長年の低金利に、「住宅ローンの金利は上昇しないもの」というイメージがついていた人も、最近の円安やインフレ、欧米の金利引き上げの傾向から「そろそろ住宅ローンの変動金利も上昇するのではないか」と、危機感を持ち始めた人も多いのではないでしょうか。
実際に、日銀総裁の任期が23年4月までであることから、来年の春以降、「いよいよ日本でも金利の引き上げか」という予測を立てる人も増えてきています。
金利の引き上げにより住宅ローンの金利も上昇する可能性があり、特に現在「変動金利型」を選択している人は、より大きな影響を受けることになります。
ここでは、「変動金利型」を選択している人が、「住宅ローンの金利上昇に備える方法」をまとめて紹介します。いざ住宅ローンの金利が上昇した時に慌てることのないよう、今のうちから住宅ローンの金利上昇リスクに備えて行動しておきましょう。
「変動金利」を選択している人は7割以上
住宅ローンの金利のタイプは、大きく分けて「全期間固定金利型」「変動金利型」「固定期間選択型」の3つに分かれています。
住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者調査(2022年4月調査)」(※1)によると、そのうち「変動型」の金利タイプを選択した利用者は73.9%。「固定期間選択型」は17.3%、「全期間固定型」は8.9%ですから、「変動型」を選択している人が多いことが分かります。
さらに同調査を見ると、「今後1年間の住宅ローン金利見通し(全体)」では、「現在よりも金利が上昇する」と回答した利用者が2021年10月調査では23.1%だったのに対し、2022年4月調査では39.2%と約4割にまで上昇していることから、「住宅ローンの金利の上昇」を懸念する人が増えていることも分かります。
「変動金利型」の人が住宅ローンの金利上昇に備えるには
住宅ローンの金利が上昇した場合の対応策はいくつか考えられ、これから住宅ローンを検討する人、すでに住宅ローンを利用している人など、様々な条件によって異なりますが、今回はすでに「変動金利型」を選択している人に絞って考えてみましょう。
固定金利への借り換え
すでに「変動金利型」を選択している人が、金利の上昇に直面した場合、まず頭に思い浮かぶのが「固定金利型への借り換え」でしょう。
しかし、一般的には、変動金利型よりも固定金利型の金利の上昇の方が早く、「借り換えをしようと思った時には固定金利がすでに上がっている」可能性の方が高いのです。また借り換えには手間がかかるだけでなく、手数料などの負担もありますから、単純に「固定金利への借り換え」が功を奏すとはいいがたい点には注意が必要です。
とはいえ、今のうちから「固定金利型に借り換えた場合の返済額」を様々な金利上昇パターンでシミュレーションしておき、どれくらい返済額が増加するのかなどを確認しておくことは大切でしょう。増加する負担額以上の貯蓄があるかも確認しておきましょう。
繰り上げ返済を行う
これまでは、低金利、住宅ローン控除制度、団信があることなどから、「住宅ローンは生命保険と同じ」「住宅ローンの繰り上げ返済はしない方が得」といった声も多く聞かれましたが、今後本格的に金利が上昇した場合は、「繰り上げ返済を検討せざるを得ない」という人も出てくるでしょう。
「変動金利型」を選択する場合は、リスクヘッジとして、「金利が上昇した場合に繰り上げ返済で対応できるようある程度の貯蓄をあらかじめ準備しておく」「金利が上昇した場合に返済できなくならないよう返済額を抑えておく」などの方法が考えられます。
「変動金利型」を選択した人の中でも、これらのリスクヘッジをすでにしてきた人は、今後の金利上昇にもすでに対応の目処が比較的ついているはずです。
問題なのは、「返済額が安く抑えられるから」といった安易な動機で「変動金利型」を選択し、他の支払いの増加によりすでに家計に余裕がない上に、これまでにこれといったリスクヘッジもしてこなかった人です。
このような人は、金利上昇の影響をもろに受ける可能性がありますので、まず家計の見直しが急務となります。
ほとんどの住宅ローンには、「5年ルール」「125%ルール」など、金利上昇時でも返済額の大幅な上昇を抑える規則もありますが、「未払利息」が発生することもあり、「どうせ金利は上がらないだろう」と高をくくって何の対策もしないというのが一番のリスクになりますので、今一度リスクヘッジについて再検討しましょう。
他の高金利のローンはないか確認する
変動金利を選択している人は、金利上昇に備え、他の高金利のローンの繰り上げ返済をしておくという方法も考えられます。
住宅ローンは、借入額は多くなりますが他のローンに比べ比較的低金利なため、住宅ローンよりも借入額が少なく高金利のローンがある人は、貯蓄を増やすよりもまず高金利なローンを完済し、家計の余裕をあらかじめ確保しておく方がよい場合もあります。
「固定期間選択型」を選択した人も要注意
ここでは、すでに「変動金利型」を選択した人について述べてきましたが、「固定期間選択型」を選択した人も、固定期間が短い人ほど「変動金利型」の人と同じような対策が必要になります。
固定期間が長いほど安心というわけではなく、固定期間終了時に残高が多いとその時の金利の影響を大きく受けることになります。固定期間終了後の残高を確認し、固定期間中にできるだけ繰り上げ返済をしておくなどの対策も検討しましょう。
いずれにしても、繰り返しになりますが「今後も金利の上昇はないだろう」と予測して対策を怠るのではなく、「金利上昇はあるもの」として、今後の金利上昇によるリスクについて確認しておくことが大切です。今後のライフプランと合わせ、「住宅ローンによる破産」を防ぐために、今一度住宅ローンを含めた家計の計画を見直しましょう。
※1 住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者調査(2022年4月調査)」
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文/家計簿・家計管理アドバイザー あき
著書に「1日1行書くだけでお金が貯まる! 「ズボラ家計簿」練習帖(講談社の実用BOOK)」「スマホでできる あきの新ズボラ家計簿(秀和システム)」他