今年になって「スケボー場」が、札幌、福岡、京都…全国に続々!
東京五輪開幕からちょうど1年後の2022年 7月23日、NHK が各競技団体を対象に「この1年間の競技人口の広がりや施設整備の状況についのて」のアンケート調査を実施。その中で「スケートボード」の競技団体では「競技人口が増加した」と回答しており、スケボー施設などハード面の整備も「改善した」と回答を寄せている。一躍脚光を浴びた五輪から1年経った現在も、スケボー人気は”現在進行系”で全国に波及しているのだ。
実際、直近数か月だけでも数々の施設が新規オープンしている。
今年7月には北海道の札幌市南区には市内最大級のスケートボード屋外施設「モアイスケートパーク」がオープン。福岡市中央区天神でも8月に市内初のスケートボード練習施設「箱崎セクション」が開業したほか、京都市、千葉市、福島市、長野県松本市、滋賀県米原市、鹿児島県鹿屋市など、五輪後に誕生した施設は枚挙に暇がない。
2018年から「若者文化の発信」を街づくりの基本方針に掲げる神奈川県川崎市も今年7月、川崎競輪場内の敷地の一角に「KAWASAKI KEIRIN PARK(KKP)」をオープンした。今回はこちらの施設を体験ルポしよう。
五輪会場とおなじ施工主が作成
原則土日祝日に利用可能なこちらの施設では、スケートボードとBMX(バイシクルモトクロス、自転車競技の一種)が楽しめるほか、5〜15歳向けに両競技のスクールも主催している。
「オリンピックをきっかけに、自分もスケボーをやってみたいと思う人たちが増えたのは間違いありません」
そう語るのは、同パークで責任者を務める一般社団法人日本青少年ストリートスポーツ振興協会理事長の今泉睦さんだ。
パーク内のコース面積は約120平方メートル(長さ約24m、幅3~6m)と一見シンプルだが、傾斜のついたバンクや円形パイプを4分の1に切った様な形状のクォーターランプなど、初心者から高度なトリックの練習をしたい人まで対応できるストリートコースになっている。
川崎競輪場の場外開催期間中は入場無料、本場開催期間中は入場料100円がかかる。
「五輪会場のコースと同じ施工主に作ってもらったもので、場所が狭いぶん何回も練習して時間をかけて攻略できるよう、あえて少しチャレンジングな難易度にしています。
また、天然石のタイルを全面に敷き詰めた日本初のコースになっていて、滑った時に路面から伝わるフィードバックが伝わりカタカタと小気味よい音が鳴るように工夫していて、とても楽しい感覚が味わえると人気です」(今泉さん、以下「」内同)
五輪後のスケボーやBMX体験人気を受け、安心して滑れる場所の確保が喫緊の課題となったなかで浮上したのが、川崎競輪場の未活用地を利用したスケボー&BMXパーク施設の建設案だったという。
「地方競輪などの公営競技場は利用者の高齢化や建物の老朽化が進むなかで、新規ファンの獲得などを目標に活性化への道を探っていました。行政や運営管理者側の若い人たちも集まれる活気のある場所にしたいという行政や運営管理者側の思いと、そういった場所づくりに協力したいという我々の思いが合致して、KKP開設に向けた話が大きく前進しました」
7月のオープン以降、利用者は順調に伸びてきているという。
「利用者は10代の子が中心ですが、一人で来る人もたくさんいますし、親や兄弟と一緒に来る幼稚園児の子から40年近くやっている60代の方まで、幅広い年齢層の方が訪れます。初心者向けのスクールも最近は早い時期から予約が入っています」
かつては中高年男性が中心だった競輪場の敷地内に、いまや10代の子どもや親子の来場者が増えたことで、どことなく場内全体の雰囲気も明るい。それまでスケボーにまるで関心がなかった競輪ファン達もあたか暖かく見守る。公営競技場の一角とは思えないほど和やかな雰囲気の中でだれもがスケボーやBMXを楽しんでいた。
ギャラリーや家族連れも含めて約20人ほどの利用客が思い思いの時間を過ごした
「子供たちがスケボーを通じて繋がる場所になってほしい」
どんな場所になってほしいか、今後の展望を聞いてみた。
「スケボーやBMXをやっている子について、『やんちゃそう』『言うことを聞かなそう』といった先入観を持たれる人がいるかもしれません。でも、実際にはいい子ばっかりですよ。なんとなく自分の居場所がつかめずにしっくりきていない子たちも、ここにきて遊んでいるうちに自然と顔見知りになったり、地元の学校や歳が異なる子供達同士が友達になったりと、スケボーを通じてこの場所がなければ出会うことができなかった人と人をつなぐ場所になっています。
まだ施設がオープンして3か月ほどですが半年、1年とスケボーやBMXを楽しむうちに、そうしたつながりがもっと自然と増えてくるのではないかと期待しています」
五輪汚職を巡る一連の事件で大人たちが負のレガシーを抱え込む一方で、純粋に仲間やライバルとスポーツを楽しむ若者たちの姿は対照的に映る。昨夏の東京五輪・パラの開催意義とはいったい何だったのかがいまだに問われ続けるなか、希望が持てそうなひとつの答えを地方競輪場の片隅に見た。
取材・文・撮影/清友勇輔