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古代インド?中国?時空を越えてギャンブルの起源を探す

2022.10.08

【短期集中連載:Vol.10】カジノ&ギャンブルの深層『時空を越えてギャンブルの起源を探す』

ナマステ。カジノライターのかじのみみです。

ついに本シリーズ最終です。どのような「ギャンブル話」が相応しいのだろう?と考えた末、紀元前から引き継がれる古代インドのギャンブル物語などをお伝えすることとしました。シリーズ⑩のタイトルは「時空を超えてギャンブルの起源を探す」です。

はじまりは古代インド?古代中国?それとも別の文明か

ギャンブルの起源は気が遠くなるほど古い。このことは本シリーズ②の冒頭でもふれたが、ギャンブル研究を愛してやまない世界の研究者からは異論はないだろう。

古今東西、ギャンブルにまつわる逸話は多く残されている。それらのエピソードが伝わる地域ではギャンブルに使用されたであろう物的証拠も出土しており、例えば紀元前3000年頃のエジプトの墓からダイス(サイコロ)が発見されたことは広く認知されている。

「ベスビオ火山の噴火で埋まったイタリアのポンペイ遺跡でも、向かい合って座ったふたりがサイコロ賭博を行っている様子が描かれた壁画が見つかっている」(有澤真理『江戸のギャンブル』)。

その他、約2300年前に栄えたインダス文明の最大級の都「モヘンジョダロ」(古代インド・現パキスタン)からもダイス類が大量に出土している話も一般に知れ渡っている。

紀元前から21世紀の現在に至るまで、そのときどきの人々がなんらかの形態のギャンブルに講じていたと伺える道具類は、今や世界中で顕在化しているのだ!

それらを鑑みると、ギャンブルは間違いなく地域の発展とともに今日まで脈々と受け継がれてきたことが確認できるわけだが、その一方で、世界にはギャンブルを完全に抹殺したいと考える者たちが常に存在する。だがギャンブルは一向に廃れる気配を見せない。

古代ギャンブルは、河川流域に発達した「四大文明」からはじまっていると筆者は捉えている。どの文明のギャンブルが一番古いのかを特定するのは至難のわざだ。何せ、あまりにも遠い昔の話であるため、その特定は極めてむずかしい。

しかしダイス以外の物的証拠で、ギャンブル道具と思われる出土品が見つかった最も古い地域としては「中国説」が有力なのかもしれない。

中国のギャンブル起源は、紀元前2300年頃の陝西龍山文化(せんせいりゅうざんぶんか)の新石器時代後期にまで遡ることができるらしい。一説によると、この時代の出土品から「運を左右するゲーム」(game of chance)に使用されたようなタイルが発見されたという。そのタイルは「人生ゲーム」のような遊びで使われたのだろうか。

ギャンブルの起源をさらに追いかけていくと、筆者のマインドの旅はインドに向かっていった。『ラーマーヤナ』と『マハーバーラタ』の書物である。これらはインダス文明、あるいはそれ以前に成立したと考えられる古代インドの二大叙事詩で、世界中で愛読されている聖典でもある。

「40年以上前の二大叙事詩の英訳本ボンベイで母が入手 2021年自宅撮影」

インドのギャンブル研究者の中には『ラーマーヤナ』は紀元前7300年頃にまで遡ると考える者がいる。「運を左右するゲーム」のようなものが同叙事詩で引用され、ダイスを使ったバックギャモンの類似ゲームやチェスに似たボードの記述もあるという。

一方、紀元前4世紀から紀元後4世紀頃に成立したといわれる『マハーバーラタ』の英訳本では登場人物のギャンブル行為がハッキリと記されていた。記述も生々しく、ドキっとするほどハートを揺さぶられるシーンも少なくない。

同叙事詩は「バラタ族」の王子たちが王位と領土をめぐって戦った「同族争い」がテーマである。その一部をご紹介しよう。


バラタ族の大国は二つに割れていた。ひとつは「カウラヴァ一族」、もうひとつは「パンダヴァ一族」。彼らはいとこ同士であった。

両一族のうち、五人の王子がいるパンダヴァ一族の方が、人柄や戦術などカウラヴァ一族よりも優れていた!それを妬んだカウラヴァ一族は、パンダヴァの五王子を殺そうと悪事を働きつづける。だがパンダヴァ―五王子は、カウラヴァの罠に屈することはなかった。

カウラヴァの嫉妬心が助長し、頂点に達したとき、同一族の「シャクニ」という人物が、パンダヴァの長兄「ユディシュティラ王子」にイカサマのダイスギャンブルを仕掛けた!シャクニは巧妙にだましのテクニックを使い、パンダヴァの財産を奪っていく・・・

さらに、カウラヴァの「ドゥルヨーダナ王子」は、「バラタ国には二人の王の居場所はない」とユディシュティラ王子を挑発した。そしてイカサマ・ギャンブルは続けられた。

パンダヴァはイカサマを見抜いていた。しかし、ことの成り行きに助言していた長老たちの面目をつぶせないという「クシャトリア」(王族・貴族の身分の者)の礼儀として、その対戦を断れなかったユディシュティラ王子たちは、財産を没収され国を追われ、森での生活を余儀なくされてしまった。

森の生活は合計13年。その後はパンダヴァの領土は回復される約束となっていた。しかし、13年後、約束の領土は返還されなかった。ドゥルヨーダナ王子がそれを頑なに拒んだのである!

それを機に、パンダヴァとカウラヴァは軍を率いて対決することになった。大戦争が起きた!激戦の末、カウラヴァの王子はすべて戦死してしまったのである。


『マハーバーラタ』のギャンブル記述の意味は一体何であろう。

ギャンブルは悪だから参加しないように。ギャンブルには罠があるのだ!あるいは人間の欲やエゴを「見る目」とそれに対峙する勇気を持つようにと伝えているのか。

筆者には、同聖典のギャンブル物語はモノゴトの本質を見極めなさいと後世の人々に戒めたメッセージに思えてならない。

ギャンブルの起源は古代インド、古代中国、それとも別の文明なのか。

その全容を探ろうとすると、無限に広がる宇宙空間に放り出されたような圧倒的スケールに溺れそうになる。

長い歴史に圧倒されながらも、それぞれの時代のギャンブル物語に畏怖の念を抱かずにはいられない。

太古の時代の先人たちのギャンブルが、今とそれほど変わっていないかも知れないという安堵感に寄り添っているのだろうか。

取材・文/かじのみみ
カジノライター/ カジノコンサルタント

カジノIR・ゲーミング業歴31年。カジノディーラー歴25年。10歳から15歳までインドのボンベイで育つ。2001年、米ラスベガスのPCIディーラーズスクールにて日本人初としてブラックジャック・ルーレット・バカラのディーラーライセンス取得。国内カジノメーカーでの広報・カジノイベント企画運営責任者、米系大手カジノ事業主のVIPマーケティング業を得て、2013年8月フリーとなる。2012年  立教大学大学院 ビジネスデザイン研究科(MBA)修士課程修了。2019年 マカオ大学 グローバルリーダーシップ育成プログラム 国際統合型リゾート経営管理学(IIRM) 修了。

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