと思うけど、必要かと言われると……
石野氏:個人でいるかといわれると……
法林氏:石川君だから持つだろうけど、僕はそのお金はないわけよ。
石野氏:ただ、宇宙と通信しているっていう夢がある。1万円ぐらいの維持費だったら、夢を買う人がいても不思議じゃない。
法林氏:アンテナは移動していいの?
石川氏:買う時に住所の登録が必要なので……
法林氏:そこ以外はダメなの?
石川氏:別の場所だと速度が落ちるみたいなことが書いてあったかな。
房野氏:どこでも持って行けるわけじゃないんですね。
石川氏:「RV」っていう契約もあって、それは車に乗せていろんなところに行けるみたいです。
石野氏:KDDIによると、入力した住所を元に衛星をコントロールしてたりするそうです。
法林氏:エリアだろうね。直接、家に対してというよりは、このエリアの中で、これぐらいの人なら使っていいですよっていう。円の大きさがどれくらいかはわからないけど、その数を見てるんだろうね。災害対応とかバックアップの回線という意味ではいいかとは思う。
石川氏:ウチは、万が一停電しても電気自動車があるのでバッテリーを確保済み、万が一周りの電柱が倒れても回線を確保済み、万が一水が止まってもエネファームのタンクがあるので水も確保済み、なんですよ(笑)
石野氏:BCP(事業継続計画)対策された家になっていますね。
石川氏:それはさておき、Starlinkを触ってみると、3000個でしたっけ、それくらいの衛星が飛んでいるからこそできるサービスだなと実感します。
米・AST SpaceMobileと低軌道の衛星を使いモバイルブロードバンドネットワークを作り、地球上でのエリアを拡げる「スペースモバイル」プロジェクトに挑戦すると楽天モバイルが言っているけど、日本上空に相当の数の衛星を飛ばさないと維持できないんじゃないのかなというのが見えてくるなと。
石野氏:数が少ない代わりに、楽天モバイルの方は衛星側のアンテナがデカいぞって言っていますよね。
石川氏:うん……大きいけど、衛星は高速で飛んでるんですよ。実際、ピストルの弾の速さぐらいで飛んでいると。なので、衛星1個だったら相当追いかけないといけないし、複数飛んでやっと通信できる。
法林氏:どの衛星と通信するのか、隅々まで制御できないとダメなので、そんなに簡単な話じゃない。
石野氏:接続する衛星を切り替えているんですよね。次々衛星が来るので、逆ハンドオーバーみたいな感じで。
石川氏:将来的には衛星同士が通信して、広範囲で通信できるようになる。
房野氏:楽天モバイルが組んでいるASTの衛星通信サービスとStarlinkって、ほぼ同じ技術だと考えていいんですか?
石野氏:どちらも低軌道衛星ですね。ただ、サイズが違う。あと、ASTは衛星がまだそんなに上がっていない。通信速度については、三木谷さんは「YouTubeぐらいは見られる」っていう話をしていましたが。
法林氏:ユーザー数を考えずに言うことではないと思うけどね。
石川氏:例えば、50センチのアンテナがあればYouTubeも見られます、200Mbps出るから。
石野氏:ASTの方は「スマホと直接通信できる」と言っている。
石川氏:KDDIの人も言っていたけれど、まだ法整備がされていないし、技術的な課題もある。今、総務省でも検討されている。楽天モバイルは持っている1.7GHz帯で衛星とも通信できるようにすると言っているけれど、それだと電波が干渉するんじゃないのかなと、素人考えでは思っているところ。
プラチナバンド再割当ても注目の楽天モバイル
法林氏:楽天モバイルは技術についての説明が足りないかな。
石野氏:クアルコムやベンダーから来た人もいて、ちゃんと研究してはいるそうですが。
法林氏:それがちゃんと見えてこない。技術力がないとは言わないけど、どこまで本当にちゃんとできるのかなって思ってしまう。僕は、通信事業って信頼の積み重ねだと思うんですよ。プラチナバンドの再割当てしかり。
石川氏:前回の総務省の会合では、既存3社は基地局に受信フィルターがないとダメだって、実験結果を出して主張していましたね。楽天が「ウチはフィルターが要らないと思っている。もし付けないと大変なことになるというなら、既存3社で付けてください」という方向に持っていくって、なかなかだなぁと思って。費用の1000億円は自分たちで出して、みたいな。
石野氏:あれ、どうなんだろうなぁ、本当に。
法林氏:矢澤さん(楽天モバイル社長 矢澤俊介氏)には、「すごく限られたシチュエーションでしか問題は起きないはずだ」と説明された。そこは僕らの口を出す領域ではなくて、事業者間で話をしてくださいって思う。むしろ、1.7GHz帯をちゃんと使っているというけれど、本当に使っているのかという話とか、トラフィックがひっ迫しているというなら、なぜ使い放題にしてるのか、みたいな話も含めて、そこの信頼感が足りない。
それから、プラチナバンドは既存3社から5MHzずつもらうんじゃなかったら、1社をターゲットするって言っていますよね。
房野氏:かなり強めの発言ですよね。
石川氏:フィルター挿入とかの工事費を楽天が負担するってことになると、もし、3社の回線からそれぞれ割当されたら、その分を負担しなきゃいけないので、合計3000億円かかるわけですよ。そうなると楽天としては大変なので、1社を狙い撃ちして1000億円で収めたいという考えだと思います。
石野氏:1社だと周波数が丸々置き換わるから、そもそもとしてフィルターもいらなくなります。
法林氏:3社からもらうにしても置き換えにしても同じことなんだけど、今、利用している3社のユーザーにとっては結果的に帯域が減って繋がりにくくなる可能性がある。仮に既存事業者の使用期限が来て周波数を返却したんだとしても、ユーザーはやっぱり嫌がるんじゃないかな。
だから、楽天には他社ユーザーを含めたコンシューマー(一般消費者)の理解を得るように発言してもらいたい。「我々を推していただければ、ドコモユーザーにももっとお安い料金で提供できるので、ぜひ応援してください」みたいな言い方をすればいいのに、「ターゲットにして」とか……。3事業者の後ろにお客さんがいることが見えてないように思う。それはダメだと思うんですよ。
衛星通信の戦いが起こる?
石野氏:衛星に話を戻すと、三木谷さんの言っているYouTubeが見られるというのも、ちょっと怪しいなっていう感じがしています。アップルが始めた衛星経由の緊急SOSみたいな使い方の方が現実的だよなと。いきなりスマホでバンバン衛星と通信するっていうのは、早すぎる気がする。
石川氏:アップルの緊急SOSは、本当に短いテキストメッセージをさらに3分の1にして、狙い撃ちで飛ばすっていう感じ。衛星は24機ぐらいしか飛んでいないらしいので、本当に一瞬にしかキャッチできないみたいで。それとYouTubeが見られるっていうのは次元の違う話。
石野氏:Starlinkは大きなアンテナがあるからこそできる。
法林氏:あのアンテナと、衛星の数だよね。今年1200機打ち上げたって言ってたっけ。
房野氏:もっと上げるそうですね。
法林氏:衛星を低軌道で上げれば繋がるという話があり、東日本と西日本、法人と個人とで分けている話もある。当然、ほかの国の上空を飛んでいいのかみたいな話も出てくる。衛星の場所取り、制限、衝突があったらどうするのかなども含めて、いろんな問題があるので、そんな簡単な話じゃないですよ。
石川氏:Starlinkは世界にサービスしてるので、それでペイできる可能性がまだある。ASTは今のところVodafoneと楽天だけなので、もっとパートナーを増やさないとビジネスとして回らないし、衛星も飛ばせないんじゃないかと思います。
石野氏:Starlinkと完全に競合しちゃってますからね。どうするんだろうなって思いますね。Starlinkは日本で制度化するためにKDDIと組んだじゃないですか。あの辺はうまいなと。
石川氏:KDDIはうまくやったよね。
法林氏:KDDIは元々、衛星通信サービスをやっているから、その経験値は大きいですよ。
房野氏:前身にKDD(国際電信電話)がありますからね。
石野氏:衛星ビジネスに対する感度が高いというか。
法林氏:ある意味、本業ですよ。
石川氏:残りのキャリアがどう出てくるのか見もの。ソフトバンクはOneWeb(宇宙空間から提供されるグローバル通信ネットワーク)とHAPS(High Altitude Platform Station。成層圏から通信ネットワークを提供するプラットフォーム)をやっている。ただ以前、ソフトバンクの宮川社長に、HAPSは日本でできるかと聞いたら、日本では難しいんじゃないかという話をしていた。NTTグループはスカパーJSATと組んで、自分たちで宇宙ビジネスをやろうとしている。宇宙に情報ステーションを置きつつ、HAPSもやろうとしていて、ドコモはそれを採用するのかなと。2025年、26年ぐらいに衛星サービスが携帯電話とどう絡んでくるのか、ちょっと面白いかなと思います。
ソフトバンク株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEOで、HAPSモバイル株式会社の代表取締役社長 兼 CEOの宮川 潤一氏
石野氏:6Gはそういう方向にしちゃえばわかりやすくて面白いな。
石川氏:6Gは空をテーマにするという話もある。飛行機に乗ったら、飛行機の中で自分だけYouTube見放題という世界ができるかもしれない。
法林氏:そういう用途の方が、個人の端末がどうしたっていうよりは現実的かもしれない。例えば、飛行機より低軌道の衛星を繋いで、もうちょっと回線を太くして、みたいな考え方は、もしかしたらあるかもしれない。国定公園みたいな基地局を建てられない場所でパラボラアンテナを上げて、その周りは通信できます、みたいなことは、もしかしたら起こりえるかもしれない。そういうビジネスはあると思う。
石野氏:ドコモが出していた6Gのホワイトペーパーでも、エリアの拡張とか空間の拡張みたいなことを言っている。5Gの次はテラヘルツ波と言われても、いまいちピンと来ない。速度が上がるのはいいけれど、ミリ波ですらちゃんと扱えていないのに、テラヘルツ波なんて扱えるのかと。そんな大変なものよりも、宇宙や海、空を大々的にうたった方が……
法林氏:と思うでしょ。でも昔、4G端末はトラック1台分の大きさだった。それが今、スマホになっているわけですよ。時間があればできる、衛星よりは現実感がある。
石野氏:空間拡張は夢がある。法人向けサービスの発表会って大抵は地味で、質疑応答も静かなものですが、今回、KDDIのStarlinkの発表会では記者からの質問が途切れず出て、終了時間ギリギリまで受け付けていた。やっぱりみんな宇宙はロマンを感じるんだなと。6Gは宇宙だと言った方が……
法林氏:いやいや(笑) それはちょっとオーバーかも(笑)
房野氏:先日、総務省主催の「Beyond 5G国際カンファレンス2022」で宮川社長がHAPSの進捗を話していたんですが、なかなかHAPSも大変だということでした。成層圏だと機体の素材が劣化しやすい、マイナス80度の世界で動く電子部品を一から開発しなきゃいけない、HAPSは太陽電池で動くけれど、HAPSが移動すると日射量が変化するので、効率よく発電させる技術が必要だと。今まで語ってきたようなメリットばかりじゃない、現実的な話もされていました。
法林氏:現実問題として、どこまでできるかわからないけど、でも僕は衛星よりはHAPSが身近だと思っている。それこそ災害時に飛ばしましょうとか、ありだと思う。
石川氏:なにせHAPSは20キロメートル上空ですからね。ちゃんとスピードも出るだろうし。ソフトバンクの人に以前、話を聞いた時には、HAPSでは3Gで使われた周波数を使いたいとのことだった。そうすれば3Gが終了する2024年くらいに使えるようになると。電波干渉もない。そんな大切な電波を楽天モバイルに渡してなるものか、という考えもあるはず、たぶん。
法林氏:周波数は既得権だって言われればそれまでなんだけど、じゃあ有効活用って何ですか? って言われると、やっぱり実績が物を言う。
緊急時の事業者間ローミング、緊急通報受理機関の反応
房野氏:「非常時における事業者間ローミング」についても少し話していきたいと思います。2022年10月25日の第3回会合では、警察庁、消防庁、海上保安庁に対するヒアリングが行われました。
石川氏:検討会でも言われていたけれど、もっと緊急通報の多様化をした方がいいのではないかと思います。自分が思っているのは、例えばLINEとかで連絡できるようにすれば、キャリアのネットワークがダウンしても、Wi-Fiとかで通報できるし、呼び返しの機能もあるし、しゃべれなくても伝えることができる。でも、そういう議論にはならない。
法林氏:ネットワークがダウンすることは、起きてほしくはないけれど、先日のKDDIの通信障害のようなことは起こりえるし、「ウチは絶対大丈夫」と言った会社も障害を起こした。
なぜ呼び返しが必要なのかというと、通信が切れた時に受理側からその人に呼び返せる、かつ裏テーマとしては、なりすましを防ぐ意味もある。それを考えると、LINEにしても+メッセージにしても、本人確認が取れていれば、それでいいんじゃないのって気がする。
石川氏:そうです、そうです。
法林氏:テレビの報道によると、今日、明日にも事業者間ローミングができるような話になっていたけど、時間はかかると思います。
石野氏:今回の有識者はすごくいい仕事をしていたと思う。「全く電話がかからないのと、呼び返しがなくても電話がかかるのだったら、どっちがいいですか?」と迫っていた。
石川氏:どこまで許容できるのかと。
石野氏:通報受理側は、検討会に呼ばれた趣旨をわかっていないのか、それともわかった上で、「いやいや、そんなのやりたくないよ」っていう意味なのか、思惑がわからないですね。
石川氏:完璧なローミングで呼び返しなんて無理だと思いますよ。
石野氏:うん。
法林氏:無理だと思う。
石川氏:どれだけの災害が起きるのか、どんな通信障害が起こるのかわからない中でやれることって、いろんな手段を用意するしかないと思う。Wi-Fiスポットをいっぱい作る、衛星のルートを作る、LINEとか+メッセージで連絡できるようにする、そうしたいろんな手段を用意して災害に備えるってことをしないとダメなんじゃないのかなって気がするんですけど、そういった議論にはならないかなと。ローミングをどうするんだ、どのレベルでやるんだ、いつからやるんだ、という単一方向での議論になっている。
石野氏:手段も冗長化するしかないんですよね。
法林氏:どうしてもやるんだったら、もうそれしかない。加入者データベース含め、みんなで持ち合いするか?
房野氏:それは大変だと……
法林氏:そのデータセンターがダウンした時、誰が責任を持つのかみたいな話になるし。それだったら、povoのような0円のサービスを提供して、持てる人は全員デュアルSIMにしましょう、山に登る時は必ず2回線契約しておきましょう、ぐらいのことからやるのがいい。
石野氏:通信障害に関して言えば、起こっても最長3日とかじゃないですか。その間ぐらい、呼び返しなしで緊急通報できるようにしたらって思うんですよね。仮に呼び返しなしで受信したら、「近くの人からもう1回、緊急通報し直してください」とか伝えればいいだけの話なので。
法林氏:問題は1人で遭難した時だよね。もしくは災害で周りに誰もいないとか。
石野氏:そういう状況の時も、呼び返しできなくても、とりあえず第1報だけ伝えられれば……
法林氏:少なくとも、警察とか消防にはコンタクトできる。
石野氏:そのくらいはできると思うんですよね。しかもそれって、別に毎日そうしろって言ってるわけじゃなくて、何年かに1回起こる通信障害や大規模災害の時の話なので。
石川氏:システム改修にいくらかかって、それを誰が負担するんだよと。結局しわ寄せがユーザーに行くんじゃないのって。
法林氏:そのシステムによって障害が起きる可能性もある。複雑化しない方がいい。
石川氏:ローミングした途端に、受け入れたキャリアのネットワークがダウンする可能性もありますからね。
石野氏:緊急時だけのシンプルな仕組みで、あとSIMなし発信で済ませて、ということにできないのかなぁ。
……続く!
次回は、通信キャリアの決算について会議する予定です。ご期待ください。
法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。
石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。
石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。
房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。
構成/中馬幹弘
文/房野麻子