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ドイツ、フランス、ベルギー、完全なるアフターコロナとなった欧州のサッカー業界をレポート

2022.10.14

マスク規制はドイツの公共交通機関と取材時だけ。完全なるアフターコロナの欧州の今

スタッド・ランスの試合後、対面で取材に応じた伊東純也(筆者撮影)

 10月11日から新型コロナウイルス対策の入国制限が大幅に緩和された。これまでは団体旅行だけしかビザが発給されなかったが、同日以降は個人旅行が解禁され、アメリカや韓国など68カ国・地域からの短期滞在者のビザ取得も免除される。入国上限5万人も撤廃され、入国時の抗原検査もなくなるという。唯一の条件は、ワクチン3回接種証明か出国72時間以内のPCR陰性証明提示のみ。日本もようやく欧米諸国と同じ水準に戻ることになる。

 筆者は9~10月にかけてドイツ・フランス・ベルギーを取材で回ったが、日本出国時にエティハド航空のワクチン3回接種証明やPCR陰性証明を求められることもなく、トランジットのアブダビでもコロナ前と全く同じフリー状態だった。

エティハド航空の機内(筆者撮影)

 もちろん機内ではマスク着用が求められ、航空会社から不織布マスクと除菌シートが入った衛生パックも提供されたが、全員がそれを使っているわけではなかった。日本→アブダビ便は日本人乗客が多かったため、大半がマスク着用で10時間以上の長旅をしていたが、アブダビ→フランクフルト便は比率が半数程度に減少。すでに欧州や中東では「ワクチンをしていればマスク不要」という考え方が広がっている様子が見て取れた。

 ただ、到着時のフランクフルト空港は入国審査がやや厳しかった。EU外のところは長蛇の列ができ、1人1人に「何日間の滞在か?」「帰国時のエアチケットを持っているか?」といった質問を投げかけ、丁寧にチェックしていた。機内前列の方に座っていた筆者はいち早くゲートを通過できたが、後列に座っていた仲間が出てくるまで1時間近くかかった。パリやブリュッセルなど他のゲートウェー空港だと対応が違うのかもしれないが、ドイツの場合はこれもコロナ対策の一環なのかもしれない。

到着時のフランクフルト空港は閑散としていた(筆者撮影)

 というのも、ドイツはその後に利用する公共交通機関はマスク着用が義務付けられていたからだ。ドイツ国鉄や地下鉄、バスなどには表示が大々的に出ていて、特に高齢者中心にルールを守っていた。外に出ても一部の高齢者や小学生がマスクをして歩いており、欧州の中で生真面目な国民らしい振舞いが目についた。

ドイツでの選手取材にはマスク必須。ケータリングも簡素に

 スタジアムでも、ドイツだけは選手と対面で話す記者には不織布マスク着用が求められていた。取材許可メールにもそのことが明記され、試合中の記者席でノーマスクだった人たちもミックスゾーンに入る前にはきちんとマスクをしていた。今回、9月17日のシュツットガルト対フランクフルト、30日のハノーファー対ハンブルガーSV、10月1日のデュッセルドルフ対ビーレフェルトの3試合に赴いたが、いずれも記者たちの規律ある行動には感心させられた。

取材に応える田中碧(筆者撮影)

 さらに言うと、ドイツでは試合前のケータリングも簡素なものになっていた。2019年までは試合前に牛肉の煮込みや焼きソーセージ、カリーブルスト(ソーセージのケチャップ和え)、サラダといった本格的な料理がメディアに出され、我々もそれを楽しみにしていたが、今回出てきたのは、ケーキやパンなど簡単なものばかり。なるべく接触を減らそうという配慮なのだろうが、ドイツならではの味を楽しみにしていた側としては少し残念に感じた。

 Jリーグもコロナ禍以降は水1本も出なくなったところが多い。「感染リスクのある飲食は極力減らす」というのがスタンダードになりつつあるようだ。

ドイツ名物「カリーブルスト」が試合前のケータリングでは出なくなった(筆者撮影)

 だからこそ、観客向けの飲食売店は苦戦している様子。ドイツ1部ではサッカー人気の衰えが感じられなかったが、2部のゲームは空席が目立つなど客離れが起きているのは紛れもない事実。イタリアやポルトガルなどではその問題が深刻化しているという。日本も徐々には観客が戻ってきてはいるものの、横浜F・マリノスの3シーズンぶりの優勝決定がかかった10月8日のガンバ大阪戦でも、日産スタジアムがキャパシティの半分以下の3万2516人しか入らなかった。一度、遠のいた人々を取り戻すのは至難の技なのだ。 

フランスやベルギーでは完全なるアフターコロナ状態

 一方、ドイツを離れてフランスやベルギーに行くと、アフターコロナはより一層進んでいるように感じられた。というのも、両国では公共交通機関でのマスク規制は皆無で、街を歩いていてもマスク姿の人は全くいない。9月18日のスタンド・ランス対モナコ、10月2日のシントトロイデン対オイペンの2試合に行っても、記者会見場やミックスゾーンではまるでコロナなどなかったかのように、記者と監督、選手がノーマスクでダイレクトに会話していた。

 筆者も前者の試合後に伊東純也、後者の試合で岡崎慎司、橋岡大樹と会話した。10月3日にはシントトロイデンのトレーニングにも取材に行き、香川真司やシュミット・ダニエルとも会話したが、彼らは対面での会話を気にしている様子はない。こちらが申し訳ないと感じ、日本にいる時と同様、しっかりとマスクをした状態で取材をしたほどだ。

練習場で笑顔を見せた香川真司(右)と林大地(左)(筆者撮影)

 すでに日本でも「屋外で一定の距離を保った状況下ではマスク不要」と言われているが、3年近く続けてきた習慣はそうそうやめられない。もともとマスク文化のない欧州と違って、日本人の脱マスクは非常に難しい。逆に言えば、来日する外国人にそれを求めるのもハードルが高いということにもなる。水際対策緩和後の国内の今後を憂慮してしまった。

MySOSのファーストトラック登録には課題も

 こうして日本代表のアメリカ・エクアドル2連戦(デュッセルドルフ)取材を含めて約20日間現地滞在し、10月4日にフランクフルト空港から帰国便に乗ったが、その前にやらなければならなかったのが、MySOSのファーストラック登録。帰国便到着予定6時間前までに完了し、画面が青か緑になっていれば、検疫をスムーズに通過できるというのだ。゜

 MySOS自体は2021年11月にオマーン遠征に行った時からスマートフォン上で使っていたが、今年7月8日からMySOS Webが運用開始になったという情報を入手。渡欧前にスマホとPC上の両方で使えるように連携操作を済ませておいたので、手続きはPCから進めた。

 質問状に帰国便の座席番号を入力しなければいけないため、10月3日にオンラインチェックインをしてから、こちらの作業に取り掛かった。が、まず驚いたのがパスポートの登録。jpegファイルをアップロードして、すぐに次の質問状に進めるかと思いきや「審査中」の画面が出たまま。そのまま何十分もじっとしているわけにいかなかったため、パスポートはスキップして、質問状の回答を優先。さらに誓約書の入力も終えた。

 そのタイミングでパスポートを再登録しようとしたら、戻ることは不可。仲間によれば「審査中が承認に変わるまで1時間以上はかかった」とのことで、想像以上に余裕を持って取り掛かる必要があるのだと分かった。

MySOSが青か緑表示になるまでには結構時間がかかる(筆者撮影)

 さらに、次のワクチン3回接種証明のアップロードが厄介だ。これもパスポート同様、jpegファイルで行ったのだが、またも「審査中」と出る。厚生労働省の入国・帰国説明のサイトには「現在、多くのご登録をいただいております。入国日が近い方から優先的に確認を行っていきますので、ご了承ください」と書かれていて、「もしかすると日本到着6時間前に間に合わないかもしれない」と危機感が募った。

 結果的には約5時間後に「承認されました」というメールが届き、青色画面に変わったのでよかったが、水際対策緩和で大量の外国人が入国するようになれば、審査作業に遅れが出る。こんな手間のかかることをやっているのは、先進国では日本くらい。これは問題だと感じた。

 成田到着時も、到着ロビーに大量の検疫スタッフが並んでいて、「画面を用意してください」と口々に声をかけていた。ファーストトラック登録をしていない外国人は少なくなく、彼らに手取り足取り教えている。我々のような事前申請者も何カ所かのブースに行くように求められ、入国審査場に辿り着くまでに10~20分の時間を擁した。

11日の水際対策緩和前でも成田空港ではかなりの列ができていた(筆者撮影)

 1年前にオマーンへ行った頃の数多くの紙の書類提出や抗原検査がなくなっただけでも助かったが、この対応で本当に大量の外国人観光客を捌けるのか…。11日以降の日本の水際対策の行方が気になった。

 こうした課題はあるものの、コロナ感染拡大から3年近い時間を経て、ようやく海外への行き来が容易になったのは確か。円安やウクライナ情勢による治安への懸念、燃料費高騰、欧州エアチケットの値上がりといった高いハードルはあるものの、我々も足止めを食らっていた状況から解放され、今後は比較的自由に取材にも行けそうだ。

 ただ、コロナ前レベルの観光旅行水準に達するにはもう少し時間がかかりそう。その時は果たしていつ訪れるのだろうか…。

取材・文/元川悦子
長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。

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