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不動産小口化商品が人気の理由とメリット、デメリット

2022.10.11

相続税対策で不動産小口化商品の人気が出ているが、デメリットはないか解説する。

相続税の基礎控除額が激減

相続税は誰でもかかるわけではなく、相続税の基礎控除額を超えなければ課税されない。そのため、一部の富裕層にしか相続税は課されないイメージだった。それは、2014年末まで基礎控除額が大きく、例えば、配偶者、子ども2人がいる方が亡くなった場合基礎控除額は8,000万円となり、それなりに資産がある場合でないと課税されなかった。

しかしながら、基礎控除額が2015年から以下の通りとなった。

この場合、配偶者、子ども2人いる方が亡くなった場合に基礎控除額は4,800万円となる。この金額だと、自宅の立地が良いとか、価値が下がらないマンションに住んでいる場合には自宅の資産だけでも大きく、合わせて預貯金があれば相続財産が4,800万円を超えてくることがあり得る。相続税は超過累進税率となっているため、相続資産が大きいほど税率は高くなり、資産を受け取った方が税金を負担することとなることから、その負担を軽減させたいと考える人は多いだろう。

No.4155 相続税の税率|国税庁 (nta.go.jp)

不動産投資で節税

相続する予定の資産を現金ではなく、不動産で貸付することで、相続資産の評価額を下げることができる。

①土地不動産の評価方法

建物は固定資産税評価額で評価される。固定資産税評価額は、建物の新築価額の70%程度で評価される。

土地(宅地)は路線価方式で評価される。路線価方式は公示価額の80%程度で評価されるため、現預金で保有するよりも、20%減で評価される。

②貸家の評価(建物部分)

マンションなど誰かに貸している建物の評価は、以下のように評価が下がる。

賃貸マンションですべて貸している場合には、評価額4,000万円×(1-0.3×1)=2,800万円の30%減の評価額となる。

③小規模宅地(土地部分)

亡くなった方が建物の貸付事業を行っていた土地部分の200㎡まで、評価額を50%減額できる。ただし、相続開始前3年以内に不動産貸付業を行った場合には適用できない。

例えば、評価額3,000万円(200㎡以下)の土地は、1,500万円まで引き下がる。

現金では100%で評価されるが、不動産にすることで建物は30%減、土地は20%減、さらに貸付すれば建物部分は30%減、小規模宅地に該当すれば土地部分は50%減に評価額を下げることができる。

不動産小口化商品のメリット

不動産投資というと莫大な資金が必要で、土地をもっている地主が行うものというイメージかもしれないが、今では、不動産を小口化して購入することができる。

小口化する方法として、マンションを1部屋ずつ所有する方法とマンションや商業施設などを金額単位で小口化する方法がある。

前者は、都心の1部屋なら1Kでも3,000万円からとそれなりの値段がしてしまい、部屋ごとによって金額は異なる。

一方、後者は金額で購入できるため、相続人に平等に分けることができる。

例えば、相続人が3人でA部屋は3,000万円、B部屋は2,000万円、C部屋は1,000万円の価値だとしてそれぞれの部屋をそれぞれの相続人に相続すると不公平感が生じてしまうが、金額単位であれば1口300万円の不動産を3口購入すれば、300万円ずつ平等に3人に分けることができ、金額も借入れしない程度の金額から投資することができる。

■不動産小口化商品のメリット

・少額からでもできるため、借入なしでもできる
・相続人に平等に分けることが可能
・相続税対策ができる
・不動産の管理、運営等は管理会社が行うため、手間がかからない

不動産小口化商品のデメリット

不動産小口化商品には、匿名組合型と任意組合型がある。

・匿名組合型
不動産の所有権は事業者が持つため、出資者は所有権がなく、登記簿上に名前が載ることもない。配当金を受け取り、出資金は満了時に返還される。損失が発生した場合も出資金以上に損失が出ることはない。

・任意組合型
任意組合は出資者と事業者が不動産を共有で所有することになるため、不動産登記を行って持ち分に応じた所有権をもつ。そのため、持ち分に応じた損益は出資者に帰属する。相続税対策ができるのはこの形態。

相続対策として利用されるのは、任意組合型だ。

任意組合型は、不動産を所有して貸付して不動産所得を得ることになるため、当然相続が発生すれば不動産評価、貸家としての評価、条件に該当すれば小規模宅地等の特例を受けることができる。一方、以下のようなデメリットもある。

■不動産小口商品のデメリット

・現預金が減少する
・通常の不動産所得と異なり任意組合型(特定組合員等)の損失は他の所得(他の不動産所得とも)損益通算できない
・確定申告が必要
・勝手に売却、解約できない
・抵当権の設定ができないため、借入購入は難しい

不動産小口化商品は持ち分を抵当権に入れることができないため、通常の不動産投資のように借入で投資することが難しい。そのため、自己資金で投資することになり、その分現預金は減少する。相続税を減らすことはできるかもしれないが、相続人の意向としては現預金で相続したかったと考えるかもしれないので、相続対策で投資する場合は相続人とも相談が必要だ。

また、不動産所得は通常不動産所得内はもちろん給与所得などの他の所得とも損益通算さらに純損失の繰越控除もできて本業にかかる所得税や住民税を減らすことが可能だが、不動産小口化商品の任意組合型(特定組合員等)にかかる損失は他の不動産所得、他の給与所得と一切損益通算することができないことに注意したい。

さらに、不動産は通常購入者がいればいつでも自由に売却できるものだが、この任意組合形態をとっていると売却に事業者の承諾が必要になってくるため、基本はすぐに必要のない資金で行なう方がよい。

文/大堀貴子

 

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