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「ポケトーク同時通訳」を使ってわかった、人間の通訳にはない機械ならではのメリット

2022.10.19

新型コロナウイルスの流行が始まって以来、海外への出入国が制限されていた。しかし、10月11日に政府は水際対策を大幅に緩和し、1日あたり5万人という入国者数の上限が撤廃され、個人旅行客の入国も解禁された。これによって、インバウンドによる経済の活性化に期待を高める企業も少なくない。

出典元: Evgeniy Kazantsev / Shutterstock.com

そんな中、株式会社ポケトークは2022年10月12日、新製品「ポケトーク同時通訳」の提供開始を発表した。「ポケトーク同時通訳」は、英語を音声と字幕でリアルタイムに翻訳するソフトだ。英語を短く区切ってユーザーが選ぶ言語に翻訳し音声でも発話するため、まるで専属の同時通訳者がいるかのような対話が期待できるという。オンラインでのビデオ会議などはもちろん、動画視聴や対面での会話にも活用できる。現在はPCソフトのみの提供だが、スマートフォンやタブレットに対応するサービスの展開も考えているという。

先日行われた発表会には、ポケトークの代表取締役社長である松田憲幸氏が登壇した。

「言語の壁をなくす」ライフワーク

発表会に登壇した松田憲幸氏

水際対策の緩和がスタートした翌日という、狙ったようなタイミングで行われた「ポケトーク同時通訳」の発表会だが、これは計算ではなく全くの偶然とのこと。5年前から「言語の壁をなくす」というミッションの元に展開してきたポケトークだが、松田氏個人としては長年に渡って抱えてきた想いであり、ライフワークとも言えるミッションだという。

2017年から次々とモデルを開発し、進化してきた「ポケトーク」。しかし、新型コロナウイルスの蔓延により、訪日外国人は一時期、99.2%も減少。出国する日本人数も激減し、非常に厳しい状況に立たされた。しかし、現在ようやく水際対策が緩和され、今後はインバウンドの復活が見込まれる。その中で観光産業への支援として、ポケトークを11月30日まで事業者に無償で貸与するキャンペーンを行なうという。「急な変化への対応に困っている企業に、少しでも力になれれば」と松田氏は話す。

グローバルな展開も

海外でも事業を展開している「ポケトーク」だが、アメリカでの売り上げは一昨年と比べて3.4倍に伸びているという。アメリカにおいてはコロナ禍でも売上が成長し続けており、コロナ禍でありながらもニーズがあったことを示している。主に運転免許センター、大手百貨店、医療現場、学校などで導入されており、ポケトークの活躍は現地のニュースでも取り上げられている。

アメリカでの導入加速の背景には、雇用に対して労働力が少ない上に、約20%もの人口が英語を母国語としない海外からの移民だということが挙げられる。アメリカでは年々、移民の割合が増加しており、それに伴って“言葉の壁”を解決するツールが必要になる。今後もますます、アメリカではポケトークが重宝されることが期待される。

また、人道支援への活用として、日本のウクライナ大使館や、ポーランドへの避難民にポケトークを寄贈するといった対応も行なっていると、松田氏は説明した。

国内での“言葉の壁”

ポケトークは今後、「訪日観光」はもちろんのこと、「労働現場」「グローバルで展開」「人道支援」といった面での“言葉の壁”の解決に力を入れていきたいと話している。国内での「労働現場」に目を向けると、労働人口の減少が問題になっているという。しかし、外国人労働者を受け入れるには“言葉の壁”が問題になり、躊躇している企業も多いのだとか。

ポケトークが行った、ビジネスシーンにおける言語に関する意識調査によると、7割以上が、外国語を使用するビジネスパーソンに対して、「業務やコミュニケーションが“言語の壁”によって阻害されている」と回答。また、外国語を使用するシーンにおける企業の対応として、圧倒的に多い約半数が「社内の外国語が得意な社員が対応している」と回答。そのうち約7割が「外国語が得意な社員が本来やるべき業務に力を注げていない場合がある」と回答した。また、企業の経営層では8割以上が「通訳・翻訳によるコストが大きい」と回答し、本来なら同時通訳者を雇いたいところだが、コストの節約のために外国語が得意な社員が対応に当たっている、という側面も垣間見えた。

「ポケトーク同時通訳」への期待

ポケトーク同時通訳PCソフト使用中

実際にポケトーク同時通訳を体験してみたが、スピード感があり、かなり「同時通訳」に近い感覚である。翻訳した言葉の端々に時々、不自然さがあったりはするが、ソフトの性能が上がるとともに精度も高まってくることだろう。

以前アメリカに10年ほど住んでいた経験がある筆者は、よく通訳や翻訳に借り出される“外国語が得意な社員”のひとりである。個人的には、それによって興味深い業務に携われたりすることもあるのでメリットも少なくない。しかし、“プロの通訳者”と“英語が話せる人”は別物である。筆者は後者なので、素早く長文を暗記するのには長けておらず、話を頻繁に区切って通訳する必要があり、その分時間もかかる。

また、プロの通訳者はひっそりと影武者に徹して、感情は消して言葉を訳すのみに集中できると思うのだが、筆者にはそれは難しい。通訳の現場で議論が始まったり、訳している相手が事実とは異なる誇張した表現をしていたりすると、内心冷や汗をかいてオロオロしてしまうこともある。

また、A氏とB氏が話すべき間に通訳者として混ざることで、A氏もB氏も筆者個人に何気なく話しかけてしまう、という事態も少なくない。そうなると、A氏とB氏のコミュニケーションがかなり減ってしまう。何気ないコミュニケーションも、人間関係を築くためにはもちろん、仕事を円滑に進めるためにも必要なものだ。

その点、「ポケトーク同時通訳」は人間ではない。人(通訳者)の代わりにAIを挟むことは、A氏とB氏のコミュニケーションを増加してくれるのではないかと期待できる。それに、例え熱い議論が展開されようと、戦略として誇張した表現をしようと、AIなら動揺せず忠実に言葉を訳すのみだ。

松田氏もまた、アメリカに住んで10年になるとのこと。アメリカにいて感じるのは「彼らは外国語の勉強をする必要がなく、非常に大きなアドバンテージがある」ということだという。一方で、文法や発音が大きく違う日本語を母国語とする日本人には、英語の習得は簡単ではない。「ポケトーク同時通訳」は、そんな“言葉の壁”をなくし、言語による不利な立場を解決する希望になるかも知れない。

取材・文/まなたろう

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