「英気を養う」という言葉はビジネスシーンでよく耳にしますが、表記や使い方を間違いやすい言葉です。正しい意味と表記に加えて使い方を紹介します。さらに英気を養うのは仕事で力を発揮するために不可欠です。英気を養うための方法も解説します。
「英気を養う」とは?
まずは「英気を養う」の意味と表記を解説します。漢字の持つ意味を確かめておけば、ど忘れしたときにも焦らず意味と表記を思い出せるでしょう。
活力を取り戻すこと
「英気」は「英気を養う」以外ではあまり耳慣れない言葉です。「英気」の「英」を用いた熟語には「英才」「英雄」があるように、「英気」には優れた気質の意味があります。一方で「英気」には活動のための気力の意味もあります。
「英気を養う」の「英気」は後者の意味です。活発に働くための気力として、「英気」が用いられています。従って「英気を養う」とは、物事に取り組むための気力や活力を蓄えること、あるいは失われた気力や活力を取り戻すことを示します。
「英気」と「鋭気」どっちが正しい?
文章を読んでいると、「英気を養う」ではなく「鋭気を養う」の表記も見かけます。「鋭気を養う」の表記は日本語として間違いとはいえませんが、慣用句としての「英気を養う」とは意味が異なります。活力や気力を蓄えたり取り戻したりする意味で用いるときは、「英気を養う」とするのが正しい表記です。
「鋭気」の意味は激しい気性や目標達成への強い意欲です。「鋭気を養う」はやる気や気概を取り戻すという意味で、活力や気力を取り戻す意味の「英気を養う」とは、わずかにニュアンスが異なります。一般的に「鋭気を養う」と書くのは、教養不足だと判断される恐れがあります。「鋭気」は「鋭気を挫く」のように使うのが適切です。
「英気を養う」の使い方
「英気を養う」の意味を理解したところで、ビジネスシーンでの実際の使い方を解説します。使う場面をあらかじめシミュレーションしておけば、同じシチュエーションに遭遇したときに、スムーズに「英気を養う」と口に出せるでしょう。どうしても言葉が出なかったときの言い換え表現も紹介します。
ビジネスシーンでの例文
仕事において「英気を養う」は、主に三つのシチュエーションで使えます。一つ目は頑張りすぎている人に声をかけるときです。「あまり根を詰めすぎていると体を壊すよ。早く帰って英気を養うのも仕事のうちだよ」と、相手を労いながら休息をすすめる言葉として使えます。
二つ目は、重要な日が迫っているときに用いられます。「明日はいよいよコンペの当日だね。不安もあるだろうけれど、明日に向けて今日は早めに帰ってしっかり英気を養っておこう」のように、プロジェクトメンバーを励ます一言としても適切でしょう。
三つ目は週末や長期休暇の直前に、「週末にはきちんと英気を養って、また休み明けに会いましょう」のように使うことも可能です。上司が積極的に休む姿勢を見せれば、部下も休日に仕事から解放されて心身ともにリフレッシュできます。
例文からも分かるように、「英気を養う」は目上の人が部下に対して使うケースが一般的です。目上の人に対して「英気を養ってください」と伝えるのは不自然ですが、親しい間柄であれば気にせずに使うという風潮も最近では珍しくなくなってきました。
類義語・対義語
スムーズに「英気を養う」と口にできればいいですが、実際にはどうしても思い出せずに困るケースもあるでしょう。言葉に詰まったときは無理に思い出そうとせず、代わりに類義語を用いれば場の空気を乱さずに済みます。
「英気を養う」の類義語には、「リフレッシュする」「静養する」「精気を取り戻す」があります。「リフレッシュする」は「英気を養う」と同じように使用可能です。そのほかに「疲れを癒やす」や「骨を休める」も同様です。
「静養する」は体調を崩したときに用いるのが一般的で、「英気を養う」よりも差し迫った状況に適しています。「精気を取り戻す」も同様に、深刻な状態からの復活といったニュアンスが感じられるフレーズです。
「英気を養う」の反対の意味は活力や気力が奪われることです。「やる気を削ぐ」「精気を奪う」が主な例です。類義語と同様に「精気を奪う」は「やる気を削ぐ」と比べて深刻な印象を与えます。
英気を養う方法
「英気を養う」ための具体的な方法も心得ておけば、「英気を養って」とすすめたときに効果的なアドバイスができるようになります。仕事の活力や気力を蓄えるのにおすすめの方法を紹介します。
好みの食事を取る
英気を養うためには、好きなものを食べるのがおすすめです。仕事が忙しいと食生活への配慮が足りなくなり、短時間で食べられるものばかり摂取するようになってしまいがちです。仕事への活力が欲しいと感じたときは好きなものを食べれば、体力が回復して、ストレスも解消できます。
週末に家族や友人とレストランで食事をするのはもちろん、昼休みや仕事帰りにスイーツを買うのもいいでしょう。好きなものを食べるのが英気を養うことにつながるとはいえ、栄養バランスが偏らないように注意が必要です。インスタント食品やお菓子ばかり食べていては、かえって体調を崩しかねません。
きちんと休養を取る
休養と睡眠を取って体を休めるのも英気を養う上で大切です。睡眠が足りていないと十分に頭が働かず、仕事もうまくいきません。どうしても眠れないときは無理に眠ろうとせず、リラックスできる姿勢で目を閉じているだけでも十分です。またアロマオイルをたいたりやさしいメロディの音楽を流したりすると、スムーズに睡眠への導入ができるでしょう。
休養を取るときはスマホやパソコン、仕事道具を目の届かない場所にしまうのもおすすめです。スマホやパソコンを近くに置いていると、どうしても通知が気になってリラックスできません。加えて仕事道具が目に入ると仕事のことを思い出して、あれこれ考えを巡らせてしまいます。一旦スマホやパソコンから距離を置いてみましょう。
趣味に没頭する
自分の好きなことに没頭するのも、効果的なリフレッシュ方法です。趣味に没頭している間は、現実世界のことを忘れて心から楽しい時間を過ごせます。好きなことをすればポジティブな気持ちになり、体だけでなく心にも活力を与えられます。
音楽を聴いたり映画を見たりするほか、スポーツをしたり動物と触れ合ったりするのもいいでしょう。英気を養うのにつながる趣味は人それぞれ異なります。心の底から自分が楽しめるものを見つけておけば、仕事で疲弊した心身を癒やせるようになります。
構成/編集部