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オーディオブックと本の併用で学習効果がアップ!スキマ時間を使った「耳勉強法」の始め方

2022.11.01

米国・中国ではオーディオブックが電子書籍に迫る勢い

オーディオブック市場が熱い。2019年までは数十億円程度であった市場規模が、2020~21年にかけて急伸して100億円を突破。2023年には200億円台になると予測されている。

電子書籍の5000億円台には遠く及ばないが、米国・中国ではこれが「電子書籍に迫る」勢いであるところを見ると、日本におけるオーディオブックの未来は明るそうだ。

■見るより聴く方が脳の負担は少ない

オーディオブックの普及にはいくつかの理由があるが、「教養や仕事のスキルを高めたい」というビジネスパーソンが活用し始めているのが大きい。

書籍やYouTubeと違い、オーディオブックには、運転や料理の最中に「ながら聴き」できるというアドバンテージがある。くわえて、「脳への負担が小さく、疲れにくい」という特徴を挙げるのは、オーディオブックのリーディングカンパニー、(株)オトバンクの代表取締役会長である上田渉さんだ。

上田さんは、著書『超効率耳勉強法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の中で、目を使う通常の読書と音声で聞く方法とでは、脳の中で処理されるプロセスが異なると解説している。

認知神経学の専門的な話になるので詳細は控えるが、通常の読書の場合、目で単語を追うことから始まって、脳の中で文章の理解が行なわれるまで、6段階のプロセスを必要とするという。

対して、音声の理解では、それがほんの2段階のプロセスへと減少する。人類の長い歴史の中で、文字が発明されたのはたかが5千年前。音声によるコミュニケーションは、それよりはるか前から行なわれてきた。脳にとって文字の読解は、いまだに手間のかかるものなのである。

■オーディオブックと本の併用で学習効果が増す

話をいったん巻き戻そう。オトバンクが、自社サービスaudiobook.jpのユーザーに昨年行った調査では、オーディオブックの利用動機の1位が「教養をつけたい」、2位が「仕事のための学習」であった。それまで筆者は、「純粋に読書を楽しみたいという人が、大勢を占めるのでは」となんとなく思っていたが、それは3位にとどまっている。

そう、オーディオブックは、多忙なビジネスパーソンが、隙間時間を利用して勉強するためのツールというのが、大方の認識なのである。

それをふまえ、上田さんは、『超効率耳勉強法』の中でオーディオブックを用いた勉強を、より効果的にするための秘訣を教えている。

例えば、「目を閉じて集中して聴く」。運転などしながらの「ながら聴き」とは対極にある聴き方で、本の内容がより記憶しやすくなり、イメージや思考を広げやすいというメリットがある。

利用シーンとしては、部屋に独りでいる時だけでなく、イヤホンを使えば混み合う通勤電車・バスの中でもOK。

また、意外な方法として、本との合わせ技がある。つまり、オーディオブックとは別に本を用意し、朗読のスピードに合わせて本の字面を目で追うというもの。

これは、「複数の感覚から情報をインプットすることで、記憶の定着率が上がりやすくなる」そうだ。特に有効なのが語学の学習。

ネイティブスピーカーの朗読を耳にしながら、テキストブックの該当する箇所を読むことで、リスニングとリーディングの勉強が一挙にできる。

もう1つのバリエーションが、「先にオーディオブックを聴き、あとで本を読む」というやり方。この場合、オーディオブックでおおよその内容をつかんでおき、時間をおいて本を読むことで復習になる。

この方法も、記憶の定着率をアップさせる効果が高い。時間的なコスパが悪そうに思えるが、「一度読んだ本をもう一度読むときにはさらっと読める」のと同じで、速く読めてしまえ、時間の浪費という心配はいらないそうだ。

そして、時間効率が気になるなら、2倍速、3倍速で聴く方法もすすめられている。ただし、かなりの集中力を必要とするため「ながら聴き」には向かない点に注意。ちなみに、星野リゾートの星野佳路社長は、1.5倍速で聴き、有益な内容だと思ったら本も購入して味読しているという。

読書の必要性は認識しつつも、忙しさや疲れのせいで全然読めていないとこぼすビジネスパーソンは少なくない。オーディオブックは、その壁をブレイクスルーする有用なツールとなりそうだ。試しに1冊、「ながら聴き」から始めてみよう。

上田渉さん プロフィール
株式会社オトバンク代表取締役会長。日本オーディオブック協議会常任理事。1980年、神奈川生まれ。東京大学経済学部経営学科中退。在学中から、かものはしプロジェクトなど複数のNPOの立ち上げ・IT企業の経営を経て、2004年にオトバンクを創業し、代表取締役に就任。高校3年生の時には全国模試での偏差値が30。教師からも見放されたが、音声を活用した勉強法を駆使し、2浪の末に東京大学に合格。緑内障で失明していた祖父の影響で、目の不自由な人のためにもなる仕事をやりたいと強く思うようになる。自身が受験時代の勉強法として活用した音声学習もヒントに、オトバンクを創業。日本一のオーディオブック書籍ラインナップ数を配信する「audiobook.jp」を運営し、2022年に会員数250万人を突破。著書多数で、最新の著作は『超効率耳勉強法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

文/鈴木拓也(フリーライター)

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