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【深層心理の謎】脳内でポジティブな記憶が活性化するとネガティブな記憶が弱く書き換えられる!?

2022.10.14

 これまでの人生で人並みに挫折を味わい、深く落ち込むこともあったが、時期を経て思い返してみれば、その挫折は現実離れした期待から来ていたものだと気づかされることもある。その大きな挫折はいわば“自作自演”であったことを理解できれば、ネガティブな記憶もマイルドに中和できるのかもしれない——。

トラウマについて考えながら夜の池袋を歩く

 有名なテニスプレーヤーが引退したが、見る限り本人も納得の上での引退のようでなによりである。しかしその心中は本人でしかわからないのも事実だ。アスリートの多くが万策尽き果てた絶望の中で第一線を退いていたとしてもおかしくはない。

※筆者撮影

 少しばかり時間のかかる用事を終えて池袋に戻ってきた。もう夜の8時である。東京メトロ副都心線の改札から地下道を端まで歩き、要町方面の出口から地上に出た。ひと仕事終えてお腹も減っているのでどこかで何か食べて帰ることにしよう。明日は午前中から外に出る用事があるので「ちょっと一杯」は控えることにしたい。まぁ、文字通りの“一杯”ならいいのだが。

 通りの北側は歓楽街で飲食店も多い一帯だが、ひとまず駅の方へと戻ることにする。何度か入ったことのある立ち食いそば店に続いてステーキ店の前を通り過ぎる。ステーキもいいのだが昨晩は焼肉を食べているので、できれば今宵は肉以外にしたい。

 一世を風靡した人気アスリートの引退は、寄る年波には勝てないという現実を突きつけられる残酷さもあり、ファンにとっては“○○ロス”という体験にもなるのだが、それでも究極的には“他人事”ではある。

 他人事ではなく、各々の人生には受け入れがたい現実もあれば、やり切れない思いや無力感を抱くこともあるだろう。こうした体験は最悪の場合、トラウマとなってPTSD(心的外傷後ストレス障害)にも発展しかねない。

 自分も人並みにこれまでに何度も挫折を体験して落ち込むこともあったし、その一時期にはトラウマに近いものになっていたこともある。しかしどうであれ「時が解決する」のは少なくとも自分にとっては一面の真理であり、どれほどお先真っ暗な気分の時期であったとしても、日々の仕事や雑務に追われているうちに心の傷は癒えてくるものだ。

 そして冷静に思い返してみれば、自分の期待と願望があまりにも高かったからこその挫折であったこともよく理解できるようになる。まるで“奇跡”を期待してたようなものであったのだ。現実離れした期待を抱いていれば、挫折するのもある意味では当然の流れということになる。

 そしてこのことに気づけば、トラウマに近かった記憶もずいぶんと角が取れて“毒”も薄まってくる。その時期には絶望しかもたらさなかった体験の記憶は比較的無害な内容に書き換わってアップデートされるだろう。

ネガティブな記憶は“書き換える”ことができる!?

 通りを進む。古くから池袋西口側のランドマーク的存在であった某商業施設の建物が完全に解体され更地になっていて見上げる空が広い。この界隈もどんどん変わっている。横断歩道の赤信号を待って渡り、立教通りのほうへ行ってみたい。

※筆者撮影

 トラウマだと思っていた体験の記憶も“書き換える”ことができそうなのだが、最新の研究ではポジティブな記憶とネガティブな記憶を保存する脳の領域が特定されると共に、幸せな記憶を人為的に刺激することで、ネガティブな記憶を希薄にする方法が突き止められていて興味深い。


 記憶関連障害を治療するために記憶を使用するための最も重要なステップの1つは、脳内のどこにポジティブな記憶とネガティブな記憶が存在するかを理解し、2つを区別する方法を理解することです。

 記憶は脳のさまざまな領域に保存されており、個々の記憶自体はエングラムと呼ばれる細胞のネットワークとして存在します。ラミレスの研究室は脳の海馬に位置する記憶のネットワークに特に関心を持っています。海馬は記憶の形成と検索に重要な感覚情報と感情情報を保存するカシュー状の構造体です。

「Nature Communications Biology」に掲載された新しい論文で、(スティーブ・)ラミレス、筆頭著者のMonika Shpokayte、およびボストン大学神経科学者のチームは、ポジティブな記憶とネガティブな記憶の間の重要な分子的および遺伝的違いを明らかにし、複数のレベルで2つが実際には著しく異なることを発見しました。

 ポジティブな記憶やネガティブな記憶のような感情的な記憶は、他の種類の脳細胞とは物理的に異なり、そして互いも異なることが判明しました。

※「Boston University」より引用


 ボストン大学をはじめとする合同研究チームが2022年9月に「Nature Communications Biology」で発表した研究では、ポジティブな記憶とネガティブな記憶が保存されている脳の領域は別々であり、よりポジティブな記憶を刺激することで、ネガティブな記憶のネガティブ度合い下げることができることを示している。つまり嫌な記憶を“書き換える”ことで無害な記憶にできる可能性を指摘しているのである。

 研究チームは オプトジェネティクス(optogenetics)と呼ばれる最先端の技術を駆使して、マウスの脳におけるポジティブな記憶とネガティブな記憶を色づけして識別できるようにした。そしてそれらが腹側海馬(ventral hippocampus)においてそれぞれ別々の細胞群に保存されていることを突き止めた。

 記憶が可視化できたところで、研究チームはレーザー光を使ってそれらの記憶細胞を人工的に活性化することで記憶が書き換えられることを発見したのである。ポジティブな経験を人為的に活性化すると、ネガティブな経験が上書きされ、悪い記憶の感情的なネガティブさの度合いが弱まることがわかったのだ。

 具体的にはマウスにネガティブな経験を思い出させ、この恐怖記憶の想起中に、ポジティブな記憶細胞群を人為的に再活性化させたところ、ポジティブな記憶は恐怖記憶を上書きし、そのネガティブな記憶を想起した時の恐怖反応を減少させたのである。つまり過去の記憶を人為的に操作できることが実証されたのだ。

 またポジティブでもネガティブでもないニュートラルな記憶であっても、それをネガティブな記憶と人為的に関連づけることで、恐怖記憶を混乱させて結果的に和らげられることもわかった。

 このオプトジェネティクス技術をそのまま人間に適用することはできないが、逆にマウスとは違って人間は対話によって記憶を想起させることができる。対話によって適切にネガティブな記憶とポジティブな記憶を思い出させることで、対話心理療法におけるPTSDの治療法を開発できる道も拓けていることになるのだろう。

タイ旅行のネガティブな思い出が書き換わる

 信号が青になり、通りを渡る。渡ってしまえばこちら側も飲食店は多い。渡ってすぐのところにもカレー屋や中華料理屋、ラーメン屋などが並んでいる。1階が中華料理屋のビルの2階にはタイ料理屋があるようだ。看板の下の窓ガラスには「入口はウラ側」の文字が内側から表示されていた。裏に回ってみることにしようか。

※筆者撮影

 三差路の交番の角を右に曲がると立教大学に通じる立教通りだ。少し進むと交番の奥の雑居ビルには確かにタイ料理屋の電光看板があり、ビルの入口には上階にのぼる階段がある。あがってみることにしよう。

 雑居ビルにある店特有の小さなドアの引き戸を開けると年配の男性が迎え入れてくれた。おそらくはタイの方のように見受けられるが日本語は流暢である。

 店内は奥に細長い構造で窓に近い方にある2人掛けの席に陣取らせていただいた。さっそく店内に貼られているメニューと、テーブルのホルダーに差してあるメニュー表をチェックする。ガパオライスが期間限定で少し安くなっているようだ。ガパオライスでもいいのだが、久しぶりにパッタイが食べたい気分だ。

 水を持って来たお店の人にパッタイと、メニューを見て気になった飲み物とミニ春雨サラダのセットメニューをお願いした。飲み物はジムビームハイボールを選ぶ。飲むつもりはなかったのだが一杯ならいいだろう。

 先客は女性2組だけではあったが、続けざまにテイクアウトを引き取りにお客が来店していた。スマホから注文できるようだ。こうしたゆっくり過ごすタイプのお店ほど、このご時世では夜の来店客数は減っているのかもしれない。食べてすぐに帰るファストフード系だとお店によってはけっこうお客が入っていたりもする。

 タイ・バンコクにはだいぶ前に1度行ったことがあるが、実はネガティブな思い出もある。バンコクにある某有名寺院を見学し境内に入る際には靴を脱いだのだが、まるで昔の体育館にあったような共用の下駄箱に入れたスニーカーを盗まれてしまったのである。旅行に合わせて買った新品のスニーカーだったのでなかなか精神的ダメージも大きかった。職員の人に話したら一緒に探してくれたのだが、まさか自分の足に合いそうなほかの人の靴を履いて帰るわけにもいかない。どこを見ても無いようだと告げると、職員の若い男性はどこに保管していたのかわからないが履き古したゴム草履を恵んでくれた。代金はいらないという。

 貰ったゴム草履を履いて寺院を出て、街中の靴屋でよくわからないメーカーの安いスニーカーを買ってその旅の間は履いていたが、帰国後は到底履く気にはなれず早々に処分した。

※筆者撮影

 ハイボールに続き、パッタイがやってきた。ミニ春雨サラダも案外しっかりと量がある。

 さっそくいただこう。箸とフォークを同時に使う変則的な作法で麺をかき混ぜながら引き上げてひと口啜る。やや甘みとコクのある麺の歯応えと、鼻を抜けるココナッツの風味がまさにパッタイである。これがタイの味だと再確認する食体験だ。

 タイ旅行では今あげたようなネガティブな体験もあったのだが、もちろん面白い体験も多かった。船で川を渡ったり、三輪タクシーの「トゥクトゥク」に乗ったり、観光地を巡ったりしたのもよかったが、やっぱり印象に残っているのは食べ物だ。それまではあまりタイ料理を食べることもなかったのだが、この旅の後からたまにはタイ料理屋に足を運んでみたくなることも増えた。

 ネガティブな思い出もあった旅だが、思い返すほどに行ってよかったと思えてくる。これもまた記憶が書き換わっている事例ということになるだろうか。ともあれ久しぶりにありつけたパッタイの美味しさには何もいうことはない。あたらめて本場で食べてみたい気もするが、この先再びタイに行く機会は訪れるのだろうか。

文/仲田しんじ


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