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【深層心理の謎】具体的で詳細な情報が提示されると結果に対する不安や恐怖を軽減できる?

2022.10.26

 雷に打たれて命を落とすことはないと思っているが、残念ながら絶対にないとは言い切ることはできない。現実に雷で亡くなる方は毎年いるのだ。しかし具体的に検討してみると、雷が発生している時に雷が落ちやすい場所に自分がいる状況はあまり想像することができない。とすれはまずはホッと一安心ということになるのだが――。

宝くじ当選と雷に打たれる確率は同じ!?

 東京メトロ有楽町線を要町駅で降りて地上に出た。夜7時になろうとしている。池袋駅まで1駅歩くつもりだが、その前にこの界隈で何か食べてから帰ることにしたい。

※筆者撮影

 店先に「カラオケ」の文字が記されたのぼりが立っているスナックの隣には宝くじ売り場があった。看板の照明が灯っているが今は営業していないようだ。自発的に宝くじを買ったことはないし今後も買うことはないと思うが、そういえばもう少しすれば年末のジャンボ宝くじの話題も聞かれるようになるのだろう。

 そういえば年末ジャンボ宝くじの1等に当選する確率は落雷に打たれる確率と同じだという話を耳目にしたことがある。普通に考えたらまず当選するはずがないように思えるが……。

 とはいっても落雷で命を落としている人は毎年必ず出ている。この先自分が雷に打たれる可能性は確率的にゼロとはいえず、不安がよぎらないこともない。

 だが雷に打たれる状況というのを想像してみると、周囲に建物がない平野部の路上や広場、あるいは広い公園やゴルフ場などが思い浮かぶ。雷雨の時に自分がそういった場所にいるというのは考え難い。とすれば自分の場合、落雷に打たれる確率はさらに低くなるともいえそうだ。

 まずは一安心ということになりそうだが、そもそも雷に当たるというのはいくつもの偶然が重なった条件で起きることでもあるので、雷雨の中でその日たまたま何かの用事で広い公園にいるというようなことがないとも限らない。そうした不確定要素を含めたうえでの“確率”なのだともいえる。いずれにしても雷に打たれることなどあり得そうもないことだが、だからといって安心しきっているわけにはいかないようだ。

より具体的で詳細な情報が提示されると恐怖が和らぐ!?

※筆者撮影

 雷に打たれる状況について少し検証してみたことで、自分には起こりそうもないと束の間の安心感が得られたのだが、その安心感はどこからきたものなのか。最新の研究では、確率に関する詳細な知識により、リスクが低く感じられてくる可能性があることが報告されていて興味深い。一定の確率で起こる物事でも、それに関連する知識が増えると確率がより低く認識されてくるというのである。


 人々はさまざまなリスキーな意思決定に関連した多くの詳細な情報に直面しています。個人がそのようなリスクについて考えるのを助けるために、さまざまな形式の政策や健康に関するメッセージで、しばしばその原因が列挙されています。

 一部の先行文献では、結果の原因に関する情報を追加すると、その可能性の認識が高まることが示唆されていますが、我々はその反対のことが定期的に発生する新しいメカニズムを特定しています。

 7回の主要な実験と6回の補足実験で、ある結果に至る経路の (定義上より低い) 確率について人々が知ると、その結果の推定可能性が低下することがわかりました。

※「APA PsycNet」より引用


 カリフォルニア大学サンディエゴ校とボストン大学の合同研究チームが2022年10月に「Journal of Experimental Psychology: General」で発表した研究では、確率に関する詳細な情報が提供されることで、ネガティブな結果に対する不安や恐怖を軽減できることが示されている。

 研究チームはアメリカ全土に住む1500人以上の参加者による13の異なる実験を行ない、各々の確率を知ることによってリスクについての考え方が変わり、実際には起こりにくいと考えるようになる傾向が浮き彫りになったのだ。

 390人が参加した1つの実験では人々は3つのグループ(1つはコントロールグループ)に分けられた後、すべてのグループに「新たに発見された細菌感染症を引き起こすノミに咬まれる確率は58%である」という情報が提示された。

 その後2つのグループに別々の追加情報が提供されたのだが、1つのグループには咬まれる可能性のあるさまざまな種類のノミが見せられ、このグループの多くは新種の病原体を保有するノミに咬まれそうだと考える傾向が(58%より)高まった。

 もう一方のグループにはさまざまな種類のノミに咬まれる確率が数字で示されたのだが、こちらのほうは新たなノミに咬まれる可能性を低く考えるようになっていたのである。

 つまり具体的な数字という詳細な情報が提供されることで、恐怖や懸念が和らぎ、回避できそうに思われてくることになる。これを研究チームは「不確実性効果(unlikelihood effect)」と呼び、より具体的で詳細な情報が提供されることでこの不確実性効果が働きはじめると説明している。

 落雷に打たれる状況を具体的に具体的に考えてみることでいったんは雷への恐怖が和らいだのも、この不確実性効果が作用したということにもなりそうだ。

住宅街のそば屋でもりそばを賞味

※筆者撮影

 まばらな街灯の暗い住宅街の中を歩く。十字路に来ると、右手に飲食店があった。そばの店だ。ひと目見てそば屋とわかる趣のある和のテイストの外観だ。せっかくここまで来たことだし、入ってみよう。

 きれいで明るい店内は町のそば屋としては標準的な広さだろう。先客は2人でいずれも男性1人客だ。きっと近くに住む人たちなのだろう。すべてテーブル席で、お店の人に好きな席に着くように言われ、店の奥のほうの4人掛けのテーブルに着かせていただく。

 メニュー数もいたって標準的だが、ミニ丼とのセットメニューの短冊が壁に貼られている。お店の人がお水のグラスを持ってきたが、すぐには決められなかった。少し迷ったが、ミニしょうが丼ともりそばのセットをお願いした。

 グラスの水をひと口飲む。……雷に打たれる確率とジャンボ宝くじ1等当選確率が同じということになるが、面白いことに不確実性効果は宝くじ当選というポジティブな現象にも作用するのだという。つまり、宝くじについての具体的で詳細な情報を知れば知るほど、当たりそうないと思えてくるというのだ。

 ということは宝くじを買う人は宝くじについてあまり深くは考えていないことになるが、本当にそうなのだろうか。そして逆に、宝くじについて知っている人ほど宝くじを買わないということになる。

※筆者撮影

 そばのセットがやってきた。予想どおりのビジュアルだがそれは当然のことだろう。そば屋に目新しさなど何も求めてはいない。さっそくいただくことにしよう。

 特にコシがあったり、香りが強かったりするわけでもなくごく普通のそばといえるが、そばを食べるのも久しぶりで普通に美味しい。しょうが丼も甘辛さが控えめの味で、これもある意味で想定通りの美味しさだ。そばも丼も見た目よりもわりと量があって食べ応えがある。

 なんとなく年末が意識されてくる季節にもなったが、もちろんそばは年末を象徴するメニューである。去年の大みそかは確か早朝と夜にそばを食べた記憶がある。当日早朝に食べた高田馬場駅前にあった立ち食いの老舗の店は残念ながら今年の夏に閉店となってしまった。

 まだまだ先の話だが、今年の年越しそばをどうしようかと思うと漠然といろいろな案が浮かんでくる。時間があるようなら自分で乾麺か生麺を茹でて食べてみてもいいのだろう。思えば大晦日に自分でそばを茹でたことはこれまで一度もなかった。とはいえ時間的余裕があるかどうかだけの話であり、何ならそばを茹でながら宝くじ当選番号の発表を心待ちにする呑気な師走というのも悪くはなさそうだが、個人的にはちょっと想像ができそうもない。

文/仲田しんじ

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