2004年、新潟県中越地震により甚大な被害を受けた小さな村がNFTにより時代の最前線の地域として世界に認知されるようになった。Web3によって世界と限界集落がつながった事例から今後の地方自治体の可能性を探る。
作家、IT関連企業役員
沢しおんさん
IT企業での経験を生かしブロックチェーン技術に関する書籍、記事も多数執筆している。本誌にてDX小説『TOKYO 2040』を連載中。
中央集権システムにおけるWeb3活用の可能性
新潟県中越地方に存在した人口わずか800人ほどの旧・山古志村(現・長岡市山古志)。この限界集落が2021年12月、世界で初めてNFTアートによる財源確保のプロジェクトを開始した。錦鯉のNFTアート「Nishikigoi NFT」を販売し、NFTの保有者は「デジタル村民」として、オンライン上での議会投票権などを与えられる。現在、デジタル村民は950名を超え「リアル村民」の数を上回る。
このモデルは地方創生の新しいアイデアとして有効なのだろうか。地方自治体でDX戦略の顧問も務める沢しおん氏は次のように指摘する。
「ふるさと納税やクラウドファンディングといった方法もある中、NFTという手段を、このタイミングで行なったということはマーケティング上、非常に効果的でした。しかし、後発の自治体が同じことをしても同様に成功するとは限りません」
地方創生の目的で08年より開始されたふるさと納税のブームの背景には還元率の高い返礼品や減税といった金銭的なメリットが寄付者にあったことが大きい。
「旧・山古志村の事例では、購入者は錦鯉の絵が欲しかったわけではなく、この寒村を〝応援できる〟ということに価値を見出した。寄付の動機に〝必ずしも金銭的なメリットは必要ない〟ということがわかったのは自治体にとって大きな収穫でした。
今後、NFTの保有者に地元商店の優待券のような、さらなるメリットが生まれればトークンエコノミーが構築され、地方創生につながるかもしれません」
一方で、自治体という元来が中央集権のシステムにWeb3を導入することは課題もある。
「自治体がトークンを発行するのであれば中央集権的ですし、保有者に何かしらの権利を与えるにしても、利用地域や規模は限定的にならざるを得ない。さらに、トークンエコノミーの確立にも地方住民の協力が不可欠でしょう」
【運用が始まっているトピックス】
デジタルアート×電子住民票としてのNFTを発行する山古志村
山古志村の「デジタル村民」とは?
NFT保有者は「デジタル村民」の権利を得る。彼らはチャットサービス「Discord」上に集まり地域創生に向けた議論をしている。2022年2月には「山古志デジタル村民総選挙」が行なわれNFTの売り上げの一部を4つの創生プランの予算に充てることが決定している。
NFTアートはデジタルアートでもあり、電子住民票の権利でもある。
NFTは山古志地域に住む有志たちによって構成される山古志住民会議によって発行されている。
支援が必要な地方自治体に対し、ふるさと納税などと同じ感覚で寄付をすることで、「ふるさとトークン」がもらえる。保有者特典で自治体の価値向上につながる。
取材・文/峯 亮佑 写真/山古志住民会議 イラスト/石山好宏
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