クラフトビールやクラフトジンなど、世界的なクラフト酒人気に乗って、次なるブームを予感させるのが「メスカル」。
メスカルは、メキシコのアガベ(リュウゼツラン)を主原料とする蒸留酒。500年前とほとんど変わらない伝統的製法で造られ、神に捧げられる神聖な供物でもある。
アガベから造る蒸留酒と言えばテキーラが有名だが、実はテキーラもメスカルの一種。〝アガベ・アスール〟という品種を使い、メキシコ5州にて規定の製法で造られる(=原産地呼称)のがテキーラ。
一方、メスカルはアガベ・アスールを含む50種以上のアガベを使うことが許されているうえ、ハーブなどの副原料を自由に加えることが可能なため、より個性豊かな味わいが楽しめるのだ。
その後、メスカルもテキーラに次いで原産地呼称が整ったことをきっかけに、すでにテキーラブームが起きていたアメリカから火がつき、ヨーロッパやアジアへも人気が拡大。「日本でも昨年ぐらいから扱う店が一気に増えました。種類も豊富になってきて、飲み比べを楽しむ方も多いんです」と話すのは、100種以上のメスカルを扱う万珍酒店の宮川義浩さん。
さらに、蕎麦や鮨に合わせる店もあるというからおもしろい。
「メスカル独特のスモーキーな香りはかつお節の香りとも相性がいいので、蕎麦つゆとも合うんです」(そば處大野屋・大野慎介さん)。アルコール度数は40度以上だが、「意外に飲み口がやさしいので女性にも好評です」とメスカルに強いバー・タオナの杉野克彦さん。
スモーキーな香りとやさしい味わいを生かしたカクテルも人気で、多様な楽しみ方が広がっている。
メキシコ原産のリュウゼツラン。メスカルの原料として使用できるまでには8〜10年ほどかかる。30年かけて成長する野生品種も。
メスカル × 飲み比べ
同じブランドのアガベ違いを飲み比べるのもおもしろい。フレーバー付き塩とオレンジのテイスティングセット500円、メスカル各種1000円〜。
お気に入りのメスカルを量り売りで手に入れたい!
万珍酒店/MANGOSTEEN
バックバーにメスカルがズラリと並ぶが、実はバーではなく、酒屋の角打ち。自社輸入する銘柄など、約100種あるメスカルの飲み比べが楽しめる。お気に入りが見つかったら30mlの量り売りで、テークアウトも可能。
DATA
[住]東京都世田谷区代沢4-29-14 [電]03・6413・8819 [営]15:00〜23:00 [休]月
オススメの1本!『アルタレス デ ミ ティエラ チョコラテ』
新進の女性醸造家が手がける注目のメスカル。ドライな味わいの中に、蒸留時に加えたカカオのフレーバーとスパイスの香りが広がる。
メスカル × カクテル
左は、ベルモットを加えた「メスカループ」1680円、右はキュウリやハラペーニョが入ったスッキリ系の「サマースマッシュ」1500円。
オリジナルカクテルでメスカルの魅力を知る
TAHONA(タオナ)
モダンメキシカンを提供するレストラン『ルビア』2Fに誕生したメスカル&テキーラバー。店名がメスカルの伝統的な製法に由来するなど、小規模蒸留所のメスカルにこだわる。月替わりのオリジナルカクテルが好評だ。
DATA
[住]東京都渋谷区宇田川町13-4 コクサイビルC館2F [電]050・3204・1744 [営]11:00〜25:00 [休]月
オススメの1本!『ワハカ トバラ』
代々続く醸造家の5代目が伝統製法で造る逸品。山の急斜面で育ち、成熟までに12年を要するというアガベの王様「トバラ」100%使用。
メスカル × 和食
度数が下がって飲みやすくなるので、食事と合わせる時はソーダ割りがオススメ。厚焼き玉子750円、海老天ざる1650円、ソーダ割り1000円〜。
メスカルと和食という意外な親和性を発見する
そば處大野屋 元代々木町店
創業74年の歴史ある蕎麦店だが、テキーラやメスカルを扱って10年というからびっくり。ソムリエやテキーラマエストロの資格を持つ4代目の大野慎介さんは酒のエキスパートでもあり、料理と酒の両方に力を注いでいる。
DATA
[住]東京都渋谷区元代々木町3-10 [電]03・3467・7513 [営]11:30〜14:00(LO13:45)、17:30〜22:00(LO21:30) [休]不定休
オススメの1本!『デルンベス サンルイスポトシ』
野生のアガベ・サルミアナから造られる個性的なメスカル。スモーキーさを与えない製法で、一般的なメスカルとは異なる風味が特徴。
取材・文/岡本ジュン
※本記事内に記載されている商品やサービスの価格は2022年8月31日時点のもので変更になる場合があります。ご了承ください。