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【深層心理の謎】自信を持って決断したほうが良い結果につながるのはなぜ?

2022.10.05

 失ってしまったものは取り戻すことはできない。タイムトラベルで過去に戻ることができない以上、失った事実を悔いたところで何も起こらない。損失を埋め合わせるべく前進あるのみだ――。

失ったものについて考えながら東中野を歩く

 今朝、奥歯の一部分が欠けているのに気づいた。ひょっとするともっと前から欠けていたのかもしれないが、気づいてしまった以上は、すぐに治療しなければならない。

 歯科医院に連絡してみると、明日の夕方に診てもらえることになった。幸いにも明日は外出する予定もない。すぐに電話してみてよかった。こうしたケースでは早く動くのがなによりである。

※筆者撮影

 所用を終えて東中野駅界隈を歩いていた。夕方5時を過ぎたところだ。「ちょっと一杯」にはやや早過ぎるし、明日は歯医者に行かなければならないので、部屋に戻って仕事を進めておくに越したことはない。しかし朝から何も食べていないので、どこかで何か食べてから帰ることにしたい。

 通りを進む。線路沿いの通りは右にカーブしている。角にはなかなか良さそうなケバブの店がある。テイクアウトが主体だが中でも食べられそうである。ケバブもいいのだがもう少し界隈を歩いてみたい。

 歯が欠けるほど硬いモノを最近食べたことがあったかどうか思い返してみるがどうにも思いつかない。部分的に虫歯が進行していたのかもしれない。

 欠けてしまった歯についてあれこれ考えてみたところで欠けた歯が戻ってくるわけではない。失ったものについて考えをめぐらせても仕方がないのだ。リカバリーできる対策を講じて実行するのが先決だ。

 物書きを長く続けている身としては、書きかけだった原稿のデータが飛んでしまった体験も1度や2度のことではない。

 最近もノートパソコンのバッテリー残量の低下に無頓着だったため、突然電源が落ちてしまい開いていた原稿ファイルが保存する前に戻ってしまったことがある。心が折れるほどの精神的なダメージであったが、悔やんだところで原稿が戻ってくるわけはない。後悔している時間は全くの無駄である。

 幸いにも失った原稿の文字量はそれほどでもなく、直前まで取り組んでいたので頭の中でまだある程度は記憶していた。したがって忘れないうちに新たに書き直すことが先決であり、それが弾みにもなって何とか小一時間ほどで埋め合わせることができた。原稿データを取り返す方法があるかもしれないとパソコンをあれこれ弄っていたなら、あっという間に時間が過ぎてしまい泥沼にはまっていただろう。

自信を持って決断すると概して良い結果に繋がる

 通りを進む。喫茶店と焼肉店の前を通り過ぎる。左に折れる狭い路地は飲み屋街になっているようで、もう少し遅い時間なら思わず誘い込まれてしまいそうだ。今日は「ちょっと一杯」はしないと決めたので、余計なことは考えずに先へ進むことにする。

※筆者撮影

 考えても仕方のないことはあれこれ思い悩んでも時間の無駄であることは間違いない。単純な二者択一の選択などはあまり考え込んだりせずに、きっぱりと自信を持って決断したほうが、概して良い結果に繋がることが最近の研究で報告されていて興味深い。


 ここではモデルベースの計算アプローチを採用して、単純な二項選択の意思決定タスクにおける行動志向と状態志向の人々の間の根本的な認知の違いを研究します。

 行動志向の人は自分の選択の正しさに大きな自信を示し、判断感受性がわずかに高くなりますが、そのパフォーマンスには違いはありません。

 さらに自信を持って審議する時間を増やすことは、状態志向の人々が選択の外的特徴により強く焦点を当てることを示しました。

 適切なメタ認知感受性と相まって、肯定的な自信バイアスは多くの現実の状況で意図をうまく実現するために重要である可能性があることを提案します。

 より一般的に言えば、私たちの研究は潜在的な認知プロセスをモデル化することで、個人差の研究に意味のある洞察をもたらす方法の事例を提供します。

※「PLOS ONE」より引用


 ポーランドの非営利私立大学、SWPS大学の研究チームが2022年6月に「PLOS ONE」で発表した研究では、意思決定における自信をもった決断が、その選択の良し悪しとは関係ないところで、おおむねポジティブな結果に繋がることが報告されている。

 行動制御には個人差があり、一方に行動志向(action-oriented)でありもう一方に状態志向(state-oriented)があるとされている。

 行動志向の人はより決断力があり、柔軟性があり、逆境に直面しても自分の意図を実行する傾向がある一方、状態志向の人々はしばしば自分の選択に納得するのに苦労し、自分自身で何度も考え込んだりする。研究チームは行動志向と状態志向の人の意思決定の自信の度合いと認知の違いを浮き彫りにしたのである。

 研究チームは724人の大学生の行動制御レベルを評価し、非常に高いスコアまたは非常に低いスコアのいずれかに属する約60人の参加者を選んだ。続いて2つの実験で単純な二者択一の選択を含むタスクが課された。

 収集したデータを分析した結果、行動志向の人々と状態志向の人々の大きな違いは、正しい選択をしたという自信の度合いであった。選択が難しくなると、自信のギャップはさらに大きくなった。しかし適切な選択を行うという点では、行動志向と状態志向に違いはなかった。

 そして研究チームは行動志向の人々のこの「ポジティブな自信バイアス」が、多くの現実の状況で意図をうまく実現するために重要であるかもしれないことを示唆している。

 高度な行動制御を備えた行動志向の人々は、自信を持った意思決定を行うことによって、目標を実現するためにより柔軟で機知に富み、問題にうまく対処することができるということだ。きっぱりと自信を持って決断することが、その後の良い結果を招くことに一役かっているようだ。

自信を持って選んだステーキ&ハンバーグを堪能

 通りを進む。あまりゆっくりもしていられない。どこかに入ろう。入りたい店が見つからなかったら、引き返してさっきのケバブ店に入ってみることにしようか。

※筆者撮影

 右側の歩道には派手な看板のからあげ店があり、左手にはレストランがあった。店の看板には店名の前に「ステーキハウス」の文字がある。“昭和感”のある年季の入った外観の雰囲気からけっこう老舗のお店であることがわかる。ノンアルの食事としてはステーキもいいだろう。入ってみたい。

 店内は外観から受ける印象と同じくらいで、広くもないが狭くもない。お客はかなり入っていて、家族連れも2組いた。幸いカウンター席には1名しかいなくて、お店の人に壁際のカウンター席に案内される。

 グラスのお冷と共にメニューの冊子を渡される。ステーキをはじめハンバーグやカキフライなどの揚げ物やカレーなどもあって迷うところだが、多くの人が注文するであろう定番メニューはすぐにわかった。「ステーキ&ハンバーグ」だ。

 さっそくお店の人に同メニューを注文する。ソースが20種類ほどあって1つ1つ検討していたらこれまた迷うところだが、パッと見の印象でステーキはチーズとベーコンミートソースにし、ハンバーグはゴマおろしニンニクソースを指定した。

 ともあれ迷うことなく、きっぱりと自信を持って注文することができてよかった。フライ系のメニューを検討しはじめてしまうとかなり迷うことになっただろう。もちろんこの選択が妥当であったのかどうかはまったく別の問題であり、食べて満足できればすなわち“正解”ということになる。

※筆者撮影

 ライスに続き、メインディッシュがやってきた。その後にサラダも届けられた。なかなかのボリュームで食べ応えはじゅうぶんにありそうだ。

 さっそくステーキからいただく。いわゆる“町洋食”の肉が薄めのステーキだが、価格を考慮すれば何も言うことはない。食べやすくてライスもすすむ。本日最初のまともな食事として申し分ない。

 迷うことなくこのメニューを即断即決して満足できる食体験になったのだから間違ってはいなかったということになるのだろう。もちろんカキフライなども美味しいのだとは思うが、それはまたの機会といういうことになる。自信を持って選択し、それに納得できれば“正解”なのだ。

 しかしながら行動志向の人々の意思決定への“自信”が有効であるというのは、今のところはあくまでも単純な意思決定に限定されているものであるようだ。

 たとえば甲乙つけがたい局面での将棋や囲碁の一手といったような、必ずしも万全の自信を持てない状態で手を選ばなければならなくなるケースもあるだろう。大組織や国家の首脳部の“高度な政治的判断”というのもまた、検討を重ねた末に半信半疑で行われることも少なくないはずだ。

 ……まぁ今はそういった複雑な問題についてはいったん脇に置いておくことして、自信を持って選んだこのステーキとハンバーグを存分に堪能することにしようか。

文/仲田しんじ

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