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【私たちの選択肢】坊主ストリッパー・清水くるみがストリップの世界に踏み出した理由

2022.10.23

【私たちの選択肢】坊主ストリッパー 清水くるみ ・前編

「勤めていたアパレルの会社が突然なくなることが決まって、3ヶ月後の解雇を言い渡されたんです。びっくりしました。それならもういっそ好きなことをして生きていこうって思いました」

そう話す清水くるみさんは、”坊主ストリッパー”という肩書きでパフォーマンス活動をしています。その唯一無二のスタイルは、人の体がもつ造形美への関心からはじまりました。

撮影:ごっつあん

「ストリップよりも先に、緊縛の世界を知ったんです。好きなモデルさんが緊縛のモデルをしている写真を見て興味が出ました。わたしは美大に通っていたのでヌードに抵抗はないし、人の体を純粋に美しいと思っていたんですけど、緊縛でしかできない体の造形を初めて見て、性的な魅力と造形の美しさが両方存在していることに興味をもち、”縄会”に参加をしました」

“縄会”とは緊縛の縛り手と受け手が集まるイベントです。ここで清水さんは受け手として縛られ、感情を大きくゆさぶられる体験をします。

「フィーリングが合う方に縛られると、自分自身がまるごと受け入れられている気持ちになるんです。縛られて安心するなんて衝撃でした」

緊縛をショーとして観客に魅せる”緊縛ショー”にも足を運びました。ショーは個人スタジオやイベントスペースなどさまざまな場所で開催されています。その日、見に行ったショーはストリップ劇場のSM興行として行なわれていて、香盤には踊り子さんのステージもありました。

清水さんはそこで初めてストリップの世界に出会います。

初めて触れたストリップの世界、そして舞台の上へ

「初めて見たストリップは自由で明るくて、人の体がもっと好きになったんです。自分の裸を見せることで、人に元気や感動を与えられるなんておもしろすぎるって思いました」

普段はなかなか表に出しにくい性、それをさらけ出してもいい世界では自分が自分でいられる。そう気づきはじめていた清水さんにふりかかったのが、長年働いていた会社からの3ヶ月後の解雇言い渡し。急な転職活動でしたが進みたい方向は決まっていました。

「じゃあもう好きなことをやってやる! と考えたときにはもう、裸になってショーをすることへの興味が大きくなっていて、そっちの道に進みたいと思ったんです」

同時に、清水さんにはもうひとつやりたいことがありました。それは坊主頭。美大の卒業制作で自ら坊主頭になったときの気持ちが忘れられずにいたのです。好きなことをして生きると決めたのならば、と新しい人生のスタートとして舞台上での断髪式を決めました。

「作品づくりで坊主にしたとき、まわりの人から「かっこいいし似合う」って評判がよくて自分でも気に入っていたんです。でも、まさかアパレルの販売員をしながら坊主にはできなかったので、今しかないと思いました」

尊敬している踊り子のおねえさんにお願いをし、ショーのやり方を教えてもらいレッスンをつけてもらいました。断髪式のイベント名は「酔生夢死」。初めて自分の体ひとつで舞台にあがり照明を浴びました。その後、レッスンをつけてくれたおねえさんと共に舞台にあがりストリッパーとしてデビュー。「坊主ストリッパー・清水くるみ」の始まりです。

性は人間の尊厳でもある

「わたしは恥ずかしがり屋の目立ちたがりなので、緊張するかなと心配したんですけど、舞台の上で人に見られることもおねえさんとショーに出ることもすごく楽しかったんです。ストリップって、体をじかに触っていないのにドキドキしたり安らぎを得たりできる。イメージしきれないほど性の世界は自由。いざ自分が踊り子として舞台に立つと、自由なだけではない部分も知ったけれどやっていて楽しいなと思いました」

自らが舞台にあがり、ストリッパーとして活動をしていくなかで清水さんは、”性は人を生きやすくするかもしれない”と考えました。

撮影:Karl Doyle

「性って普段は表に出しにくい話題だったりしますが、単純な本能だけじゃなくて人間の尊厳でもあると思うんです。自分のコアに近い、否定されるといちばんつらい部分。縄会やストリップ劇場はもちろんですが、SMバーやフェチ系のイベントなど性に関連する場所は、”他人の性癖を否定しない”というマナーが根付いています。

ルールや最低限のマナーを守っていれば、そこでは誰の性も否定しません。合わなかったら距離を保って尊重しあえばいいし、合う人とは深く話すことができる。こうやって性を解放できる場があれば、人はもっと生きやすくなるんじゃないかなって思ったんです。そこでならわたし自身も気持ちを解放することができました」

後半(https://dime.jp/genre/1489316/)では「慈しみM性感」と名前をつけて風俗嬢としても働くようになった今現在、性が解放してくれたことと性別があることでの生きづらさ、セックスワーカーへの差別や偏見を打破するために始めたラップでの音楽活動……息苦しい世界で自分らしく生きるための方法についてお聞きしていきます。

清水くるみ Profile

「坊主で生きていきたい!」と決意し、2016年自主企画で自身の断髪式を行う。2017年ステージデビュー。温泉場のストリップ劇場出演などを経て、現在イベントを軸にパフォーマンスを行う。「エロスの範囲を広げたい」「裸の価値を高めたい」をコンセプトに、エロティシズムや裸での表現を介して”息がしやすい世界”の実現を目指している。風俗キャスト、写真作品制作、文章執筆など、活動は多岐に渡る。

文・成宮アイコ

朗読詩人・ライター。機能不全家庭で育ち、不登校・リストカット・社会不安障害を経験、ADHD当事者。「生きづらさ」「社会問題」「アイドル」をメインテーマにインタビューやコラムを執筆。トークイベントへの出演、アイドルへの作詞提供、ポエトリーリーディングのライブも行なっている。EP「伝説にならないで」発売。表題曲のMV公開中。著書『伝説にならないで』(皓星社)『あなたとわたしのドキュメンタリー』(書肆侃侃房)。好きな詩人はつんくさん、好きな文学は風俗サイト写メ日記。

編集/inox.

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