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性犯罪に関する刑法改正の試案が公開、覚えておきたい強制わいせつや強制性交等罪に関する変更点

2022.11.03

2022年10月24日に、性犯罪に関する改正刑法の試案が公表されました。

参考:法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会 第10回会議配布資料「試案」||法務省

改正刑法試案は、年少の未成年者を被害者とするケースを中心に、性犯罪全般の抑止を目的としています。そのために、強制わいせつ罪や強制性交等罪の要件変更など、さまざまな変更点が盛り込まれました。

今回を含めて二回にわたり、性犯罪に関する改正刑法試案による変更点をまとめました。今回は、強制わいせつ罪・強制性交等罪などの要件変更に関する解説です。

1. 変更ポイント①|強制わいせつ罪・強制性交等罪などの要件具体化

改正刑法試案による1つ目の変更ポイントは、以下の犯罪について構成要件が具体化されている点です。

・強制わいせつ罪
・準強制わいせつ罪
・強制性交等罪
・準強制性交等罪

現行刑法では、強制わいせつ・強制性交等については「暴行または脅迫を用いたこと」、準強制わいせつ・準強制性交等については「人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、または心身を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせたこと」が要件とされています。

これに対して改正刑法試案では、上記各犯罪が成立する行為等を、以下のとおり具体的に列挙しています。

(1)以下の行為により、人を拒絶困難にさせたうえで、わいせつな行為や性交等に及んだこと

・暴行または脅迫を用いること
・心身に障害を生じさせること
・アルコールまたは薬物を摂取させること
・睡眠その他の意識が明瞭でない状態にすること
・拒絶するいとまを与えないこと
・予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、または驚愕させること
・虐待に起因する心理的反応を生じさせること
・経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること

(2)以下の事由その他これらに類する事由により、人が拒絶困難であることに乗じて、わいせつな行為や性交等に及んだこと

・暴行または脅迫を受けたこと
・心身に障害があること
・アルコールまたは薬物の影響があること
・睡眠その他の意識が明瞭でない状態にあること
・拒絶するいとまがないこと
・予想と異なる事態に直面させて恐怖し、または驚愕していること
・虐待に起因する心理的反応があること
・経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮していること

改正刑法試案で示された行為等については、現行刑法の下でも、強制わいせつ罪・強制性交等罪などが成立すると考えられます。

しかし、条文が抽象的でわかりにくい、解釈によって補われている部分があるなどの理由から、改正刑法試案に示されたような形での具体化が提案されている状況です。

2. 変更ポイント②|年少者に対する強制わいせつ罪・強制性交等罪の要件拡大

改正刑法試案による2つ目の変更ポイントは、13歳以上16歳未満の者を被害者とする強制わいせつ罪・強制性交等罪につき、構成要件が拡大された点です。

現行刑法によれば、13歳未満の者に対してわいせつ行為や性交等に及んだ場合、暴行・脅迫を用いなかったとしても、強制わいせつ罪・強制性交等罪が成立します。

改正刑法試案でも、13歳未満に関する上記の取扱いは維持されています。その一方で、13歳以上16歳未満の者に対するわいせつ行為や性交等について、以下の要件を満たす場合にも処罰の対象とされました。

(1)加害者が被害者よりも5年以上前に生まれたこと
(2)被害者の対処能力(性的な行為に関して自律的に判断して対処することができる能力)が不十分であることに乗じて、わいせつ行為や性交等をしたこと

5歳差以上という年齢差の要件は、健全な恋愛関係に基づく性的な行為を処罰の対象から除外しつつ、年少者の性被害を抑止する観点から設けられたものです。

3. 変更ポイント③|わいせつな挿入行為の厳罰化

改正刑法試案による3つ目の変更ポイントは、わいせつな挿入行為の厳罰化です。

現行刑法では、性交(膣への性器の挿入)、肛門性交(肛門への性器の挿入)、口腔性交(口への性器の挿入)のみが強制性交等罪、それ以外のわいせつ行為は強制わいせつ罪の対象とされています。

改正刑法試案では、従来強制わいせつ罪の対象とされていたわいせつ行為のうち、膣または肛門に身体の一部(指など)を挿入する行為については、強制性交等罪と同等の法定刑が設定されました。

このような挿入行為については、強制性交等罪に当たる行為と同程度に屈辱的で、精神的反応に差がないという調査結果があることなどが厳罰化の理由とされています。

4. 変更ポイント④|配偶者間における取扱いの明文化

改正刑法試案による4つ目の変更ポイントは、婚姻関係にある者同士の間でも、強制わいせつ罪や強制性交等罪などが成立することが明記された点です。

現行刑法の下でも同様に取り扱われますが、明文がないことについての国際的な批判や、被害届の受理事例の少なさなどを理由に、明文化が検討されています。

5. 変更ポイント⑤|性犯罪に関する公訴時効の見直し

改正刑法試案による6つ目の変更ポイントは、性犯罪について公訴時効期間が延長されている点です。

具体的には、以下の各犯罪について公訴時効期間の延長が提案されています。

(1)強制わいせつ等致死傷、強盗・強制性交等及び同致死(常習の場合を含む)

15年→20年

(2)強制性交等、準強制性交等、監護者性交等

10年→15年

(3)強制わいせつ、準強制わいせつ、監護者わいせつ、児童に自己に対して淫行をさせる罪(児童福祉法違反)

7年→12年

また、上記の各犯罪について、被害者が犯罪行為の終了時に18歳未満の場合、行為日から18歳到達日までの期間を公訴時効期間に加算するものとされています。

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