いよいよ7月15日にワールドプレミアを披露し、世界に発信した16代目となる新型クラウンに試乗する機会を得た。周知の通り、新型クラウンは第一弾としてクロスオーバーが登場し、そのほかにスポーツ、セダン、復活のエステートの4モデルのラインナップが揃うことになっている。
間近で見るクーペクロスオーバーとも言うべき流麗かつ存在感あるエクステリアデザインが与えられたクラウンクロスオーバーは、素直にカッコいいと思えた。これまでの順然たるセダンスタイルとは異なるものの、時代を反映した、新しいクラウンのカカタのひとつとして、そう感じさせるのだ。モノトーンに加え、バイトーンと呼ばれるボンネットとルーフをブラックに塗り分けた2トーンカラーが用意されるのも新型ならではで、その足元を引き締めるのは、超大径、設計基準となる19インチ、および21インチ!!である(18インチのオプションもある)。
TNGAに基づくプラットフォームは前半分がハリアーやRAV4と共通のSUVプラットフォーム、後半分はカムリやアバロン用を新設計しなおしたセダン専用プラットフォームとのこと。わざわざ前後でプラットフォームを変えた理由は、セダンプラットフォームのほうが低床化しやすく、室内を広くできるからである(とくに後席)。
パッケージングについてまず報告すると、15代目クラウンセダン比較で、全長+20mmの4930mm、全幅+40mmの1840mm、全高+85mm!!の1540mm。ホイールベースは何と-70mmの2850mmに短縮。しかしフロントオーバーハングが+155mmの1020mm、一方、リヤオーバーハングは-65mmの1060mmとなっている。クロスオーバーモデルだから最低地上高が気になるところだが、実際には先代比+10mm~15mmでしかない145mmだ。全車4WDながら、悪路走行にこだわったクロスオーバーモデルではないことが分かる。
室内はクラウンらしさと新時代のクラウンが共存する高級感と先進感ある世界が広がる。室内寸法は室内長1980×室内幅1540×室内高1170mm。先代に対して室内長は不変、室内幅は40mm増し、室内高は15mm低まっている。が、前席ヒップポイント地上高は先代比+80mm、後席ヒップポイント地上高も先代比+60mmとなり、クロスオーバーモデルらしい高めの見晴らし視界を実現しているところが新鮮だ。なお、前後席間距離は先代比+50mmとなり、後席膝周り空間のゆとりが増している。
具体的には、身長172cmの筆者のドライビングポジション基準で前席頭上に185mm、後席頭上に130mm、膝周り空間に270mmもの余裕があった。
嬉しいのは乗降性で、クロスオーバーモデルとはいえ、最低地上高145mm(一般的なセダンに近い)もあって、前後席ともにセダン感覚で極めてスムーズに乗降できるのだ。その要因の一つがサイドシル部分で、リヤドア部分の場合、地上高410mmの低さに加え、サイドシル段差が70mmと小さいことが挙げられる(すべて実測)。ちなみに先々代の14代目クラウンのサイドシル段差は120mmもあった。
ただし、クラウンとは言っても比較的若い世代を狙うクロスオーバーモデルだからだろうか、今回チェックしたCROSSOVER Gグレード(ファブリックシート)の後席にはリクライニング機構や、アームレスト内の各種コントローラー、後席エアコン吹き出し口の独立温度調整機能などはない。足元の広々感(センタートンネルあり)、前方見通し性はなかなかだが(前席ヘッドレストを台形にして工夫しているようだ)、居心地の贅沢感に特筆すべき点はない・・・。
トランクではなく、ラゲージとトヨタが呼ぶラゲッジスペースは先代比+74Lの450L。具体的にはフロアに9.5インチのゴルフバッグが2個搭載でき、その上に多少の工夫が必要なものの、もうひとつ積み込むことができるそうだ。実車に接する前、SUVのようにルーフ後端からバックドアが開く仕立てと勘違いしていたのだが、実際にはセダンのトランク的に開閉する。
パワーユニットはA25A-FXSと呼ばれる2.5L直4エンジン+トヨタハイブリッドシステムII(RAV4 HVのシステムを進化させたもの)、システム最高出力234ps、WLTCモード燃費22.4km/L、およびT24A-FTS 2.4L直4ターボエンジン+デュアルブーストハイブリッドシステム、システム最高出力349ps、WLTCモード燃費15.7km/Lの2種類が用意され、駆動方式はそれぞれクロスオーバーモデルらしく電気式4WDのE-Four、E-Four Advancedとなる。よって、トヨタのハイブリッドでおなじみのAC100V/1500Wコンセントは全グレードに標準装備される。
クラウンに20-21インチタイヤの標準装着もすごいが、それ以上に注目すべき点が、全車に車速に応じて後輪の向きを調整し、小回り性と安定性を高めるDRSが備わること。低速域では前輪と逆相として小回り性を実現。実際、20-21インチタイヤの4WDで小回り性抜群と言える最小回転半径5.4mが可能になったのはDRSあってのことである(先代のFRは5.3m、4WDは5.5~5.7mだった)。
また、DRSは「走りの気持ち良さは譲れない」という開発陣のいわば切り札アイテムのひとつでもあり、単なる4WDではないFR的なドライブフィールの実現、走り出しの質感向上、ダンパーを固めずに済むことでクラウンらしいの乗り心地(とくに後席)の実現にも大いに役立っているというのだ。
そして前後のサスペンションのダンパーは、トヨタとカヤバが共同開発した、レクサスESにも使われているスイングバルブ式が用いられる。高価だがチューニングの幅が広がり、走り出しの滑らかな走行感覚に効く、微低速域でのダンパーの動きを抑えるなどのチューニングが実現したそうだ。
本稿はここまで。新型クラウンCROSSOVER Gの公道試乗記は、別途、お届けしたい。クラウンとしての進化に期待するのはもちろんだが、果たしてクラウンらしさは継承されているのだろうか?
文/青山尚暉
写真/トヨタ・青山尚暉