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探偵が集めた不倫の証拠は裁判で使えるのか?違法に収集された証拠の注意点

2022.10.30

配偶者による不倫の事実を立証するに当たって、もっとも効果的な証拠は、不倫相手との密会現場を撮影した写真や映像です。

不倫現場の写真や映像は、探偵に撮影を依頼する方もいらっしゃいます。しかし、撮影の方法によっては違法に収集した証拠と判断され、裁判で使えなくなることがあるのでご注意ください。

今回は、探偵による不倫現場撮影の適法性や、違法に収集された証拠の裁判における取扱いなどをまとめました。

1. 不倫の証拠集めを探偵に依頼するメリット

配偶者による不倫の事実を立証するためには、不倫現場の写真や映像が効果的な証拠となります。

しかし、不倫現場の写真や映像は、簡単に撮影できるものではありません。いつ密会が行われるかわからないので、長時間の尾行や張り込みが必要だからです。また、配偶者と不倫相手の顔がしっかり映るように、撮影の画角にも気を配る必要があります。

そのため、不倫現場の写真や映像を撮影したい場合は、探偵に依頼する方が多くいらっしゃいます。

探偵は、依頼者に代わって尾行や張り込みを行ってくれます。また、撮影技術にも長けている場合が多いため、不倫現場の写真や映像を鮮明に撮影できる可能性が高いです。

2. 探偵は不倫現場を無断で撮影してよいのか?

探偵による不倫現場の撮影は、(当然ながら)不倫をしている当事者には無断で行われます。

このような無断撮影は、法律上常に認められるわけではありません。他人の容貌を無断で撮影した場合、「肖像権」の侵害が問題になります。

2-1. 肖像権侵害の要件

肖像権とは、容貌(姿)を勝手に撮影されない権利、および写真を無断で商業利用されない権利です。

前者は「人格権」、後者は「パブリシティ権」と呼ばれています。不倫現場の無断撮影について問題となるのは、肖像権の一種である人格権です。

他人の容貌を無断で撮影する行為は、以下の事情を総合的に考慮したうえで、社会生活上受忍の限度を超える場合は違法(≒肖像権侵害)と解されています(最高裁平成17年11月10日判決)。

・被撮影者の社会的地位
・撮影された被撮影者の活動内容
・撮影の場所
・撮影の目的
・撮影の態様
・撮影の必要性
など

2-2. 探偵でも、無断撮影をする特権はない

探偵であっても、他人の容貌を無断で撮影した場合は、一般の方と同様に肖像権侵害の責任を問われることがあります。

「探偵だから、撮影について特権が認められているのでは?」

と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではありません。

探偵業務を規制する「探偵業の業務の適正化に関する法律」6条は、以下のように規定し、探偵の職務上の特権を明確に否定しています。

(探偵業務の実施の原則)

第六条 探偵業者及び探偵業者の業務に従事する者(以下「探偵業者等」という。)は、探偵業務を行うに当たっては、この法律により他の法令において禁止又は制限されている行為を行うことができることとなるものではないことに留意するとともに、人の生活の平穏を害する等個人の権利利益を侵害することがないようにしなければならない。

つまり探偵であっても、他人の容貌の無断撮影する行為については、一般の方による場合と同様に、前述の判例基準に従って違法と判断される場合があるのです。

2-3. 探偵による不倫現場の無断撮影の可否

探偵による不倫現場の無断撮影が法律上許されるかどうかは、撮影に関する事情を具体的に検討したうえで判断されます。

探偵による不倫現場の無断撮影には、「離婚請求や慰謝料請求の証拠として用いる」という正当な目的があります。

そのため、まともな目的がなく無断撮影をするケースに比べると、適法性が認められやすいと考えられます。たとえば、自宅やホテルに出入りする前後の写真を路上から撮影する程度であれば、問題ないと判断される可能性が高いでしょう。

ただし、撮影の目的が正当であっても、手段が著しく不相当な場合は違法となります。極端な例ですが、性行為の現場を押さえるために、不倫相手の家に盗撮カメラを仕掛ける行為などは、確実に違法と判断されるでしょう。

このように、探偵が不倫現場を無断撮影することの可否は、撮影の目的と手段のバランスを考慮して判断する必要があります。

3. 違法に収集された証拠は、裁判で使えるのか?

探偵が不適切な手段によって撮影した写真や映像を含めて、違法に収集された証拠については、裁判の証拠として使えない場合があります。

特に刑事裁判では、判例法理によって「違法収集証拠排除法則」が確立されています(最高裁昭和53年9月7日判決、最高裁平成15年2月14日判決)。

将来の違法捜査を抑止する観点などから、許容すべきでない不適切な方法によって収集された証拠については、証拠能力が否定されます。

これに対して、民事・家事事件に関する裁判では、厳密な違法収集証拠排除法則は採用されていません。

しかし、以下の要素を総合的に考慮して、証拠の採用が訴訟上の信義則(民事訴訟法2条)に反する場合には、違法収集証拠の証拠能力を否定すべきとするのが有力な見解です(東京高裁平成28年5月19日判決)。

・証拠収集の方法、態様
・違法な証拠収集によって侵害される権利利益の要保護性
・証拠の重要性
など

上記の見解に従うと、違法に撮影された不倫現場の写真・映像については、撮影の目的と手段のバランスや、証拠としての重要性などを考慮して、ケースバイケースで証拠能力が判断されることになります。

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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