セルフメディケーション税制とは、一定金額以上の特定の医薬品を購入した際に減税が受けられる制度です。制度の基本情報から対象となる医薬品の紹介、そして具体的な数字を用いてどれぐらいの減税を受けられるかを解説します。
セルフメディケーション税制とは何か?
セルフメディケーション税制について、「セルフメディケーション」の説明、制度の概略、利用できる対象者を解説します。
そもそもセルフメディケーションとは?
世界保健機関(WHO)の定義では「自分自身の健康に責任をもち、軽度な体の不調は自分で手当てすること」を『セルフメディケーション』としています。
狭義では、医師の診察・治療が不要な軽度の病気については、自分の健康の最終責任は自分自身にあるという理念に沿って、一般用医薬品などを使って自分で治療することです。もちろん、症状の改善が思うように進まない場合は医療機関を利用します。
広義のセルフメディケーションでは、自分の体の健康管理は自分自身で行うことです。普段から「適度な運動」「バランスの良い食事」「十分な睡眠と休息を意識する」などして、日頃から健康を保つための行動が求められます。
市販薬の購入金額が一定以上になると減税される制度
セルフメディケーション税制は正式には『特定の医薬品購入額の所得控除制度』といいます。セルフメディケーションの一環として、街角のドラッグストアなどで売られている特定のOTC医薬品の購入金額が、年間1万2,000円を超えた場合、超えた分の金額について8万8,000円を上限に所得控除が受けられる制度です。
例えば、特定のOTC医薬品を年間5万円購入した場合は、3万8,000円(5万円-1万2,000円)が所得控除の対象となります。ちなみに、年間の医療費が10万円を超えた場合(年収200万円未満なら総所得金額等の5%以上の場合)に申告できる医療費控除とは併用できません。セルフメディケーション税制による所得控除と従来の医療費控除のどちらを利用するかは納税者自身で決めます。
参考:No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)|国税庁
誰でも申告すれば減税できる?
セルフメディケーション税制による所得控除が利用できるのは、以下の3点の全てを満たす場合です。
- 所得税・住民税の未納がない
- 申告期間に定期健康診断や予防接種などを受けている
- 従来の医療費控除を受けていない
セルフメディケーション税制による所得控除を利用するためには厚生労働省が定める「健康の保持増進及び疾病の予防に関する一定の取組」を証明しなければなりません。確定申告時の書類添付は不要ですが、対象医薬品を購入したときの領収書や上述の「一定の取組」を証明する書類は、自宅で5年間保管する必要があります。
セルフメディケーション税制対象の医薬品
ドラッグストアなどで販売されている医薬品が全てセルフメディケーション税制の対象となるわけではありません。セルフメディケーション税制対象となる医薬品の見分け方と具体的な商品例を紹介します。
識別マークの有無をチェック!
医師の処方箋がなくても、薬局・ドラッグストアなどで購入できる医薬品をOTC医薬品と呼びます。OTCとは英語のOver The Counterの略で「カウンター越しの」という意味です。
セルフメディケーション税制で対象となるのは、「セルフメディケーション税控除対象マーク」が付いているOTC医薬品のみです。セルフメディケーション税制による所得控除の利用を考えているなら、購入時にはこのマークが付いているかを確認の上で購入しましょう。
広く知られた「痛み止め」「胃腸薬」も対象
「セルフメディケーション税控除対象」の識別マークが付いているOTC医薬品をいくつか紹介します。
<ロキソニンS>
第一三共ヘルスケアが販売する頭痛・腰痛などの鎮痛、発熱時の解熱に用いられる解熱鎮痛薬です。
<パンシロンキュアSP顆粒>
ロート製薬が販売する胃痛・胸やけに対して胃酸をコントロールし、症状を和らげてくれる胃腸薬です。
<サロンパスEX>
久光製薬が販売する肩こりに伴う痛み・腰痛・打撲に対して鎮痛消炎効果がある、微香性の鎮痛消炎プラスターです。
セルフメディケーション税制でどれくらいお得になる?
セルフメディケーション税制の利用でどれくらい減税になるのかを具体的な金額を用いて解説します。また、セルフメディケーション税制を利用するためには欠かせない確定申告のやり方を紹介します。
実際のところいくら減税されるの?
例として、「所得税率:20%」「住民税率:10%」のAさんが「年間7万円分」のOTC医薬品を購入し、セルフメディケーション税制を利用した場合の減税額を算出します。
まず、控除の対象となる金額は1万2,000円を超えた分なので、7万円-1万2,000円=5万8,000円となります。
「5万8,000円」に所得税率と住民税率をそれぞれ掛けた金額が減税額です。
- 所得税の減税額:5万8,000円×20%(所得税率)=1万1,600円
- 住民税の減税額、5万8,000円×10%(住民税率)=5,800円
これら二つの減税額を足した「1万7,400円」がセルフメディケーション税制による所得控除を活用したときの減税額です。
「確定申告」をしないと税金は戻ってこない
OTC医薬品の年間購入金額が1万2,000円を超えても、確定申告しなければセルフメディケーション税制による所得控除は受けられません。自分自身で確定申告が必要な点は、従来の医療費控除と同様です。
国税庁ホームページにある確定申告書等作成コーナーを利用すれば、所定の項目に購入金額などを入力するだけで、控除額や税金の還付額(一度支払った税金のうち手元に戻ってくる金額)を自動的に計算できます。入力したページを印刷し、所轄の税務署に送付もしくはe-Taxで確定申告が可能です。
構成/編集部