毎年、最新モデルが発売されるスマートフォン。性能や機能の進化でしのぎを削り合う中、メーカーそれぞれの特徴が顕著に出る要素の1つに、カメラ性能があります。
特にハイエンドスマートフォンは、年々カメラ性能がアップグレードされており、多くのスマートフォンで、誰でも簡単にきれいな写真が撮影可能。とはいえ、購入前にどのような写真が撮影できるのかをじっくり試すのは、なかなか難しいのも事実です。
そこで本記事では、2022年秋のハイエンドスマートフォンの大本命、「iPhone 14 Pro(9月16日発売)」と、「Google Pixel 7 Pro(10月13日発売)」の2モデルにて、写真の撮り比べを行い、違いを見比べていきます。
アップルのiPhoneシリーズ、グーグルのPixelシリーズは、どちらもAIの力を使い、きれいな写真に仕上げる「コンピュテーショナルフォトグラフィー」を駆使したカメラ性能が特徴。ただし、それぞれ写真の「仕上げ方」には違いがあるので、注目していきましょう。
iPhone 14 Pro、Pixel 7 Proのカメラ構成を確認
実際に写真の仕上がりを見比べる前に、まずはiPhone 14 ProとPixel 7 Proのカメラ構成を簡単に紹介していきます。
iPhone 14 Proのカメラ構成は、48MPメイン(広角):f/1.78絞り値、12MP超広角:f/2.2絞り値、12MP望遠:f/2.8の3眼構成で、光学3倍ズーム、デジタルズーム最大15倍に対応しています。
一方、Pixel 7 Proのカメラ構成は、50MPメイン(広角):f/1.85絞り値、12MP超広角:f/2.2絞り値、48MP望遠:f/3.5絞り値となり、光学5倍ズーム、超解像度(デジタル)ズーム最大30倍に対応しています。
インカメラは、iPhone 14 Proが12MP、Pixel 7 Proが10.8MPとなっています。
メインカメラ、超広角カメラでは、2端末間にスペック上の大きな差はありませんが、望遠カメラはPixel 7 Proのほうが画素数が高く、より遠所の撮影に対応していることがわかります。
また、iPhone 14 Proでは、背面の左上にカメラユニットを配置しているのに対し、Pixel 7 Proでは、前モデルより採用された「カメラバー」というデザインを採用。レンズの数こそ同じですが、見た目の印象は大きく異なります。
メイン(広角)カメラ
まずはメイン(広角)カメラで撮影した写真を比べてみます。なお、本記事に掲載する作例はすべて、写真のサイズ調節のみを行ったものとなります。
撮影日は曇りで、全体的に暗い写真になってもおかしくないシチュエーションでしたが、iPhone 14 Pro、Pixel 7 Proの両端末とも、比較的明るい写真が撮影できました。AIによるコンピュテーショナルフォトグラフィーの実力を感じます。
雲の色味や建物のガラス面を見ると、iPhone 14 Proのほうが、青みが強く出ており、Pixel 7 Proのほうがリアルな色に近い表現になっています。どちらが優れているというわけではありませんが、AIの使い方が違うことが良くわかる結果となりました。
犬を被写体としてポートレート撮影を行ったところ、今度はiPhone 14 Proが暖色系の仕上がりになりました。iPhone 14 Proは、撮影環境に応じて色味の補正を強くかけているのに対し、Pixel 7 Proはあくまで自然な色味になるように補正している印象を受けます。
なお、2端末とも被写体を認識し、背景にしっかりぼかし効果をかけられています。AF速度やシャッタースピードも申し分なく、スマートフォンのカメラらしく、さっときれいな写真を撮影できるのが魅力的です。
食べ物の撮影をしたところ、両端末ともにお店の照明の影響を受け、暖色系の色味に仕上がりました。iPhone 14 Proでは、全体的にきれいな写真を撮れている一方で、Pixel 7 Proでは、手前の唐揚げにピントがあり、周囲のぼけがやや強めになっています。ピントの設定を行えば解決できると考えられますが、少し残念なポイントともいえます。
超広角カメラ・望遠カメラ
続いて、超広角カメラでの撮影です。
四隅周辺に歪みが出やすい超広角撮影ですが、iPhone 14 Pro、Pixel 7 Proのどちらも、ぱっと見で歪んでいる部分は確認できず、きれいに広い視野角での写真が撮影できています。iPhone 14 Proは、夕日の明るさを強調し、鮮やかな写真に仕上げているのに対して、Pixel 7 Proは色の補正は弱めになっています。
次にズーム撮影した写真を見比べていきます。先にも触れた通り、iPhone 14 Proは光学ズーム3倍、デジタルズーム最大15倍なのに対し、Pixel 7 Proは光学ズーム5倍、デジタルズーム最大30倍となっています。
iPhone 14 Proでは、2倍ズーム時には、広角レンズの48MPから切り出し、12MPで撮影する機能が搭載されているため、かなり精細な撮影が可能。色の補正も鮮やかで、光学ズームでなくても、十分実用的になっています。
一方、30倍のズームに対応しているPixel 7 Proでは、「超解像度ズーム」という名前の通り、最大までズームした際にも、文字をしっかりと認識できる解像度の高さが魅力。ここでも、機械学習機能に優れた自社開発チップ「Google Tensor G2」の力が感じられます。
ナイトモード
次に、ナイトモード撮影の仕上がりを見比べていきます。
両端末ともに、暗い中でも光をしっかりと取り込み、明瞭な写真が撮影できています。iPhone 14 Proの場合は、全体の明度を上げ、ナイトモードでも温かい色味に仕上げているのに対し、Pixel 7 Proは、光源周辺をパキっと明るくしながら、コントラストがはっきりとした仕上がりになりました。
インカメラ
最後に、インカメラでの自撮りを比べていきます。
iPhone 14 Pro、Pixel 7 Proのどちらでも、被写体をしっかりと認識し、AFを合わせて撮影することができましたが、背景のボケ感はPixel 7 Proのほうが強くなります。
また、特徴的なのが、Pixel 7 Proでは等倍と0.7倍の2パターンがすぐに切り替えられるUIになっている点。iPhone 14 Proの画角が狭いというわけではなく、iPhone 14 Proではもともと超広角仕様なのに対し、Pixel 7 Proでは撮影時に選べるようになっています。これはインカメラでの撮影は、集団で写りたいシーンも多いためでしょう。
全体を鮮やかに仕上げるiPhone 14 Proとコントラストを大事にするPixel 7 Pro
2022年秋発売のハイエンドスマートフォン2モデル、iPhone 14 ProとPixel 7 Proのカメラ機能を比較してきました。iPhone 14 Proでは、全体の色味を鮮やかに補正するような仕上がりが多いのに対し、Pixel 7 Proは、元の色味も大切にしながら、コントラストのはっきりとした写真の仕上がりが多くなっています。
また、iPhone 14 Proでは、iOS 16より搭載された、精度の高い切り抜き機能が楽しめるのに対し、Pixel 7 Proでは、映り込んでしまった人や物を修正できる「消しゴムマジック」機能が利用できたりと、撮影後の写真に対してもAIを使って様々なアプローチをしているのも、両モデルの特徴。
どちらのカメラが優れているとはなかなか判断しにくい2機種ですが、写真の仕上がりや撮影後の処理を含め、高い機械学習機能を駆使した、使っていて楽しいスマートフォンとなっています。
取材・文/佐藤文彦