国を挙げて投資を促進するiDeCoやつみたてNISAは、あくまで〝余剰資金〟を投資に回すための制度だ。それを忘れると落とし穴にハマりかねない。人気投資YouTuberであるぽんちよさんに、正しい考え方を聞いた。
ぽんちよさん
サラリーマン時代のコツコツ積み立てが功を奏し、20代で経済的自由(FIRE)を手に入れた人気投資YouTuber。チャンネル登録者数は30万人を超える。
生活を苦しくしてまで投資する必要はあるのか?
金融庁が掲げた「貯蓄から資産形成へ」という方針によって、iDeCoやつみたてNISAといった制度が運用されている。これらの制度の根幹にある「税制優遇」によって投資が促され、「投資をしない手はない」として、ここ数年あらゆるメディアで積み立て投資が勧められてきた。
だが、本当にあらゆる人に必要なのだろうか。
「iDeCoやつみたてNISAによる投資を行なえば、将来豊かに暮らせるかもしれません。しかし、今の生活に必要なお金の防御力を失っているともいえます。特にiDeCoは、老後になるまでお金が引き出せないので、急にお金が必要になった時に耐えられません」(以下、ぽんちよさん)
生活防衛資金やキャッシュポジションとして投資に回せるお金を持っておくことも重要だ。投資の世界には「現金は王様」という投資格言がある。相場が暴落した時に、生活費の確保や追加投資に向けた資金としてリスクに備えるには現金が唯一無二の資産という考え方である。
つみたてNISAとiDeCoのメリットとデメリットをおさらい
いずれの制度も、投資で得た利益に対する税が非課税となる。iDeCoはそれに加えて拠出(積立)時や受取時にも税優遇があるが、所得が少ない人には税制度のうまみがないともいえる。
「キャッシュポジション」とは?
キャッシュポジションとは、単なる預貯金ではなく「投資資金ではあるものの、今のところ株や債券などの金融商品の購入にあてずとっておいてある資金」のこと。時には相場の流れにより投資金額を抑えてキャッシュポジションを高めたり、ときには全資金を投資に回してキャッシュポジションをなくすといったように、状況に応じてその適切な分量は変わってくる。
〝ダメ銘柄〟の基準は「手数料の高さ」
「最低でも6か月分の生活費相当のお金、単身者なら100万~150万円、子供がいる家庭なら200万~300万円の現金を持つまでは投資を控えたい」と、ぽんちよさんも保守的な考えを示す。
「余剰資金があってこその投資です。iDeCoにもつみたてNISAにも投資可能額がありますが、投資上限いっぱいまで投資すべく生活費を切り詰めるのは得策ではありません」
iDeCoやつみたてNISAでの投資を行なう場合には、投資期間満了まで積立投資をし続けられなければ意味がなく、投資し続けるにも保有コストが割高になる商品は避けなければならない。特に「信託報酬」は何もしなくてもかかる〝維持費〟のようなものなので厳しくチェックしたい。具体的な基準を、上の表にまとめた。
また、投資の出口戦略も早いうちに考えておきたい。
「iDeCoの場合、一括受け取りと年金のような分割の受け取りができますが、退職金の受け取りタイミングとずらすことで、『退職所得控除』が合理的に利用できます。つみたてNISAの場合には、期間満了後は、再投資するのか利用用途があるのか検討しましょう」