青山商事が展開する「ザ・スーツカンパニー」では、リモートワークで通勤する機会が減ったことから、ビジネススーツの売り上げが落ち込んでいた。しかし、コロナ禍が落ち着きを見せ始めると同時に、スーツやオーダースーツの売り上げは復調傾向。ただ、コロナ前とは、ビジネスウェアのあり方自体が変化しているようだ。
それらのニーズに応えるために、ザ・スーツカンパニーが手がける4ブランドを1つの店舗に集約し、地域性に合わせたサービスを提供するウィジェット型の店舗「スーツスクエア(SUIT SQUARE)」の1号店が大宮(埼玉県)に2022年10月7日オープンした。オープン前日には、今後の戦略と店舗の内覧会が開催された。
地域の特性に合わせたサービスを展開する「ウィジェット型店舗」とは
Wi-Fi環境も整えられた無料のワークスペース併設の店内。
新コンセプトの「スーツスクエア」は、多様化する働き方のビジネスウェアに対応するため、「ザ・スーツカンパニー」が展開する4ブランドを集約し、店舗ごとに地域の特性に合わせたサービスを提供するというウィジェット型の店舗だ。
1号店としてオープンしたのは、大宮西口店。多くのビジネスパーソンが利用するターミナル駅に隣接したロケーションであることから、店内には初となるWi-Fi環境を整えた無料のワークスペースも設けられている。営業時間中ならいつでも利用が可能なため、出張や出先で急な対応が必要になったときには助かるサービスだ。
取り扱うブランドは、トータルビジネスウェアブランドの「THE SUIT COMPANY」、レディーススーツブランドの「WHITE THE SUIT COMPANY」、新しい大人のためのストアブランド「UNIVERSAL LANGUAGE」、そしてオーダースーツ「UNIVERSAL LANGUAGE MEASURE’S」の4ブランド。
さらに、デジタルとリアルを融合させた「デジラボ試着室」も設置されている。これは、タッチパネル式の大型サイネージやタブレットを通して、ECサイトや全国の店舗在庫と連動しているため、リアル店舗ならではのスタッフのサポートを受けながら、ECの豊富な在庫から、ブランドの垣根を越えたコーディネートが可能になっている。
青山商事株式会社 執行役員 TSC事業本部長 河野克彦さん。
「昨年度に比べるとスーツやオーダースーツの売り上げが回復しています。特にオーダースーツは、20代から30代の若年層の構成比が高く、全体の6割を占めています。」と、青山商事執行役員TSC事業本部長の河野克彦さん。
「スーツ」そのものの定義も広がり、タイトフィットから適度なゆとりがあるデザインなど、オン・オフ共にカジュアルスタイルスーツが増え、多様化しているという。働く環境の多様化が、そのままスーツのニーズにも反映されているようだ。
新たなビジネススタイルのトレンドとは
メンズのビジネススタイル提案。
スーツの定義は、今やさまざま。働く環境やニーズにより、多種多様なビジネスウェアが必要ということで、ザ・スーツカンパニーが考える新定義のスーツが発表された。
「クラシックスーツは、肩パットをなしにして、ゆとりのあるシルエットです。アクティブ系のスーツは、機能素材を採用し、自転車や徒歩通勤という場合にも着やすくなっています。脱ウールやウオッシャブルなど、ケアが簡単なものが好まれています。
ビッグシルエットは、ただ大きいのではなく、フォルムはゆったりしていますがパターンにこだわったニュールックの提案です」と、TSC商品部長の永田明義さんが、メンズの3つのビジネススタイルを紹介。
ウィメンズのビジネススタイル提案。
「ウィメンズでは、メンズのノウハウを取り入れて開発しました。ウール素材のセットアップで、少しゆとりを持ったシルエットで、トレンドカラーのパープルなども取り揃えています。また、トレンドのダブルスーツには、白いボタンを採用してカジュアル感を出しました。3つ目は、従来のセットアップではなく、ジャケットなしOKのオフィスでのブラウスとスカートの提案です」(永田さん)
従来のセットアップのスーツだけでなく、多様なビジネスシーンに柔軟にマッチするアイテムの提案だ。
ジェンダーレスをとり入れたアイテムも展開。
メンズ、ウィメンズと紹介してきたが、2022年春夏から展開しているボーダレスなラインである「ラシャ プレイフル」の新作は、永田さん自身がモデルとなって紹介してくれた。オンやオフ、メンズ、ウィメンズの概念を取り払い、ボーダレスに楽しめるスタイルを提案している。
スーツに対するこだわりの変化
オーダースーツ可能店舗を順次拡大中。
近年のSDGsの浸透に伴い、今までのような「量」を必要とする消費が減り、よいものを長く着る「質」を重視する人が増えているという。
長く着るなら、自分なりのこだわりを反映させたいもの。既製服以上に選ぶ楽しさや、自分のこだわりが反映されるオーダースーツに人気が集まり、この1年間で8店舗増加し、順調に売り上げを伸ばしている。
専用タブレット端末で、2枚の写真を撮影し、身長、体重を入力して、それらの情報から採寸される。今後は、生地などをチェンジするバーチャルアバターも予定している。
オーダースーツブランドのユニバーサル ランゲージ メジャーズでは、一度オーダーすれば採寸データが残せるため、2回目以降は、体型さえ変わらなければ、生地だけを選んでオーダーもできる。オーダー時間も、生地を選ぶだけのため、15分程度でOK。しかも、自宅に送ってもらうことも可能のため、既成のスーツを選ぶより、短時間ですむかもしれない。
ユーザーの声から生まれる共創企画「VOICE」第2弾は女性向けビジネスバッグ
ユーザーの声から生まれた「VOICE」第2弾の『ギュッ!ク』 ブラック・モカ・グレー/ブラックコンビ サイズ:高さ36cm 横幅 25cm 底幅 30cm マチ幅 10cm 価格:10890円(消費税込み)
働き方が大きく変わったことでビジネスアイテムに求められるニーズも変化している。そこで、ザ・スーツカンパニーでは、ユーザーの声から生まれる共創企画「VOICE」の商品開発を行っている。第一弾は、2021年の男女セットアップ。
第2弾の今回は、女性向けのビジネスリュックだ。PCを持ち歩くようになってリュックに替えたという声がある中、ビジネスでの訪問先でリュックはカジュアルな印象になることや、女性がきれい目で持ち歩けるリュックが見つからないことなどの声から、開発を進めたという。
トートとしても持つことができる2WAYで、クッション性のあるPCポケットはもちろん、肩への負担を軽減する少し太めのショルダーやバッグを開けずに取り出せる名刺入れポケットを設置するなど、ビジネスシーンが快適になる工夫がされていた。ビジネスシーンが変化するからこそ、その変化にフィットするアイテムが登場するのはありがたい。
(左から)THE SUIT COMPANY大宮西口店 店長 中田倭さん、青山商事株式会社 執行役員 TSC事業本部長 河野克彦さん、TSC商品部長 永田明義さん。
発表会の最後には、ウィジェット型の1号店となる大宮西口店店長の中田倭さんが、
「今の時代に合わせた新たな取り組みを行う店舗としてオープンします。多くの方に来店してもらえるよう笑顔を絶やさない接客を心がけていきます」と話した。
埼玉県は、約4分の1が他県へ出勤している地域だが、テレワークなどで自宅にいる機会が増えている。そんなビジネスパーソンが快適に働き、暮らすための環境を多くの人に届けるため、大宮西口店での反響を見て、今後サービスを広げていくという。
・THE SUIT COMPANY 大宮西口店
住所:埼玉県さいたま市大宮桜木町1-1-27 1階
電話番号:048-647-1522
営業時間:11:00~21:00
公式サイト:https://www.uktsc.com/the_suit_company/
取材・文/林ゆり