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化粧品のパッケージに「使用上の注意」が書かれていれば製造業者は免責される?

2022.11.01

化粧品を販売する際には、「使用上の注意」を容器やパッケージなどに記載することが法律上義務付けられてます。

「業者が責任を逃れるために書いているのでは?」と思われるかもしれませんが、必ずしもそういうわけではありません。

「使用上の注意」は、あくまでも購入者(使用者)に注意喚起を行うためのものです。また、「使用上の注意」を記載したからといって、化粧品の品質などに問題があった場合、製造業者が責任を免れることはできません。

今回は、化粧品に関する「使用上の注意」につき、法律上のルールをまとめました。

1. 化粧品には「使用上の注意」の記載が必要

化粧品の製造・販売等については、「薬機法(※)」という法律でルールが定められています。
※正式名称:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

薬機法は、医薬品・医薬部外品・医療機器などの製造・販売等についてもルールを定めています。化粧品は肌に直接塗るもので、品質に問題があると保健衛生上の危害が生じるおそれがあるため、医薬品などと同じ法律で規制が行われているのです。

化粧品を製造・販売する場合、添付文書・容器・被包(パッケージや外箱)のいずれかに、化粧品に関する使用および取扱い上の必要な注意を記載しなければなりません(薬機法62条、52条2項1号)。

「使用上の注意」を記載せずに化粧品を製造・販売すると、厚生労働大臣による行政処分などの対象となります。

2. 化粧品について記載すべき「使用上の注意」の内容・記載箇所

化粧品の製造業者で構成される自主規制機関の「日本化粧品工業連合会(粧工連)」は、化粧品の「使用上の注意」に関する自主基準を公表しています。

厚生労働省の通達でも、同自主基準に従った注意事項の表示を行うことが、各製造業者に求められています。

参考:化粧品の使用上の注意事項の表示自主基準|日本化粧品工業連合会

2-1. 化粧品について記載すべき「使用上の注意」の例

粧工連の自主基準では、化粧品の種類に応じて、表示すべき「使用上の注意」の記載例を示しています。

各製造業者は「使用上の注意」として、該当する記載例をそのまま記載するか、またはその趣旨を盛り込んだ内容を記載しなければなりません。その際、製品の実態に応じた適切な表示をすることが求められます。


(例)
石けん類、浴用化粧品類、香水類、爪化粧品類、ボディシャンプー、シャンプー、リンス、マスカラ、口紅、リップクリームの場合

「化粧品がお肌に合わないとき即ち次のような場合には、使用を中止してください。そのまま化粧品類の使用を続けますと、症状を悪化させることがありますので、皮膚科専門医等にご相談されることをおすすめします。

(1)使用中、赤味、はれ、かゆみ、刺激等の異常があらわれた場合
(2)使用したお肌に、直射日光があたって上記のような異常があらわれた場合」


2-2. 化粧品の「使用上の注意」の記載箇所

粧工連の自主基準によれば、化粧品に関する「使用上の注意」を記載すべき場所は、個々の製品の直接の容器・外箱または添付文書です。これは、薬機法のルールに準じています。

ただし、外箱または添付文書に記載する場合は、使用者に十分注意を促す観点から、原則として直接の容器にも簡略化した注意表示を記載することが求められています。

3. 「使用上の注意」は免罪符ではない|化粧品の製造業者が負う製造物責任

化粧品に関する「使用上の注意」を記載したからといって、製造業者が購入者(使用者)に対する責任を免れるわけではありません。化粧品に製品としての欠陥があり、それが原因で使用者が健康被害を受けた場合には、製造業者は「製造物責任」を負うことになります。

3-1. 製造物責任が発生する化粧品の「欠陥」

化粧品の「欠陥」とは、化粧品として通常有すべき安全性を欠いていることをいいます(製造物責任法2条2項)。

この点、肌質には個人差があることを踏まえると、一部の使用者に肌荒れなどが生じたとしても、直ちに化粧品の「欠陥」に当たるとは限りません。

しかし、肌荒れなどの報告が相当多数に及んだ場合や、あまりにも酷い皮膚の炎症を訴える人が続出した場合には、「欠陥」があると評価される可能性が高いでしょう。

3-2. 製造物責任の免責事由|「使用上の注意」を記載していただけではNG

製造物責任は、通常の「不法行為」に基づく責任とは異なり、過失の有無を問わない「無過失責任」とされています。

化粧品の欠陥による健康被害について、製造業者が責任を免れることができるのは、以下のいずれかに該当する場合のみです(同法4条)。

①開発危険の抗弁
化粧品の引渡し時における科学技術上の知見によっては、化粧品に欠陥があることを認識し得なかった場合

②部品製造業者の抗弁
化粧品が他の製造物の部品または原材料として使用されたケースで、製品の欠陥が専ら当該他の製造物の製造業者が行った設計指示に従ったことにより生じ、かつ、製品の欠陥の発生につき過失がない場合

製造業者が製造物責任を免れるには、上記いずれかを自ら証明しなければなりません。単に「使用上の注意」を記載していただけでは、製造業者が免責を受けることはできないでしょう。

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
https://abeyura.com/
https://twitter.com/abeyuralaw

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