
生粋とは生まれながらの混じりけのないさまを表す言葉です。『生粋の江戸っ子』『生粋のオタク』などの使い方をします。生粋の意味や漢字の成り立ち、すぐにでも使える例文・英語表現・類義語も合わせて解説します。
「生粋」とは
『生粋』は実際にはどのように使われる言葉なのでしょうか。正しい読み方と意味や成り立ちを解説します。
「生粋」の読み方と意味
「生粋」は「きっすい」と読み、「混じりけのない」「生まれながらの」という意味の名詞です。
「生」と「粋」を並べると「きすい」と読むのが正しいように思えます。これは「きすい」という発音が促音化(そくおんか)したもので、洗濯機を「せんたっき」、水族館を「すいぞっかん」と発音するのと現象が起きているのです。そのため漢字では「きすい」と読めますが、実際に発音する際は「きっすい」となります。促音とは単語を発音する際の小さな「っ(ッ)」のことです。
「生粋」の成り立ち
生粋の「生」という字は、草木が地面から生えてくる様子を表した象形文字が元になっています。「粋」は稲穂と実の象形文字を元にした「米」と、「卒」の略字が合わさった漢字です。
卒には「突然」「死ぬ」「終わる」「完全に」という意味があります。これらのことから「粋」は「精米された米」という意味になり、「混じりけがない」ことを表す漢字になったという説があります。
「生粋」の使い方・例文
生粋を使った具体的な表現を見てみましょう。英語の例文では、生粋の意味に近い言葉を取り上げています。
「生粋」を使った例文
「生粋」を使った例をいくつか紹介します。ほとんどの場合、「生粋の〜」と使いますが、「生粋な」という言い回しもごくまれに見られます。
- 彼女は生粋のニューヨーカーだ
- 彼は生粋のオタクだ
- 太宰治は生粋な純文学作家です
いずれも「生粋の~」に続く言葉は、人の特徴や生き方・あり方を表現しています。「彼女は生粋のニューヨーカーだ」は、その人がニューヨーク生まれのニューヨーク育ちで、かつニューヨークに暮らす人々の特徴を十分に備えているという意味です。
「生粋のオタク」は、多くの人が認める「オタク」という人々の特徴や気質・考え方をその人が体現している場合に使われます。この場合「生まれたときからオタクだったかのような」というニュアンスになります。
「太宰治は生粋な純文学作家」という使い方はめったにしませんが、「混じりけのない」という意味を強調した使い方といえるでしょう。
「生粋」を英語で表現する
生粋と同じ意味の英単語は以下のようなものがあります。
- trueborn:生まれつきの
- natural-born:天性
- genuine:純正の・偽物ではない
それぞれ生まれながらにして、混じりけのないさまを表した単語です。これらの単語は以下のような使い方が可能です。
- a trueborn Londoner:生まれながらのロンドンっ子
- a natural-born American citizen:生まれながらのアメリカ市民
- a natural-born leader:天性の指導者
- genuine Italian:生粋のイタリア人
「生粋」の類義語
生粋の意味に近い言葉として「生一本」「精粋」「純一無雑」を解説します。いずれも「混じりけのないさま」を表しており、主にモノに対して使われる言葉です。
生一本・精粋・純一無雑
生粋の類義語として以下のような語句があります。
- 生一本(きいっぽん)
- 精粋(せいすい)
- 純一無雑(じゅんいつむざつ)
生一本はもともと日本酒に関わる言葉で「ひとつの酒蔵で造る純米酒」という意味があり、混じりけのない純粋なさまを表す言葉です。
精粋という言葉も生粋と同様に「混じりけのない」という意味をもっており、さらに「選び抜かれた」という意味があります。たとえば「日本料理の精粋を味わう」といった使い方をします。
純一無雑は「純一」「無雑」どちらも混じりけのない状態を表す言葉で、二重に使うことによりその様子を強調している四字熟語です。
「生粋」の対義語
生粋にはどのような対義語があるのでしょうか。「正当な」「生まれながらの」の逆を表す言葉を見ていきましょう。
疑似・亜流・不純
生粋とは逆の意味を表す対義語には以下のようなものが挙げられます。
- 疑似(ぎじ)
- 亜流(ありゅう)
- 不純(ふじん)
疑似は「本物によく似ていて紛らわしいさま」を表す言葉です。正当ではない・偽物といった意味合いになり、「疑似体験」「疑似餌(ぎじえ)」「疑似的」など、一般的に疑似単体ではなくほかの単語に付けて使います。
亜流とは「本物を真似たもの」「本物に似た独創性のないもの」に使われる言葉です。ドイツ語でEpigonen(エピゴーネン)ともいい、ギリシャ語の「後から生まれたもの」という意味のepigonoiが語源となっています。
不純は「純真でない」「混じりけのある状態」を差し、「不純な動機」「不純物」といった使い方をします。
「生粋」と誤解しやすい言葉
類義語のなかでも、「純粋」は使い方が生粋と酷似しています。微妙な意味合いの違いが感じられるよう例文を挙げて紹介します。
「生粋」と「純粋」の違い
「生粋」も「純粋」も混じりけのないさまを表していますが、実際に使ってみるとニュアンスの違いを感じられると思います。生粋は以下のように使うのが一般的です。
- 彼女は生粋の江戸っ子だ
- 彼は生粋の青森県人だ
純粋を使うときは、以下のような場面です。
- この馬は純粋なアラブ種だ
- あの人は純粋な心の持ち主だ
- 純粋なはちみつは高価だ
生粋はその人の生まれや育ちに関して使われるもので、純粋はモノや人の状態を指す言葉であることが分かります。どちらも同じ「混じりけのない状態」を意味していながら、意味合いが少し異なることに注目して使い分けましょう。
構成/編集部
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