2020年に発生したコロナショックにより、私たちのライフスタイルは大きく変化していきました。
ビジネスではリモートワークが加速し、それまでよりも家で過ごす時間が増えた方も多いはずです。そうした日々の生活の中で隙間を埋めてくれたエンタテイメントの代表格がネットフリックスやディズニープラスなどを展開する動画配信サービスでした。
とはいえ現在は再びコロナ前のように旅行客も伸びており、加入者数は鈍化しています。
ではもう今後はそうが配信サービスが伸びないのかといえば、そうではないでしょう。
なぜなら今後も世界人口は増加していくからです。
つまりここ数年が急激な需要によって加入者数が爆発的に伸びたのであって、むしろここから緩やかに伸び続ける企業とそうでない企業に明暗が分かれていくことが考えられます。
そこで今回はネットフリックスとディズニープラスを中心に激化する米国動画配信サービス競争の行方について解説していきます。
ネットフリックスvsディズニープラス
7月20日に発表されたネットフリックスの第2四半期決算において会員数が200万人減少したことが明らかとなり、ネットフリックスの急成長期が終わったことを強く印象付ける結果となりました。
その一方、2022年8月10日のウォルトディズニーの発表は動画配信サービス業界にとってゲームチェンジャーな出来事でした。ディズニープラスの会員数が1億5210万人に達し、傘下のHulu(フールー)などを含めた会員数は2億2110万人に上り、競合するネットフリックスの会員数2億2067万人を遂に上回ったからです。
とはいえ今後の行方はまだ分かりません。なぜならネットフリックス会長のリード・ヘイスティングス氏が直近の四半期決算で発表した資料によると、米国内では他の動画配信サービス会社やテレビ局と比較して、視聴時間では圧倒的にネットフリックスが凌駕しているからです。
実際、22年7月の米国動画配信サービスの視聴時間は首位のネットフリックスがシェア8.0%、続いてグーグル傘下のYouTubeがシェア7.3%、ウォルトディズニー傘下のHuluがシェア3.6%、アマゾンのプライムビデオがシェア3%となっており、ディズニープラスのシェア1.8%です。
これらのサービスはいかに会員数の減少を抑えて継続的にサービスを利用してもらえるのか、それが今後の大きなポイントとなります。
これらのサービスは言い換えれば「時間の奪い合い」ともいえます。
1日24時間という限られた時間のなかで自社のサービスを選んでもらえるかの競争でもあるわけです。
その視点に立てば動画配信サービスの最大のライバルは「ゲーム会社」であり、TV画面の奪いはいは新たなフェーズに進んでいるのではないでしょうか。
2強に追随する米国企業
ネットフリックスが2021年11月2日(米国時間)にサービス利用者向けにモバイルゲーム事業に参入しました。その狙いは既存サービスをゲームで補完することで自社サービスの付加価値を高め、解約数の減少や今後の料金値上げを見据えている可能性もあるでしょう。
そしてネットフリックスやディズニープラスの巨力なライバルとなっているのがフォートナイトなどを運営するEpicGames(エピックゲームズ)です。
そして2021年時点で世界3億5000万人のユーザーを抱えるフォートナイトと同じゲーム業界で米国の10代から圧倒的に支持されるオンラインゲーム・プラットフォームがロブロックスです。
これらのゲームコンテンツと動画配信サービスは可処分時間を奪い合う構造になっているのです。
そして映画やドラマ、ゲームなどのコンテンツと相性が良いと期待されるのが「メタバース」という新たな領域です。
最もメタバースと相性の良い企業とは
メタバース(Metaverse)とは「Meta」と「Universe」から形成された造語ですが、語源は小説家ニール・スティーヴンスンの著書「スノウ・クラッシュ」で初めて使われました。
その物語のなかで描かれた世界では、人間がアバターを介してネット空間でさまざまなやりとりを展開しています。
そしてスマホの先にあるものとしてメタバースは世界中から注目されているのです。
メタバースのポイントとなるのが強いブランド力を持ったコンテンツといわれています。
たとえばスターウォーズなどの場合、映画のなかに没入できるような体験がメタバースで今後実現されるはずです。つまり強力なコンテンツがある企業がメタな空間とプラットフォームを握ることが予想されます。
その前提で考えた場合、コンテンツを持っていない企業の代表格がフェイスブックから社名を変更した「メタ」です。現在も事業転換を狙っていますが、今後M&Aなどを進めない限りメタ自身はコンテンツを持っておらず、メタバース時代でプラットフォーマーになれるのかは分かりません。
ではコンテンツを保有している条件に当てはまる企業はどこかといえば「ウォルト・ディズニー」です。
ディズニーはディズニーアニメだけでなく、前述したスターウォーズの他にもマーベルなどを保有しており、メタバース向きのコンテンツを豊富に保有しています。またディズニーは既に世界的人気のテーマパークであるディズニーランドを展開しており、コンテンツや世界観を創るDNAが企業文化として受け継がれています。
つまり現時点において、メタバース時代における圧倒的な優位性がディズニープラスにはあることを意味しています。
おわりに
今回はネットフリックスとディズニープラスを軸に動画配信やメタバースについて解説させていただきました。また今後のエンタテイメント事業の大きなポイントとして「ゲーム」や「映画」というコンテンツが重要になるのではないでしょうか。たとえばゲーム会社がメタバース向けの映画を創り、映画会社がメタバース向けのゲームを創るという流れです。
そう考えたときにアニメやゲームなどのコンテンツ文化のある日本企業にも必ずチャンスがあり、筆者としては日本企業の躍進にも期待したいところです。
文/鈴木林太郎
編集/inox.