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iOS 16から採用されたeSIMの移行が簡単できる「クイック転送」機能で何が変わる?

2022.10.27

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は、「クイック転送」が話題のeSIMについて話し合っていきます。

※新型コロナウイルス感染拡大対策を行っております

iPhoneで始まったeSIM移行サービス「クイック転送」の魅力は?

房野氏:iOS 16以降がインストールされているiPhoneで、eSIMの情報が簡単に移行できる「クイック転送」サービスが始まりました。キャリアごとに対応の差も見られますね。

房野氏

石川氏:アップルの発表があった日に、4キャリアにメールで確認したら、KDDIから「もうすぐ対応の発表をする」とすぐに返事が来て、その次に楽天モバイルも、16時ごろに発表と連絡が来ました。ドコモとソフトバンクからはそのあとに「できない」と返事をもらいましたね。

石川氏

法林氏:4社とアップルの状況を見ていると、ソフトバンクが最初にiPhoneの販売をしたこともあって、いろいろなことにいち早く対応するという動きが見られていたのが、ここ数年はKDDIが一番、「アップルがこう動きそうだから準備する」というのを、理解して動けている印象があります。

法林氏

房野氏:KDDIは高橋社長が舵を切っているのでしょうか。

KDDI株式会社 代表取締役社長 髙橋 誠氏

石野氏:どちらかというと、iPhoneの担当部隊だと思います。

石野氏

石川氏:ただ、今回思ったのは、Apple Watchのローミングはソフトバンクが対応していて、KDDIは対応していない。これは、アップルとエリクソンががっつり手を組んでいるので、エリクソンと関係があるソフトバンクは早い。独自にシステムを作っている、ドコモや楽天モバイルは、時間がかかります。

法林氏:ソフトバンクとエリクソンは歴史が長いからね。ケータイの時代に、エリクソンの端末プラットフォームを採用していて、「Vodafone Live!」などをやっていた。ACCESSのブラウザーを使いながら、PanasonicやNECはLinuxベースのプラットフォームを採用していました。

石野氏:KDDIはクアルコムですね。

法林氏:そう。端末のプラットフォームをクアルコムが提供していた。

房野氏:今回のクイック転送では、キャリアごとに対応の違いが見られますが、プラットフォームの違いが影響している可能性はあるのでしょうか。

石川氏:それはプラットフォームというより、「eSIMキャリアアクティベーション」という、契約と同時にeSIMを割り当てる仕組みが、昨年度から始まっていることが影響しています。楽天モバイルはサービスインからeSIMがあったのでできていますし、KDDIも後発のサービスであるpovo 2.0では標準的にやっていたので、結果KDDI全体ですぐに対応できたという形です。

石野氏:au側で、機種変更をするとその情報が上がって、セットアップの時にダウンロードできるようにしているはずです。

石川氏:なので、1年以内にauで機種変更をしたような人は、自然と対応しているはずです。

石野氏:それを拡張したのが、今回のクイック転送機能ですね。

房野氏:プラグインのようなものをダウンロードするということですか?

石川氏:いや、ユーザー側からは全然わからないと思います。勝手に契約に紐づくはずです。

石野氏:KDDIの端末の、IMEIとSIMのログを管理して、それを機種変更後の端末に降らせる準備をしておくというサービス。iPhoneにはもともとその機能があったので、KDDIが利用していました。それをユーザーが能動的に動かせるようにしているのが、クイック転送です。

 転送という言葉を使っているので、端末から端末に情報が移動しているように聞こえますが、新しい端末から再発行の依頼をかけているような仕組みです。転送という単語を使ったのは、うまいところですよね。

法林氏:電話番号とeSIM情報を「Transfer」(トランスファー)するから、転送といえばそうなんだけど、端末間で飛ばしているように見えるよね。

石川氏:でもBluetoothでの接続は一応必要だよね。

石野氏:Bluetoothはあくまでトリガーにしているだけですね。端末間で直接情報が移っているわけではありません。

法林氏:eSIMに限った話ではないけど、iPhoneは端末間でのデータ移行が始まって以降、できるだけ簡略化するように整備しているよね。以前は機種変更でクイックスタートで移行する時、iOSのバージョンが違うとできなかったのが、今は自動的にアップデートしてくれる。データ量にもよるけど、早ければ10分程度で新端末が使えるようになる。

房野氏:クイック転送は手数料がかからないんですよね?

法林氏:かかりませんね。石野君がいったように再発行をかける仕組みなので、本当はeSIMの業者さんのところで、証明書を発行するコストがかかるはずですが、おそらくそれは包括でやっていると思います。

房野氏:そうなると、石野さんのように何度もeSIMの再発行をかけると…

石野氏:「やめてほしい」と思われているはずです(笑)

房野氏:MNPをする場合も、クイック転送で一緒にデータを移せるようになる可能性はありますか?

法林氏:事業者間転送は、将来的にはできるようになるかもね。MNPで移行しつつ、eSIMのデータを移す時代がくるかもしれない。

石川氏:ただ、クイック転送はキャリアがユーザーを囲い込むための1つの手段のようにも思えるので、事業者間転送に進むかはわかりません。

石野氏:そうですね。クイック転送はiPhoneを使い続けてほしいアップルと、回線を使い続けてほしいキャリアの利害が一致しているからこそ成り立っていると思います

石川氏:iPhone 14の登場で、アメリカではSIMスロットがなくなったけれど、これはMVNOの排除に繋がるので、大手キャリアとアップルはWin-Winの関係です。これが日本で、例えば2023年のiPhone 15シリーズからSIMスロットがなくなるとなれば、MVNO各社が黙っていないですよね。

便利になるeSIM…懸念点は?

法林氏:KDDI系は「クイック転送」の対応を発表していますが、そのほかの情報がアップルの中で整理されていないし、キャリアの中でも整理し切れていない。eSIMから物理SIMに戻す仕組みもできてほしいし、そうなればeSIMとnanoSIMの使い方はもっと便利になっていきます。

 例えば、海外旅行の際に、「プリペイドSIMカードを売ってるけど、物理SIMカードしかない」となったら、au回線をeSIMに切り替えて、渡航先のプリペイドSIMカード(物理カード)を使う……といった動きができればいいよね。

石野氏:eSIMは確かに、書き戻す機能がないと怖さがありますね。

法林氏:eSIMと物理SIMをどうするのかは、キャリアの環境が整っているかどうかで大きな差がある。

石野氏:iPhoneのように、デュアルeSIM+物理SIM1枚であれば、あまり気にしなくてもいいですが、例えばGalaxyのようにシングルeSIM+物理SIM1枚の場合は、「この回線どっちにしようか」と迷ってしまいます。

法林氏:Googleが米国で提供している「Google Fi」というMVNOサービスでは、Google Pixelシリーズ間の機種変更なら、旧端末からeSIMのデータを簡単に移行できて便利。キャリアでもやってほしいと思っていたら、今回「クイック転送」が始まったので、今後、期待できるかなと思っています。

 ただ、僕の中で基準が1つあって、iPhoneやPixelのような、筐体の強度がある端末であれば、eSIM運用でいいと思いますが、フォルダブルスマートフォンのようなデバイスは、落として壊れた時のことを考えると怖いです。

石野氏:そこで頼りになるのが、ドコモショップの即日修理ですよ(笑)

法林氏:僕らは東京にいるから、いざという時にはドコモショップとか、それこそGalaxy Harajukuへ持っていけるけど、地方に住んでいると、即日修理に対応していないショップしかない場合もある。そう考えると、やはり端末間で転送できたほうが、環境が整備されているという意味でいいですね。

石野氏:1つ懸念としてあるのが、囲い込みに繋がらないかなという点。あそこまで便利になると、iPhoneから抜け出せなくなりそうです。

石川氏:そうですね。iPhoneのクイック転送は本当に便利だなと感じていますし、ついにここまで来たという感動もあります。iPhone間での機種変更時には、Apple IDに紐づいた電話番号の一覧が表示されて、クイック転送に対応しているKDDIとか楽天モバイルの番号だけが濃い色で表示されるようになっている。タップすれば簡単に移行できるので、囲い込みに繋がる可能性は十分考えられます。

 ただ、そこは総務省が黙っていないでしょうし、Androidスマートフォンでも対応せざるを得なくなるので、簡単にSIMのやり取りができるようになっていくといいですね。オンライン化がどんどん進んでいくので、リアルの店舗はますます厳しくなっていくと思います。

石野氏:アメリカでは、3キャリアがすべてeSIMに対応したので、iPhone 14シリーズでは、SIMスロット自体をなくしましたね。

iPhone 14

石川氏:ちょっと早すぎじゃない?

法林氏:驚いたよね。

石野氏:個人的には英断だと思っていて、ここまで強引にeSIM化を進めるのはかっこいいなと思いましたが、アメリカ人からはあまり反応が良くないみたいです。アメリカの3大キャリアがeSIMに対応したからといって、MVNOでは非対応のところもあるでしょうし、アメリカ人が海外に行った時に、物理SIMしか使えない場所だったらどうするんだ……という話もある。ブーイングが出るのは当然ですね。

石川氏:日本では、端末と回線は完全に分離すべきといわれていますが、結局端末と回線は強固に紐づいている。キャリアとアップルがしっかりと手を組んでやっているのがよくわかる1例ですね。

データ移行はどんどん便利に! これもアップルのおかげ?

法林氏:つい最近、古いAndroidスマートフォンに残っているおサイフケータイの登録を消そうと思ったら、Google Payに紐づいているQUICPayが何度やっても消せなかった。GoogleもQUICKPayも情報提供が不足しているんだけど、ネット上の情報を参照して、何とか消すことができました。手間はかかったけど、とりあえず、トラブルは何も起きなかった。かつては機種変更時にQUICPayを再発行してもらうため、専用の番号を郵送で送ってもらったり、くり返し失敗すると、確認の電話がかかってくるようなことがあったけれど、今はなにも問題ない。eSIMの再発行も含めて、便利になってきているなと感心しました。

石川氏:たしかに、iPhoneが入ってきてから、データ移行などが一気に楽になりましたね。

石野氏:それからGoogle Payも始まって、iDの機種変更も楽になりましたね。昔はドコモのiDを移そうとすると、とにかく大変だったのが、Google Payから消して、新端末で再発行するだけになっています。

法林氏:あと、モバイルSuicaもかなり簡単になりましたね。Viewカードもいらなくなった。いろいろな縛りがなくなってきた印象です。

石川氏:本当にApple Payのおかげですよね。

……続く!

次回は、Androidスマートフォン、秋冬の新作モデルについて会議する予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘
文/佐藤文彦

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