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もし「出禁」と言われた飲食店に行ったとしたら罪に問われることはある?

2022.10.28

飲食店で粗相をした、店長に嫌われた、店員とトラブルになってしまった……

たとえばこのような理由で、店舗が客に対して「出禁」を言い渡すケースがあります。

店舗を「出禁」になった客は、永久にその店舗へ来店することはできないのでしょうか? 懲りずに来店するのは違法なのでしょうか?

今回は、飲食店などの「出禁」とは何かについて、法的な観点から考えてみたいと思います。

1. 「出禁」の法的な意味合い

まず、店舗側の主張する「出禁」が、法的にどのような意味を持つかを考えてみます。

法的な観点から「出禁」を一言で表すと、「店舗利用契約の締結を、将来にわたって一律拒否する店舗側の意思表示」となります。

普段意識することはないかと思いますが、客が店舗を利用する場合、客と店舗の間で「契約」が締結されます。

客側は、来店あるいは注文によって、店舗に「代金を払って店舗を利用したい」と申し込みます。店舗側はそれを承諾して、客に店舗の利用を認め、オーダーに従ってサービスを提供します。

客側の申込みと、店側の承諾が合致したことにより、客と店舗の間で利用契約が成立するのです。

店舗が客に対して「出禁」を言い渡すことは、その客との利用契約の締結を、将来にわたって拒否することにほかなりません。

まだ客が来店していないうちから、

「あなたとは契約を締結しません」

とあらかじめ意思表示しておくということです。

2. 店舗には客を選ぶ権利がある

店舗には、基本的に客を選ぶ権利があります。職業選択の自由の一環として、営業の自由が保障されているからです(日本国憲法21条1項)。

店舗には不特定多数の客が来店しますが、市区町村役場などのように公的な施設ではなく、あくまでも営利目的で私的に営業しているに過ぎません。

そのため、どのような客を受け入れ、どのような客を拒否するかは、原則として店舗の自由です。店舗側から嫌われるような行為をすれば、出禁を言い渡されてもやむを得ないといえます。

3. 「出禁」の理由は何でもよいのか?

店舗が客に「出禁」を言い渡す理由については、憲法で保障された営業の自由に基づき、店舗側に幅広い裁量が認められます。

ただし、法の下の平等(日本国憲法14条)に反する差別的な理由で客を「出禁」にした場合は、店舗が客に対する不法行為責任を負う可能性があります(民法709条)。

私的に営業する店舗に対して、日本国憲法が直接適用されることはありません。しかし、私人間の取引においても憲法の趣旨を尊重する観点から、不法行為のルールを適用するに当たって、憲法で認められた平等・自由・権利の趣旨が考慮される場合があるのです。

たとえば、以下のような理由で店舗が客を「出禁」にした場合、不法行為が成立し得ると考えられます。

・黒人(ネグロイド)だから
・○○教を信仰しているから
・女性だから(男性専用とすべき特段の事情がある場合を除く)
・同和地区の出身だから
など

4. 「出禁」になった店舗へ懲りずに来店したら違法?

「出禁」に違法性がない場合、店舗によって「出禁」が撤回されない限り、客は店舗を利用できなくなります。

それでも懲りずに店舗へ来店した場合、客は何らかの法的責任を問われるのでしょうか?

4-1. 出禁客が来店しても、原則としてペナルティはない

「出禁」になった店舗へ来店したとしても、それだけで客が何らかの法的責任を問われることはありません。単に入店を断られるだけです。

客が店舗へ来店することは、店舗に対して利用契約の申込みを行うことを意味します。たとえ相手方に断られることが確実であっても、契約締結の申込みを行うこと自体は、法律で禁止されるわけではありません。

したがって、出禁になった店に来店して、入店させてほしいとお願いすることについては、直ちに違法ではないと考えられます。

4-2. 退去要請を拒否すると、罪に問われる可能性がある

来店そのものは違法でないとしても、出禁にした客が来店した場合、店舗はすぐに退去するよう求める可能性が高いでしょう。

もし店舗から退去の要請があった場合、客は直ちに退去しなければなりません。居座って入店交渉を続けようとするのは厳禁です。

退去要請を受けたにもかかわらず、拒否して店舗から退去しなかった場合には「不退去罪」が成立します(刑法130条後段)。不退去罪の法定刑は「3年以下の懲役または10万円以下の罰金」です。

また、座り込みなどの強引な方法で居座り、店舗側の業務を妨害した場合には「威力業務妨害罪」が成立します(刑法234条)。威力業務妨害罪の法定刑は「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。

5. まとめ

出禁になった店に来店しても、原則として違法ではありません。しかし、入店が認められる見込みは薄く、店舗側とトラブルになるおそれがありますので、その店舗の利用は諦めた方が無難でしょう。

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
https://abeyura.com/
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