主に小麦粉・グルテン、動物性の食品を避ける「代替」フードがぞくぞく増えている。中でも「麺」ジャンルは群雄割拠。さまざまな原料を使った麺が展開されている。今回は3つの代替麺と呼べる商品を見ていこう。開発経緯や、代替としてのメリット、美味しい食べ方までをチェック!
1.キッコーマン「大豆麺」(大豆使用)
キッコーマンが今年8月に新しく発売した「大豆麺」シリーズは、小麦等に大豆を50%ブレンドした高たんぱく・低糖質な麺(※)に、簡単調理で満足感のある1食に仕上がるソースやスープをセットにしたもの。麺は小鍋でもレンジでもゆでられ、手軽に麺料理を楽しむ配慮もされている。
※高たんぱく・低糖質麺:麺1食でたんぱく質19.3gを含む/麺の糖質40%オフ(糖質24.4g/麺1食)※日本食品標準成分表2020年乾燥うどん比較
種類は「香る生姜かきたま」「汁なし担々麺風」「かきたまチゲ風」「濃厚ボロネーゼ」と、和・洋・中・韓、汁麺・あえ麺など幅広い展開となっている。
そこで本商品について、開発経緯からメリット、味や食感、美味しい食べ方について確認していこう。回答者は、キッコーマン食品株式会社 プロダクト・マネジャー室 新規事業グループ 村山恵一氏だ。
●開発経緯
「コロナ禍を経て健康志向がさらに高まり、たんぱく質摂取に対するニーズが高まっています。また、調理時間減・簡便志向の流れの中、主食完結型メニューが増加し、主菜・副菜メニューが減少することで、たんぱく質が摂りにくくなっています。当社の主要商品『しょうゆ』の主原料である大豆には良質なたんぱく質が含まれているので、大豆を主食にすることでお客様のたんぱく質摂取の選択肢を広げられると考え、『大豆麺』を開発しました」
●代替麺としてのメリット
「“カラダにうれしい・おいしい・手軽”の3つの特徴を兼ね揃えた新しい主食です。高たんぱく・低糖質麺で、ほのかに香る大豆の風味と、歯切れがよくしっかりとした食べごたえの麺。麺は小鍋でもレンジでもゆでられ、家庭では簡単に作れない味わいのソースはかけるだけ、スープは卵ひとつで簡単調理が可能です」
●どんな味・食感?
「SNSでは以下のような声をいただいています。大豆麺というとクセのある味わいを想像してしまう方も多いようですが、実際に食べてみるとクセがなく、食べごたえもあるということで、美味しさについて良い評価をいただいております。また、レンジで簡単に調理ができて、長期保存も可能なので、簡便性・利便性面でも良い評価をいただいております」
SNSコメント抜粋
「高たんぱくで低糖質な麺なのに、クセも感じなかった」
「ボソボソしてるかな?クセがあるかな?と気になっていたけど、食べやすかった」
「大豆麺は食べごたえもあるから、満足感があった」
「手間なく簡単に美味しく作れるから、ささっと準備したいお昼時にうれしい」
「1人ランチに常備しておくと便利」
●美味しい食べ方
「そのままでも十分美味しいですが、『大豆麺 汁なし担々麺風』や『大豆麺 かきたまチゲ風』には、サラダチキンを加えることで、より食べごたえのある一品に仕上げながら、さらにたんぱく質をプラスしていただけます。また『大豆麺 香る生姜かきたま』や『大豆麺 濃厚ボロネーゼ』は、しめじやブロッコリーといったカット野菜や冷凍野菜を加えるのもおすすめです。他にも当社の主要商品である豆乳を使ったおすすめレシピなどもございます」
2.ZENB JAPAN「ZENB NOODLE」(黄えんどう豆使用)
ZENB JAPANの「ZENB NOODLE」は、黄えんどう豆を100%、うす皮までまるごと使った麺。2020年9月に発売されて以来、2年足らずで累計660万食を販売した。第2弾として2022年5月、そうめんのように食べられる約1.1㎜の細麺タイプを発売した。
つなぎは一切使用せず、グルテンフリーの麺としての特徴を持ちながら、麺のゆで汁にまで含まれる豆の旨みや栄養をたっぷりと味わえる。
そこで、本商品について、開発経緯からメリット、味や食感、美味しい食べ方について確認していこう。回答者は、株式会社ZENB JAPAN 林亮人氏だ。
●開発経緯
「糖質制限やダイエット、グルテンフリーなどで、麺やごはんなどの主食を我慢する人が増えている中で、美味しく食べれば食べるほどカラダにいい『新しい主食』をつくりたいという想いから開発しました。
原材料である黄えんどう豆は世界規模での食糧不足が懸念される近年、植物性たんぱく質が豊富な食材としても注目されており、豆類は根粒菌の働きで窒素肥料の使用量を減らせる環境にやさしい素材でもあります。そのため、ZENBヌードルを通じて、おいしさや健康はもちろん、環境にも配慮した『新しい食生活』を提案していくことで、食にまつわる問題解決にも貢献できると考えています」
●代替麺としてのメリットは?
「植物性たんぱく質が豊富な黄えんどう豆をうす皮までまるごと使っており、不足しがちな食物繊維も1食で1/2日分とることができます。さらに体に欠かせないビタミンB1や鉄分などの栄養もたっぷり。またパスタやうどん、ごはんと比べて糖質30%オフであり、糖質の吸収を穏やかにする低GI食品でもあるため、罪悪感なく召し上がれます。豆の旨みが溶け出たゆで汁は、スープのおだし代わりになるため、手軽にメニューを1品追加できます」
●どんな味・食感?
「豆のほのかな旨みともちっとした食感が特徴です。お客様からは『噛みしめると豆のほのかな風味を感じる』『豆のクセは気にならず、シンプルな麺メニューでも美味しく食べられる』という声をいただくことが多いです。また食感については『コシがある』『もちもち』『生パスタみたい』など様々ですが『食べごたえ十分で満足感がある』『つなぎを使っておらずグルテンフリーなのにモソモソしておらず、美味しく食べられる』と好評です」
●美味しい食べ方
「初めて購入される方は、パスタメニューを試されることが多いですが、ラーメンや焼きそば、まぜ麺、つけ麺など色々なメニューでお楽しみいただけます。
徐々に気温が下がってくるこれからの季節には、ラーメンが特におすすめです。豆の旨みが溶け出たゆで汁は、ラーメンスープのベースにもなり、豆の美味しさと栄養を余すことなくいただけます。またラーメンの場合、麺のコシを出すために、一度水洗いして麺をしめるひと手間を入れてもらうことで、より美味しく食べられますのでぜひお試しください。その他にも、ゆでた麺にシンプルに卵と醤油をかける『たまごかけヌードル』や、炒めて豆の香ばしさを引き立たせる焼きそば風などのメニューもおすすめです」
3.佐藤商店「SOY DE NOODLE(ソイデヌードル)」(大豆・こんにゃく使用)
「SOY DE NOODLE(ソイデヌードル)」2食入×1袋 734円(税込)
大分県由布市でこんにゃく製造業を営む有限会社佐藤商店による大豆こんにゃく麺「SOY DE NOODLE(ソイデヌードル)」は、7年かけて開発された商品だ。
1食220gあたりの糖質は5.8g、たんぱく質21.6g、食物繊維10.9gとヘルシー。大豆麺でもなくこんにゃく麺でもない、新しい食感と味わいが楽しめる。
そこで本商品について、開発経緯からメリット、味や食感、美味しい食べ方について確認していこう。回答者は、有限会社佐藤商店 営業 加藤智氏だ。
●開発経緯
「当社は創業60年余りのこんにゃく製造者です。フランスにしらたきを輸出しておりましたが、こんにゃくは重量があるので乾麺にできないかと依頼がありました。こんにゃく自体は乾麺にできないため、何か他のものと混ぜることでできないものかと探していたところ、大豆麺の製造者と知り合い、開発を依頼しました。上手く混ぜ合わせることができ、第1弾商品が開発され、早速フランスに輸出を行い、成果が上がりました。
その後、問題点などが見つかり、試行錯誤の末、現在のソイデヌードルが完成しました。当初は健康食品としてダイエット向けの商品として、SNSを中心に販売を行っておりましたが、あるスポーツトレーナーの方より『減量時に用いたいが、減量中、麺類は糖質が高くグルテンが入っているので敬遠している』とのお声をいただき、ウエイトコントロールが必要なアスリートやジム関係の方々向けにアプローチしたところ、お褒めをいただき、その方面にシフトしました」
●代替麺としてのメリットは?
「小麦粉不使用で、アレルギー源は大豆のみ。高たんぱく、低糖質、豊富な食物繊維、グルテンフリー、糖質は5.8gですが、ゆで上げ後0.5gになります。
大豆麺より食物繊維が多く、麺が切れにくい点やウエイトコントロール中でも気にせず召し上がれる点もメリットです」
●どんな味・食感?
「グルテンが入っておりませんので、もちもちした食感ではありません。和そばに似た食感で、大豆風味がします。こんにゃく感はありません。味噌、醤油など、大豆系調味料とよく合います」
<お客様の声>
「減量中に糖質を気にせず麺料理を食べれるのでうれしい」
「色々な麺料理に使える」
「具が無くても、麺つゆがあれば美味しく食べれる」
「お通じが良くなった」
●美味しい食べ方
「ゆで上げ、水でしめ、ざるそばのように麺つゆで食べるのが美味しいです。ラーメンのように、醤油ベースのつゆで温かくして食べるのもおすすめです。その他、色々なソースでパスタとして食べるのも美味しいですし、中華麺を使った麺料理にも合います」
4.優食の「豆腐干」(大豆使用)
「豆腐干<細切り(短)・冷凍> 12袋セット」2,400円(税込)
中国に古くから伝わる豆腐干(とうふかん)は、麺類ではないものの、その細く長い見た目は麺さながら。硬い豆腐を圧縮して脱水した後、干して作られる。
中華圏では細切りにしたものが、定番食材として広く親しまれているという。和えものなどの前菜から、炒めもの、煮ものなどの主菜までアレンジは自由自在だ。
日本でも市販商品が増えてきた。優食の「豆腐干」は、手軽にネット販売で手に入る。
そこで本商品について、開発経緯からメリット、味や食感、美味しい食べ方について確認していこう。回答者は、株式会社優食 広報担当 平手玲奈氏だ。
●開発経緯
「もともと中華圏では伝統的に食べられていた豆腐干ですが、高たんぱく質・低糖質という高い栄養価と、美味しさとのバランスに着目したのが最初です。
また、癖の少ない食味・風味で多様なアレンジが可能ですので、健康意識の高い日本の消費者様にも紹介したいと思い開発しました。また、環境負荷の低い大豆由来の植物性たんぱく質を豊富に含む豆腐干を広めることによって、SDGsの観点からも微力ながら貢献したいと考えました」
●代替麺としてのメリットは?
「一般的な麺と比べ、高たんぱく質が豊富で、糖質が低く、グルテンフリーである点です。パスタと比較※しましても、たんぱく質は約3倍、糖質は約25分の1です(※日本食品標準成分表2015年版(第七訂)より)。また、グルテンが含まれていませんので、グルテンフリーの食生活に取り組んでいらっしゃる方にもおすすめです。
加えて、性質上一般的な麺よりゆで伸びしにくいので味を損なうことなく保存ができます。実際、冷凍弁当を宅配するサービスでも一つの具材として採用が進んでいます」
●どんな味・食感?
「基本的には“お豆腐”ですので、味付けを邪魔しない程度のほんのりとした大豆の味と香りがします。食感は、しっかりとした噛み応えと弾力があります。柔らかめの食感をご希望の場合は、ゆでる際に重曹を少量加えることで、柔らかくふんわりとした食感にすることもできます。
ご購入いただいた方からは、『くせが少ないので和洋中他いろんなアレンジができる』『噛み応え・食べ応えがあってお腹持ちもよいので、ダイエットに適している』などの声をいただいています」
●美味しい食べ方
「当社の販売している豆腐干の3規格『細切り・長』『細切り・短』『平切り』ごとのおすすめの食べ方をご紹介します」
・「細切り・長」
台湾風混ぜそばの麺を『豆腐干』にチェンジすることで、糖質を5.5g(1人前)に!
・「細切り・短」
『豆腐干、ひじき、ごぼうのデリ風サラダ』 糖質 3.8g(一人前)
色とりどりの具材と豆腐干を組み合わせれば、栄養も満点!
・「平切り」
ホワイトソースも、低糖質のモッツァレラチーズで代用し糖質をぐっと抑えて!
「代替」というメリットと美味しさの両立が中々難しかった「代替麺」もここまで進化してきた。今後さらなる新商品が登場するのが楽しみだ。
取材・文/石原亜香利