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完成度が高い日産の4代目「エクストレイル」に足りないもの

2022.09.25

 日産のSUV「エクストレイル」が4代目にフルモデルチェンジした。2000年にデビューした初代とその次の2代目はボクシーなフォルムが特徴的なカジュアルなSUVだった。2013年に登場した3代目は一転して曲線なども取り入れ、より上質なテイストに変わった。

 4代目は今までで最も大きな進化であることが乗る前から伺える。パワートレインを一新し、より電動化を活かした4輪駆動システムを採用しているのだ。2輪駆動版もあるが、今のところの受注の9割は4輪駆動版だそうだ。

 今回、試乗したのは「G e-4ORCE」というグレード(税込価格499万1500円、車両本体価格は449万9000円)。埼玉県長瀞周辺の一般道と関越自動車道で1時間あまり試乗した。

機械として優れているか?★★★★★5.0(★5つが満点)

 日産が今年、発表したEVの「アリア」や「サクラ」などと共通するモチーフを持ったエクステリアデザインは、今日的でスッキリとしていて、すぐに眼に馴染んでくる。それは内装にも言えることで、違和感を感じることがない。こちらも「アリア」や「サクラ」、遡れば「ノート」などとも共通する画素数の多い、明るく見やすいメーターパネルにセンターのマルチモニター画面などを軸にして、ドライバーインターフェイスも良く整理されていて使いやすい。

 プラットフォームを共用している三菱「アウトランダーPHEV」を比較のために借り出して乗り較べたが、「エクストレイル」のほうが後から出ただけあって、走行モード選択ロータリースイッチやe-pedalスイッチなどがより使いやすく仕上がっている。新型「エクストレイル」のパワートレインは画期的なもので、日産を代表するハイブリッドシステムに育った「e-Power」の発電を1.5L、3気筒VCターボエンジンが担っている。

 VCとは「可変圧縮比」のことで、すでに海外向けモデルには採用されていたが、国内向けには初めてとなる。マルチリンク機構とアクチュエーターを組み合わせ、走行状況によって圧縮比を8から14まで自在に可変するという凝ったメカニズムを有している。「e-Power」システムは改良を重ねられて、多くの車種に搭載されている。エンジンは発電だけに徹していて、タイヤを駆動するのは電気モーターのみ。

 最初の頃の「e-Power」は、赤信号で停車している最中のような時にもエンジンが回転し始めて発電していたが、最新のものはそうした静かな時にはなるべく発電しないように、システム自体が判断するように改良されている。走り出してある程度スピードが上がり、タイヤノイズや風切り音などが発生し始めた頃合いを見計らってエンジンが掛かる“賢さ”を備えている。もちろん、「エクストレイル」も変わらない。

 加えて、ボディーなどへの遮音対策が入念に施され、運転中の車内の静粛性はとても優れている。高速道路を走っても、風切り音やタイヤが路面と擦れることによって発生するノイズなども一定以下のレベルに抑えられており、とても静かだ。タコメーターを眺めれば回転しているかどうかはわかるのだが、音や振動などからエンジンの回転を感じることはなかった。あっても、車体自体の遮音性が高いので、まったく気になるレベルではなかった。

 停車してボンネットを開けると、安全対策上からエンジンが掛かり、その音の意外な大きさに驚かされた。それだけ車内が静かだということだろう。とにかく、新型「エクストレイル」一番の長所は静粛性の高さだと断言できる。

 VCターボエンジンが発電した電気は前後2基のモーターに送られて、そのモーターによって加減速を行う。

「アリア」の4輪駆動版(半導体不足などによって発表されたものの、未だに顧客への納車はされていない模様)にも採用された「e-4ORCE」は、モーターとブレーキを統合制御して、4輪それぞれの駆動力をコントロールして走行性能を高める電動化ならではの技術だ。

 あいにくと当日は雨が降っていて、高速道路も一般道も渋滞気味だったので、e-4ORCEの特徴を明確に感じ取ることはできなかった。だが、知人の日産ディーラー経営者によると、別の日に追浜の日産のテストコースで「エクストレイル」を試乗した際にe-4ORCEによる回頭性の高さ(キビキビと良く曲がること)を感じたとのことだった。

 しかし、特にe-4ORCEを意識しなくても、ナチュラルな走りを誰でも感じ取ることができるだろう。三菱「アウトランダーPHEV」は、2.4L、4気筒エンジンと前後2基のモーターを組み合わせている。「エクストレイル」と違って、エンジンは走行状況によって駆動にも使われ、駐車中にコンセントから充電も可能だ。

 静粛性の高さとスムーズな加速は「エクストレイル」と甲乙つけ難く、走りが上質であることに変わりはなかった。顕著な違いがあるとすれば、航続距離の長短だろうか。ちなみに「アウトランダーPHEV」は都内から長瀞を往復して220km走り、使用したガソリンは11Lだった。満充電から電気だけで86km走るので、その分が効いているのだろう。ボディサイズや質感の高さなどを考えると、20km/Lという好燃費だった。

 新型「エクストレイル」は電動化のメリットを最大限に活かしたスムーズな加減速も備わっている。静かでスムーズという、新時代の上質感を見事に体現している。

商品として魅力的か?★★★★★5.0(★5つが満点)

 走行モードは、オート、エコ、スポーツ、スノー、オフロードの5種類が用意されている。ダイヤルによる走行モード切り替えもわかりやすい。タイヤを履き替えて、スノーやオフロードモードを選べば、ほぼ走れない道がないことになる。

 少し前まで、そうした万能性能を持つのは限られたオフロード4輪駆動車だけだった。快適性を損なわず、上質感まで伴いながら街中での使用でも使いにくさを生じない新型「エクストレイル」や「アウトランダーPHEV」のようなシティSUVが出現したのは電動化によるところが大きい。

 2台は、電動化をエコと走行性能の向上と上質感の確保の三つに活用しようとしている。他にも、最新技術による機能がたくさん盛り込まれ、2022年現在のシティSUVでは最も進化していて、完成度も高いと言えるだろう。ショールームの店頭や試乗などによってこの2台に接した人からは目立った不満や疑問などが発っせられないのではないか?

 それほど完成度が高く、1時間あまりの試乗中に弱点を見付けることができなかった。強いて、個人的な好みを含めながら欲を言わせてもらうならば、もう少し内外のデザインや素材使いなどで個性を打ち出しても良かったのではないか。「アウトランダー」のほうが、特にリアスタイルに独自の造形を施しているので、遠くからでもすぐに判別できる。

 手堅く常識的で安心できるけれども、素晴らしい走行性能を体現するような“新しいモノ感”に乏しいのだ。目新しさや新奇さなどのフックがない。性能や上質感などは、いずれライバルたちに追い付かれてしまうだろう。拮抗してきた時に、存在を思い出させてくれる何かがあったら良かったと思う。つまり、それだけ商品として良くまとまっているということなのだが。

◆関連情報
https://www3.nissan.co.jp/vehicles/new/x-trail.html

文/金子浩久(モータージャーナリスト)

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