2022年のサッカーW杯の開催国として、カタールに世界中の注目が集まっています。しかし、日本から遠く離れたカタールについて詳しい人は少ないでしょう。カタールの国柄や地理および経済はもちろん、サッカーとの関係性も解説します。
カタールってどんな国?
まずはカタールの基本情報を解説します。地理や気候・宗教のほか、経済状況にも触れます。カタールについての理解を深めましょう。
アラビア半島の小国
カタールはアラビア半島東部に位置する半島です。ペルシャ湾に面していて、面積は1万1,427平方kmで、秋田県よりやや狭い国です。18〜19世紀に現在のカタール人の祖先に当たる部族が形成され、1971年に国として独立しました。
国土の大部分が砂地のため、首都ドーハに国民約266万人の半分近くが住んでいます。アラビア半島に位置するため高温多湿な気候で、7〜8月には最高気温が50度を超えることもあるほど暑い国です。国民の多くはイスラム教のスンニー派を信仰していて、国の法律には一般法と共にイスラム法が採用されています。
産業の中心はエネルギー資源
カタールの主要産業は、原油と天然ガスを中心としたエネルギー産業です。カタールは政府主導型経済であり、政府の方針とエネルギー産業の浮沈は一心同体の状態といえます。現在は1人当たりのGDPも高水準で、世界屈指の裕福な国です。
日本はカタールにとって主要な輸出国で、石油やLNG(液化天然ガス)および石油化学製品を輸出しています。しかし、日本にとって対カタール貿易は大幅な赤字状態です。カタールが自国のエネルギー輸出に依存しているように、日本もカタールのエネルギー輸入に依存しているといえるでしょう。
カタールでの暮らしぶり
続いては、カタールでの生活や仕事などの暮らしぶりを解説します。カタールに住んでいる人の傾向や、政策について知ってみましょう。
人口の9割近くが外国人労働者
カタールは他国にはない、珍しい人口構成をしています。在カタール日本大使館によると、2021年10月時点でのカタールの人口はおよそ266万人です。しかし、カタール国籍を持つカタール人は全体の10%程度、つまり25万~30万人前後しかいません。
カタール人は石油や天然ガスの恩恵を受けて十分な資産があるため、資源をもっと採掘するために労働者を雇う余裕があります。さらに、お金を稼ぎやすいところに人が集まるのは当然で、カタールには周辺国から数多くの労働者が集まっているのが特徴で、人口の9割近くが外国人労働者ともいわれます。
カタール人には優遇政策がある
カタールに周辺諸国から多くの人が働きに来ていると聞くと、外国人に仕事を奪われてカタール人は生活が圧迫されるのではないかと考える人もいるでしょう。しかし、カタール政府はカタール人を優遇する政策をとっているため、カタール人は多くの外国人が流入してきても豊かな生活を維持できています。
例えば、エネルギーおよび工業の国営企業では、優遇政策の一環として従業員の半分以上をカタール人にすることになっています。さらに水道代や電気代、電話代、学費などが無料であり、生活に困ることはほとんどありません。
カタールでサッカーW杯が開催されるまで
2022年のサッカーW杯はカタールで開催されますが、なぜカタールはサッカーW杯を誘致したのでしょうか。サッカーW杯開催の背景や、誘致成功後の動きを解説します。
サッカーW杯開催の背景
エネルギー産業だけに依存した現在のカタールの経済構造は、長期的に見ると不健全な状態にあります。カタール政府はこの事実を踏まえて、観光業を始めとしたほかの産業を活性化することに注力しています。観光業を活性化させるための一つの施策が、サッカーW杯の開催です。
サッカーW杯の開催地ともなれば、世界中の注目を集め、世界中の人々がカタールを訪れることは間違いありません。サッカーを通じてカタールに興味関心を抱いてもらい、旅行でカタールを訪れて欲しいという考えです。
サッカー発展に向けた活動
カタールは2022年のサッカーW杯の開催国に選ばれて以降、国内におけるサッカーの発展を狙って、様々な取り組みを行っています。
例えば、カタールW杯の開催が決まってすぐの2011年に、カタールはフランスの名門クラブであるパリ・サンジェルマン(PSG)を買収しました。正確にはカタール・スポーツ・インベストメント(QSI)と呼ばれる投資会社がクラブを所有していますが、QSIはQIA(カタールの投資庁)の子会社であるため、国家が所有しているのと同義といえます。
フランスのサッカークラブを買収したのは、世界トップレベルの選手や監督を自国に呼び込み、国内サッカーのレベルを向上させるためです。カタールは2004年にアスリート育成の中心拠点として「アスパイア・アカデミー」を設立し、国内外の選手育成に力を入れています。
「アスパイア・アカデミー」で育った選手は国外出身でもカタール人としての自覚を持っていて、国籍を変えただけの選手とは一線を画します。さらに、南米選手権やゴールドカップ・W杯欧州予選にも出場し、世界中の強豪との試合を重ねてきたカタール代表は、世界に通用するチームに仕上がっています。
インフラ整備にも大規模な投資
カタールはサッカーW杯の開催に向けて、インフラ整備に11年間で2290億ドルもの投資をしています。2010年の南アフリカ大会では33億ドル、2014年のブラジル大会では116億ドルの投資だったことからも、カタールの投資規模の大きさがよく分かるでしょう。
サッカースタジアム建設費への投資に留まらず、600店舗が入るショッピングモールや、高速道路・地下鉄などの交通網にも多大な投資をしています。スタジアムに関しては、既にあった「ハリーファ インターナショナルスタジアム」を改装し、「アル サマーマ スタジアム」などの七つのスタジアムを新たに建設しました。
構成/編集部