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稼ぐ力に期待!スポーツDXが可能にする新しい体験とビジネス

2022.11.08

スポーツ産業にもデジタル化(DX=デジタル・トランスフォーメーション)の波が押し寄せ、企業や地方公共団体が、スポーツの「稼ぐ力」に注目し、新たな事業としての活路を得ようとしている。

背景には、2022年3月25日にスポーツ庁が策定した「第3期スポーツ基本計画」がある。この計画では、以下の3つの視点を持ち、具体的な施策を示している。

■第3期スポーツ基本計画の新たな3つの視点

①スポーツを「つくる/はぐくむ」
②「あつまり」、スポーツを「ともに」行い、「つながり」を感じる
③スポーツに「誰もがアクセス」できる

このうち、①スポーツを「つくる/はぐくむ」の視点の中に、デジタル化の推進が含まれている。計画中では、デジタル化の推進により、新たなスポーツ機会や、ビジネスモデルを創出するとしている。

本記事ではスポーツDXが我々にどのような新しい体験をもたらしてくれるのか、実際に行われている事業は何か、具体例をまとめた。

■第3期スポーツ基本計画(概要)

引用元:スポーツ庁

第3期計画の対象期間は、2022年度から2026年度までの5年間で、主に国などが取り組むべきスポーツ関連の施策や目標を定めている。

スポーツDXの具体例のキーワードは「ファン」「新ビジネス」「新体験」

スポーツDXは国内外問わず、様々な施策が行われている。スポーツエコシステム推進協議会が、「スポーツDXファクトブック」として、スポーツDXの具体例を詳しくまとめているので、その中の事例を取り上げて解説する。

■スポーツDXと三つの視点

引用元:スポーツDXファクトブック/スポーツエコシステム推進協議会

同協議会によれば、スポーツDXには以下の3つの視点があるという。それぞれの視点ごとに具体例を紹介する。

①ファンエンゲージメントの向上
②データや権利の価値向上と新しい商流の創造
③新しいスポーツの興行や環境整備

尚、この3つの視点は先に述べた、スポーツ庁が掲げている第3期スポーツ基本計画の3つの視点と全く別ものである。

①ファンエンゲージメントの向上

そもそもファンエンゲージメントとは、スポーツ団体とファンとの間に深い関係性を作るという意味である。例えば、2021年初頭ころから流行ったNFT(ノン・ファンジブル・トークン)という仮想通貨(暗号資産)によって、スポーツ選手のトレーディングカードに金銭的な価値を付けたり、VR(バーチャル・リアリティ)技術や次世代高速通信の5Gを使うことによって、仮想空間上に新しいコミュニティ空間を作ったりできる。

■PLAYBACK 9(DeNA)

引用元:PLAYBACK9

横浜DeNAベイスターズで活躍する選手たちの名場面ムービーをNFT化することで、ファンが自分だけのデジタルコレクションが作れるサービスである。名場面のシーンごとに発行上限を定めており、ファンの収集心をくすぐりつつ、売買ができるトレーディングカードとして新たな購買体験をユーザーに提供してくれる。売買のプラットフォームには、LINE NFTを利用している。

ARを活用した新しいスポーツ観戦のスタイル(NEC)

引用元:ARを活用した新たなスポーツ観戦スタイル/NEC

日本バレーボールリーグ機構(Vリーグ)が主催する試合会場で、ARグラスを装着した観客たちに、出場している選手の情報やプレイ成績を提供する。会場内での試合の臨場感を味わいつつ、テレビやネット観戦で得られるデジタル情報がリアルタイムでわかるので、試合の面白さが何倍にも膨らむ。

②データや権利の価値向上と新しい商流の創造

 スポーツの試合が進んでいく毎にチーム成績や選手個人のデータが貯まっていく。これらのデータを総称して「スタッツ」という。スタッツは、英語で統計を意味する「statistics」の略称である。

 特に欧米では、スタッツデータの流通市場が存在している。試合を対象にした賭け事である「スポーツベッティング」が普及するにつれ、試合に関するデータが商品としての価値を持ち始めている。また、各スポーツ試合の放映権も、スポーツベッティングが合法化されている米国などの地域で高騰している。

■ホークアイ(ソニー)

引用元:ホークアイ(Hawk-Eye)/ソニー

試合の審判を補助するシステムをソニーのグループ会社「Hawk-Eye Innovations Ltd.」が手掛けている。このシステムにより、試合の結果を左右する「審判」がより正確にできるようになるとともに、試合の勝敗を左右するシーンをデジタルで解析し、映像コンテンツとして

視聴者に届けることができる。例えば図のように、テニスの試合で、イン・アウトを決めるラインギリギリのボール起動のとき、審判に異議を唱える「チャレンジ」というルールが

導入されている。試合の公平性を高めると共に、興行としての試合の品質をより高めてくれている。

③新しいスポーツの興行や環境整備

 スポーツ試合を行なうスタジアムの在り方自体が見直されている。例えば2023年3月に開業する北海道日本ハムの新球場「エスコンフィールド北海道」は、この球場以外にもレジャー施設などを複合的に組み合わせて、来場者に様々な体験を提供してくれる。エリア全体では「北海道ボールパークFビレッジ」という名称である。スタジアムを中心とした独自のファンエンゲージメント施策が、地方創生につながる恰好になっている。またスタジアム内でのキャッシュレス決済の導入や、チケットが簡単に取れるスマホアプリの導入など、来場者へのサービス品質向上に向けた施策も行われている。

■各地で整備が進むスタジアムやアリーナ

引用元:第3期スポーツ基本計画の概要(詳細版)/スポーツ庁

 他にも、スタジアム内で5Gや映像配信技術を活用しての中継サービスを提供したり、サッカーゲームの中で、実際のサッカースタジアムでの観戦チケットを配布したりなど、スポーツ興業の新しい形さ整備されている。

■TIPSTAR DOME CHIBAの5Gを使った映像配信(ミクシィ)

引用元:屋内型トラッキングシステムを活用した競輪レース映像の配信開始/ミクシィ

①のファンエンゲージメントの施策と重複する視点ではあるが、本事例では、千葉市にある競輪場「TIPSTAR DOME CHIBA」に位置情報アンテナを張り巡らせ、自転車の位置情報をリアルタイムで測定しながらの映像配信を行なっている。スタジアム全体のインフラを整備している点や、ミクシィが手掛けるスマホアプリ「TIPSTAR」では、アイドルやお笑い芸人がライブ配信で結果予想が視聴できる点など、総合的なプラットフォームを構築している。

文/久我吉史

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