今年の6月~8月までの夏の平均気温は、1898年の統計開始以来、2番目に暑い夏だったと気象庁が発表した。平年を0.91℃上回る、まさに暑さの厳しい年だったといえる。
なぜ、今年はこんなに暑かったのだろうか。その理由を気象予報士の内藤俊太郎さんに話を聞いた。
暑くなったいちばんの原因はラニーニャ現象
今年の夏は各地で暑さの記録を更新した。東京では35℃以上の猛暑日が16日と過去最多に。ほか、北海道釧路市や松山市など15の地点では、夏の平均気温が過去最も高くなった。7月1日には埼玉県や岐阜県など6地点で40℃超えを観測。これは観測史上初めての記録となった。
「夏の暑さをもたらす高気圧は、日本の南東の海上にある太平洋高気圧です。今年はこれが非常に強くなりました。しかも、例年より日本に近い位置で高気圧が強まったため、日本全体が高気圧でしっかり覆われたことでより暑くなったんです」
なぜ太平洋高気圧が今年は強くなったのだろうか。
「いちばん大きな影響を与えているのがラニーニャ現象が発生したこと。ラニーニャ現象が起こると、日本は猛暑になりやすいんです。
ラニーニャ現象はペルー沖の海面水温が平年より低くなる現象です。ペルー沖からは東風が吹いていますが、ラニーニャ現象が起きることで、さらに東風が強まります。すると、暖かい海水はペルー沖からフィリピン付近にぎゅっと吹き寄せられる。その結果フィリピン付近の海面水温が平年より高くなります。フィリピン付近の海面水温が高くなると、そこで上昇気流が生まれ、積乱雲もどんどん活発になります。
上昇した空気というのは、どこかで下降気流になります。それが、日本近海の太平洋高気圧のところで下降流になることで、より太平洋高気圧が強まることになります。強い下降気流で空気を圧縮することで温度はどんどん上がっていきました。しかも、高気圧は時計回りの風の向きなので、海上の蒸し暑い空気を日本に流し込みます。高気圧が日本全体を覆っていることもあり、暑い空気が逃げることもできなかったため、今年は猛暑となったんです」
どこかの海面水温が通常より高かったり低かったりすることで、大気の流れはがらりと変わるという。地球上の大気は繋がっており、遠くで起こった現象が波紋のようにいろいろなところに影響するのだ。
10月まではまだまだ暑い日が続く可能性がアリ
9月以降も各地で30℃超えの日が続出し、台風が続けてやってきて蒸し暑い空気を運んだこともあり、とにかく厳しい残暑となった。最近は肌寒い日も増えてきたが、このまま涼しい秋に突入するのだろうか。
「ラニーニャ現象の影響は冬まで続きます。少しずつ肌寒い日は増えてきますが、10月も30℃以上を観測する暑い日が出る可能性は十分にあるため、平年よりは高い気温だと思って過ごすとよいでしょう。
また、10月は季節の変わり目で寒暖差もあり体調管理が難しい月です。今年は特に気温の差が激しい可能性があり、台風もまだまだやってきます。気象によって体調を崩しがちな人は要注意な時期です。
11月になれば暑さも落ち着いてきて12月にかけて冬型の気圧配置が強まります。今年はラニーニャ現象の影響で冬は厳しい寒さになる可能性が高く、あまり秋を感じる間もなく寒い冬に突入しそうです」
【教えてくれた人】内藤俊太郎
気象予報士・防災士。テレビ東京やKHB東日本放送の気象キャスター経て、現在はTBSNEWSとYahoo!天気・災害動画に出演。気象防災アドバイザーや総務省地域力創造アドバイザーとして、地域防災の普及啓発にも取り組む。
取材・文/田村菜津季