「位置測位戦争」というものがあり、それに日本も参戦しているのはご存知だろうか。
アメリカのGPS、ロシアのGLONASS、EUのガリレオ、中国の北斗、そして日本のみちびき。これらの測位衛星には、各国の最先端技術、そして国の威信が込められている。
「我々の衛星システムこそが最も優れている」ということを競い合う様は、武器を使わない戦争そのものである。
そんな戦争に、南アジアの雄・インドが参入し始めた。
今回取り上げるスマートウォッチAmazfit『GTR 4』と『GTS 4』は、国際間の宇宙開発競争と大いに関わりのある製品である。
インドの衛星測位システムにも対応予定
10月14日に発表されたAmazfitブランドの新型スマートウォッチ『GTR 4』と『GTS 4』。これは筆者個人が以前から日本上陸を待ち望んでいた製品だ。
丸型の『GTR 4』と角型の『GTS 4』、この両者は150種類のスポーツモードを搭載し、 8のスポーツ動作と15の筋力トレーニング動作を自動認識する機能も有している。
さらに、前世代よりもより正確で効率的なBioTracker 4.0 PPG生体光学センサーを採用。心拍数、ストレスレベル、血中酸素濃度などを今まで以上に細かく測定することができるようになった。
また前世代モデルでは『GTR 3 Pro』にしか搭載されていなかったローカルミュージックストレージ、そして内蔵マイクとスピーカーが『GTR 4』と『GTS 4』にはある。
このあたりで、『GTR 3 Pro』を所有する筆者は胸を熱くしてしまった。つまり『GTR 4』は『GTR 3 Pro』の正統後継機種ということなのだから。
さて、此度の『GTR 4』及び『GTS 4』は現時点で5つの衛星測位システムに対応している。それは冒頭に書いた通りのラインナップだが、その上で今後はNavIC(ナブアイシー)にも対応する予定だそうだ。
NavICは、インドの衛星測位システムである。
インドでは「NavIC搭載」が義務化?
インド政府がスマホやタブレット、スマートウォッチの「NavIC義務化」を実施するのではという話は以前からあった。
少なくとも、インドが自国生産品のNavIC対応を推し進めようとしていることは事実で、それはつまるところ国内の製造業発展を促すための政策である。
インド政府の意向は、当然ながらガジェット開発メーカーにも大きな影響を与えている。
仮に「NavICに対応していないスマートウォッチには高額の関税を課す」となったら、各メーカーは製品のNavIC対応化を促進するはずだ。
14億の巨大市場は、さすがに無視できるものではない。
結果、世界のどこにいても極めて正確な位置情報を伝えてくれるスマートウォッチが実現する。
その上で『GTR 4』と『GTS 4』は、デュアルバンド円偏波GPSアンテナテクノロジーも搭載している。
これにより、木々の覆い茂る山中や都会のコンクリートジャングルの中にいても誤差の少ない測定を実現する。
今作は、それだけ「現在地の正確な測定」に力を入れているというわけだ。
「フォーマルなイベント」にも行けるスマートウォッチ
さて、筆者が使っている製品はシルバーの筐体が美しい『GTR 4』である。
前作『GTR 3 Pro』と比較すると、若干角張った部分が窺えるデザインである(『GTR 3 Pro』は綺麗なまでの曲面を誇っていた)。しかしそれ故にメタリックな印象が与えられ、見た目の高級感にもつながっている。
これはちょっとしたパーティーでも装着できるのでは? と思えてしまうような上品さを『GTR 4』は持っている。
たとえば同じAmazfitの『T-REX 2』は完全に「スポーツのためのスマートウォッチ」で、豊富なスポーツトラッキング機能と成層圏からパラシュート落下しても壊れないほどの耐久性を有してはいるが(実際にそのような実験を行っている)、これをフォーマルなイベントで装着するとなると考えもの。
筆者は『GTR 3 Pro』を「平日日中の腕時計」、『T-REX 2』を「休日の腕時計」と評したことがある。
そして『GTR 4』は『GTR 3 Pro』と同じ「平日日中の腕時計」ではあるが、一方で「社交の場にも行ける」という要素も加わっている。
パンデミックも終りが見えた今、このような時計は重宝するはずだ。
価格は『GTR 4』、『GTS 4』とも3万1,900円。公式オンラインストアの他、Amazon、楽天市場、au PAYマーケット、Yahoo!ショッピングでも販売されている。
【参考】
Amazfit GTR 4
Amazfit GTS 4
取材・文/澤田真一