■連載/文具ソムリエール菅 未里の「文具な毎日」
ある日、姉から「名刺ってどこで作ったらいいの?」という連絡が来ました。
私の姉はフリーランスのライター兼料理家として仕事をしています。コロナ禍で仕事が増えたのですがウェブ会議のみで過ごし、最近になって名刺を作っていなかったことに気付いたのです。
オフラインの打ち合わせの前に慌ててコンビニ印刷の名刺を作ってみたものの、どうにも格好がつかず私に連絡が来たというわけです。
同じようにコロナ禍で個人の仕事を始めた方の中にはどこで名刺を作ったらいいかわからないという方が多いのではないでしょうか。
名刺は仕事の第一印象を決める大事なビジネスツールです。「とりあえずネットで注文」ではもったいない!せっかくなので格好いい名刺を作りましょう。
今回は私の姉の名刺を作りながら、個人で名刺を作る際におさえたいポイントを名刺オーダーのプロに聞いていきます。
銀座 伊東屋で名刺づくりにトライ!
訪れたのは銀座 伊東屋 本店。赤いクリップの看板でお馴染みの文房具専門店です。文房具を売っているお店というイメージが強い銀座 伊東屋ですが、なんと100年以上の名刺オーダーの歴史があるお店なんです。
そんな銀座 伊東屋に姉を連れてやってきました。
「伊東屋で名刺をオーダーできるなんて知らなかった・・・・・・」とつぶやいていた姉
名刺オーダーはG.Itoyaの7階です(銀座 伊東屋には建物が二つあり、G.Itoyaは銀座中央通り側の建物)。
カウンターでにこやかに出迎えてくれたのは名刺オーダーを担当する米村昌弘さん。銀座 伊東屋入社以来40年以上名刺オーダーに携わってきたプロです。佇まいから紳士的な雰囲気が伝わってきます。
(実は私もこちらで米村さんに相談にのっていただいて毎年名刺を作成しています)
米村さん、名刺作りは一体何から手をつけたらよいのでしょうか・・・・・・教えてください!
名刺作りのプロセスを紹介
1.紙を選ぶ
「名刺は紙から選んでください」と言う米村さん。
カウンターの向いには分厚い名刺のサンプル帳が並んでいます。
何冊もある名刺見本
決まった名刺のフォーマットはないそうで、名刺の一例が並びます。
あまりの量の多さにさっそく頭を抱える姉。
「何から選んだらいいのでしょうか・・・・・・」
「見るだけではなかなかわからないので紙を触ってみましょう」と話す米村さん。
「えっ、全然違う!」と思わず声が上がるほどに指先で触った感触が一般的な紙と違います。
「触った瞬間に自分の格が相手に伝わりますよ」と米村さんもにっこり。
白い名刺が一般的ですが、色付きの紙も格好良い。どちらがいいのか悩み始めました。
米村さんによると堅い職業の場合は白い紙を選び、クリエイティブな職業の場合は色付きを選ぶなど職業によって相手に与えたい印象をイメージして選ぶといいそうです。堅い職業は堅実で安心感がある白、クリエイティブな職業は創造力や独創性をアピールできる色付きといった基準で選べますね。
2. フォントを選ぶ
次に日本語のフォントと英語のフォント、それぞれ選びます。
フォントの見本帳には写真に映しきれないほどの大量のフォントが記載されています。
いつの時代にどの国で生まれたフォントなのか、有名ブランドが使っているなど一つ一つの歴史やデザインの特徴を聞いているとどれもよくて悩んでしまいます・・・・・・。
思わず話に聞き入って前のめりになっています
堅実で安心感を与えたい場合にはクラシカルな文字、クリエイティブでモダンな印象にはこの文字と数ある中から米村さんにアドバイスをいただきながら選んでいきます。
3.名刺の構成
紙とフォントが決まったら、次は名刺の内容です。名前や肩書き、メールアドレスなど名刺に記載する内容を決めていきます。
注意したいのは個人情報をどこまで載せるかという点です。特に最近では防犯上住所を載せずメールアドレスのみという方も少なくありません。
仕事の実績をSNSにのせていたり、SNSのDMで仕事を受ける方も多いのでSNSアカウントの情報を盛り込むのもおすすめだとか。
文字の配置も重要です。横向きと縦向きがありますが、横向き一つをとっても中央に配置するか、左に名前を寄せるかなど様々なパターンがあるんですね。
手書きでバランスの説明をしていただきながらイメージを膨らませていきます
内容を決めた後はメールで構成を送ってもらい、内容を確認して修正をお願いします。時期や混雑状況によりますが、今回は名刺の内容が決まってから約一週間で完成品の到着の連絡をいただきました。
ついに名刺が完成!
そして完成した名刺がこちら。
白い紙と色付きの紙、両方を注文しました。
(白い名刺13,530円、赤い名刺13,750円 ともに税込 ※紙の種類や印刷方法で価格は異なります)
白い紙はスコットランド製のコンケラー。世界中のホテルや企業で使われている紙で、ただ白いだけではなく名刺交換をした際に指先に伝わる感触が明らかに上質。ただ者ではない雰囲気です。
赤い紙はドイツのグムンド。アカデミー賞でお馴染みの金色の封筒で有名な会社です。しっかりと厚みがあるのも特長です。
どちらも100枚オーダーしましたが、紙の厚さが違うので受け取ったときの高さがこんなに違います。一度にたくさんの方と名刺交換をする方は名刺入れにたくさん入る薄めの紙を選ぶといいですよ。
フォントはこちら。同じ名前でもフォントで印象が異なります。上品な印象(左)とファッショナブルな印象(右)を使い分けできますね。
新しい名刺に満足げな表情の姉
銀座 伊東屋 本店では100枚で1万円を越える名刺を作成する方が多いそうですが、紙や印刷方法によって価格も様々。予算に合わせて検討することも可能です。
オンラインでできる仕事が多くなった今だからこそ名刺交換をする機会ではかっこよく堂々と差し出せる名刺を持っていたいものです。胸を張れる名刺作り、ぜひ挑戦してください。
・銀座 伊東屋 本店
住所:東京都中央区銀座2-7-15
TEL:03-3561-8311
営業時間:平日 10:00~20:00 日曜・祝日 10:00~19:00
https://www.ito-ya.co.jp/
文/菅未里