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【今月の一冊】文句なしの傑作!SF界の新星による歴史戦争小説「地図と拳」

2022.10.20

地図と拳

 流行や新情報に敏感な『DIME』読者の皆さんに、今から読んでおけば来年の1月にきっと自慢ができる小説を紹介します。小川 哲の大作『地図と拳』です。

 1899年の夏。満州を勢力下に置き、朝鮮と台湾に手を伸ばすことで日本の脅威になりつつあった帝政ロシアとの開戦の可能性を調査することを命じられた高木が、通訳の細川を伴って、ハルビンを目指す船の上にいる光景から、50余年に及ぶ長い物語は滑り出します。高木はやがて起こる日露戦争ですさまじい戦死を遂げることになるのですが、弱々しい21歳の大学生として登場する細川は、満州を主な舞台に展開するこの物語の最重要人物として今後幾度も現われることになるんです。

20名を超える人物たちの運命と使命が交錯する

 科挙に5回落ちるも説話人として人気を博すようになり、やがて李家鎮という集落の屋敷を買い取り、その主である李大綱になりすますことに成功した周天佑。大学で地理学を学んだせいで満州に鉄道網を広げるための地図作りの任につき、後に現地に残って布教を命じられることになる宣教師のクラスニコフ。神拳会という新しい武術の過酷な修行の末、〝死なない〟肉体を手に入れて自らを「孫悟空」と名乗り、やがて李大鋼を殺して李家鎮(後に仙桃城と改名)を我がものにする楊日綱。黄海にあるとされる青龍島という小さな島が実在するかを調べることになり、その報告書のすばらしさに目を留めた細川によって満鉄に引き抜かれ、〈満州という白紙の地図に〉〈理想の国家を書きこむ〉仕事に就くことになる須野。須野の息子で、人間計測器ともいうべき異能を発揮することになる天才・明男。孫悟空の血のつながらない末娘にして抗日戦士である丞琳。日本と天皇陛下のために〈修羅〉になることも辞さない憲兵の安井。仙桃城を満州民族、漢民族、日本人、ロシア人、朝鮮人、モンゴル人、争いの歴史によって犠牲になったすべての死者が共生できる〈虹色の都市〉にしたいと願う細川。

 などなど主要登場人物だけで20名は下らない面々が、中国東北部は奉天の東にある町・李家鎮/仙桃城で、満州国の消滅と日本の敗戦へと至るまでの年月を、それぞれの運命と使命を交錯させながら生き抜いていく。立場や思想信条を違える人々の姿を描いて、重層的な物語になっているんです。

 作者は、戦争中に起こったあらゆる事柄を相対化し、様々な運命や使命を帯びた大勢のキャラクターの声に公平に耳を澄ませます。〝地図と拳〟のロジックを五感をフル稼働させて考え抜いています。個性際立つキャラクターたちの蠱惑(こわく)的なエピソードをこれでもかと投入し、史実に空想というアレンジを加え、「現代から過去の歴史を総体的に見直すことで、2022年に生きるわたしたちの未来を視る」という壮大なモチーフを変奏したのが、この5年の歳月をかけて完成させた625ページの傑作歴史戦争小説なのです。

 さて、なぜ『地図と拳』を読んでおくと来年の1月に自慢できるのか。それは、その頃発表される第168回直木賞を受賞するから。未来という白紙の地図にあらかじめ描かれているのです。

『地図と拳』

著/小川 哲 集英社 2420円

地図と拳

豊﨑由美
ひとつの国/都市の出現と消滅の半世紀にわたる物語の中に、様々な知見を投入したこの傑作が直木賞を受賞できなかったら、憤死するかもしれません。それほどすばらしい作品なのです。

【編集部イチオシの3冊】多様性を身につける

『一生使えるWebライティングの教室』

著/片桐光知子 マイナビ出版 2409円

『一生使えるWebライティングの教室』

■ 掲載される場所に合わせて書き分ける

紙媒体用が「文章を読みたい」人向けなのに対し、「情報を知りたい」人に向けなのがWeb用の原稿。キーワードや検索エンジンへの意識、起承転結を壊すなどなど。目から鱗の解説で、Web原稿がワンランクアップ必至だ。

『才能の科学 人と組織の可能性を解放し、飛躍的に成長させる方法』

著/マシュー・サイド 訳/山形浩生、守岡 桜 河出書房新社 2200円

『才能の科学 人と組織の可能性を解放し、飛躍的に成長させる方法』

■ 自分をもっと楽しむために

生まれながら才能がない……なんて悲観することなかれ。目的に合わせた訓練や二重思考、知覚の構造変化といったトレーニングを積む。研究と経験をもとに、自身の能力の飛躍的な成長が可能なのだと説く1冊だ。

『よくも言ってくれたよな』

著/中川淳一郎 新潮社 880円

『よくも言ってくれたよな』

■ 信じる者は救われ!?

コロナや五輪を中心に政治、ネット論など、著者のコラムをまとめた本書。おもしろく読みながらも、その内容に賛同したり、疑問を持ったり、反論したり。自身の価値観、倫理観、哲学などを改めて知らしめてくれる。

文/編集部


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