いつもは2台のカブと過ごす日常についてお送りしている当連載なのですが、今回の記事ではもう1台の愛車である『ヴェルシス650』についてお話をさせてください。
というのも、身長低めの人の多くがバイクに乗る上でぶつかる課題、足つきについてお話をしたいからです。
今回の記事では、筆者が大型バイクに無理なく乗るために行った足つきの改善方法をご紹介します!
足つきの悪さは死活問題
筆者の愛車、ヴェルシス650。カワサキ社製のアドベンチャーツアラーバイクです。主には長距離ツーリングで走りを楽しむこと・疲労を軽減することを目的に購入しました。
今でこそ不安なくツーリングに出かけられるようになりましたが、購入直後はなにをするにもおっかなびっくり。
というのは、もともと欧州などへの輸出用として開発されているヴェルシスは、シート高が840㎜もあるのです。どれぐらい高いかっていうと、身長156cmの私では精一杯脚を伸ばしても片足のつま先しかつかないぐらい。
上の画像は購入を検討していた時、試しに跨った時のもの。「こんなに不安定で取り扱えるのかしら?」と心配になったことをよく覚えています。
もちろん車体自体も非常に大きく、隣に立つとこの通り。
えいや!と勇気をだして購入までは至ったものの、このままでは不安が積み重なり、最終的には乗るのが億劫になってしまいます。もはや必然的に足つきを改善することになったのでした。
シートの“アンコ抜き”
一番最初に取り掛かったのが、シートの調整です。
バイクのシートの中にはポリウレタン製のクッションが入っています。長時間のライディングが想定されたツアラー系バイクは、乗り心地を良くするためにシートがぶ厚く作られているものが多く、それが足つきの悪さの一因となっています。
そこでおこなうのが“アンコ抜き”。アンコ抜きとは、ポリウレタンを削り取る加工です。
ライダーの中には自力でアンコ抜き加工をする人もいるようですが、筆者は専門の業者へ依頼しました。
なぜなら一度失敗してしまうとやり直しがきかない上、バイクの見栄えや乗り心地に大きく関わる部品だから。
業者の方によると、座面のポリウレタンを20㎜ほど削り取ったのだそうです。上面だけでなくサイドもしっかりと削ることで、脚を真下に降ろせるようになり、削った高さ以上の足つき改善ができているのだとか。
パッと見ただけでもかなり細身なシートになったのがわかりますね。
ただし、アンコ抜きには座り心地の悪化というデメリットがあります。クッションがなくなったシートは座面が硬くなり、お尻や腰へのダメージが増えてしまうのです。
座り心地の対策としてはゲル加工をしてもらいました。ゲル加工とは、特殊なゲル素材のクッションをシートの中に埋め込む加工のこと。ポリウレタンと比較すると5~10倍ほどの衝撃吸収力があり、薄くても快適な乗り心地を実現してくれるのです。
ハンドルを近づける方法とは
シートのアンコ抜きが終わった時点で足つきがかなり改善し、片足がほぼべったり付くようになりました。これで自信を持ってツーリングできる!…と思ったら、それでも苦しかったのが腕でした。
ノーマルの状態ではハンドルの位置が遠く、握った時の腕が伸び切ってしまっていました。運転中は必要以上に前傾姿勢になって疲労がたまり、停車中は緊張から上体に力が入ってリラックスができません。またハンドルを切る時もいっぱいまで腕を伸ばす必要があり、うまく扱えなかったのです。
そこでバイクショップと相談して変更したのが、フロントフォークの突き出し量とハンドルの角度でした。
ほんの少しの調整でしたが、変更前と比較すると無理なくハンドルを握れるようになっています。
格段に取り扱いが楽になっただけではなく、ブレーキをかけた時の恐怖感も軽減され、アドベンチャーツアラーとは思えないほどに乗りやすくなったのでした。
ただし、どちらもバイクの性能に大きく関わる部品です。素人がやみくもに調整すると安全性に支障が出たり、バイクの故障の原因になったりすることがあります。
メカニックの方と相談の上で、自身の体格とバイクに合わせた調整を強くオススメします。
無理のないバイクライフを!
筆者の場合は以上で調整が完了しましたが、他にもローダウンキットや厚底ライディングブーツの使用、プリロード調整といった方法もあります。
バイクは体格によって選択肢が限られる乗り物です。
あまりにも大きいバイクに乗るのは避けた方が無難ですが、ちょっと苦しいというぐらいであれば、車体を調整して乗りやすくすることができるのです。
今持っているバイクに悩みを抱えている方も、足つきの調整をすることで不安がなくなるかもしれません。無理のないバイクライフのために、是非検討してみてください!
文/高木はるか
アウトドア系ライター。つよく、しぶとく、たくましくをモットーにバイクとキャンプしてます。 愛車はversys650、クロスカブ110、スーパーカブ90。
高木はるかの記事は下記のサイトから
https://riding-camping-haruka.com
編集/inox.