平仮名やカタカナの表記が多い言葉が漢字になると、読めなくなることがあります。多くの人が知っているであろう「微塵子」も、その言葉に含まれるのではないでしょうか。「微塵子」はなんと読むのか、読み方や意味について解説していきます。
微塵子とは
微塵子は、「みじんこ」と読みます。小学校や中学校の理科の授業で代表的な微生物として習ったり、実際に顕微鏡を使って観察したりする、あの「みじんこ」です。
微塵子は知名度の高い生物ですが、平仮名やカタカナで紹介されることが多いため、漢字での表記になじみがないかもしれません。では、微塵子の漢字にはどのような意味や由来があるのか確認していきましょう。
仏教用語に由来する説が有力
微塵子の「微塵」という言葉には、「微細・こまかい・ちり・ごくわずかな量」などの意味があります。もともとは仏教語であり、「目に見える最小のもの・微細な物質・ごく小さいもの」を意味する言葉です。
さらに「子」は親が産んだ子といった意味の他に、「小さいもの」という意味を持ちます。つまり、微塵子は、とにかく微細で小さいものという由来で付けられたといえるでしょう。
また、微塵子の読み方を調べてみると、「水蚤」という表記がでてきます。水蚤は、中国における微塵子の表記です。
微塵子の生態
微塵子がどんな生き物なのかは、学校で習ったきりという人が多いのではないでしょうか。微塵子の漢字の意味や由来を確認したところで、生態についても確認しておきましょう。
エビやカニと同じ甲殻類のプランクトン
微塵子は、プランクトンの一種で、いくつかの節になった足を持つ節足動物の仲間です。また、外骨格と呼ばれる殻のようなもので体が覆われていることから、節足動物の中でもエビやカニと同じ甲殻類に分類されます。
甲殻類は脱皮を繰り返して成長する特徴があり、微塵子も脱皮を繰り返して成長します。水中では、第2触角と呼ばれる細く長い触角を動かして泳ぎます。体が透明なのは、敵から見つかりにくくするためだと考えられています。
プランクトンには2タイプある
プランクトンとは、水中での遊泳能力がない、または遊泳能力が低い生物の総称です。プランクトンと聞くと、目に見えるか見えないくらいの小さな生き物を想像するかもしれません。しかし、プランクトンにサイズは関係なく、微塵子のような小さい生物から、クラゲの仲間のように大きな生物も含まれます。
プランクトンは、「植物プランクトン」と「動物プランクトン」の2種類に分けられます。植物プランクトンは、生きていくのに必要な栄養素を自ら作り出す生物です。
一般的な植物と同じように、光合成をすることで生命を維持できます。代表的な植物プランクトンには「アオミドロ」や「ミドリムシ」がいます。
一方、動物プランクトンは、生きるのに必要な栄養素を外部から取り込むことで生命を維持している生物です。そのため、餌を取り込む器官・栄養を吸収する器官・不要になったものを排泄する器官があります。ちなみに、微塵子は動物プランクトンの一種で、小さな植物プランクトンを食べて生きています。
生息場所や種類・寿命
日本国内には約70種類の微塵子がいますが、その多くは淡水域に生息しています。泳ぐ力が弱いので、湖の沖合や池など、水の流れが緩やかな場所でなければ生きていけません。
微塵子の仲間は、雌だけで単為生殖卵を産んで繁殖します。微塵子の寿命は、水質や餌の環境が良ければ、約1カ月です。生涯におよそ10回の出産をします。
名前に微塵子がついても、仲間ではない生物もいます。微塵子は「節足動物門・鰓脚(サイキャク)綱枝角亜目ミジンコ科ミジンコ属」に属する甲殻類の生物です。一方「剣微塵子(ケンミジンコ)」は、節足動物門・甲殻亜門・カイアシ亜綱に属する甲殻類なので、微塵子の仲間ではありません。
微塵子の需要
微塵子は、野生環境では昆虫や魚の餌となり貴重な栄養源といわれています。それだけではなく、微塵子は人間にとっても需要がある生物なのです。微塵子は、どのような目的で需要があるのでしょうか。
ペットの餌として需要が高い
微塵子は、飼育されている魚の餌としての需要が高いです。特にメダカを飼育している人にニーズがあり、人工餌にはない栄養素を含んでいることから、体格や色艶などをよくするために微塵子が与えられます。
人口餌よりも自然に近い餌なのでメダカの食い付きがよく、食べ残しがあっても水質に悪い影響を与えにくいのが餌としてのメリットです。ただし、微塵子であればなんでもいい訳ではありません。魚によって好みがあるため、与えても食べないことがあります。
なお、微塵子の中で餌として人気なのは、外骨格が柔らかい「玉微塵子(タマミジンコ)」です。
ペットの餌として微塵子を飼育する人も
魚の餌として人気の高い微塵子ですが、毎回獲りにいくのは大変です。インターネットで生き餌として微塵子が売られていますが、価格は人工餌よりも高く、輸送費などのコストもかかります。
そのため、定期的に微塵子を与えられるように飼育する人も少なくありません。微塵子は水温・水質・餌などの環境が整っていれば、ペットボトルでも繁殖が可能です。微塵子を1度獲るか購入した後に、繁殖に成功すればコストを抑えられます。
微塵子を餌として与えるときは、飼育している魚に大きさが合っているかの確認が大切です。生まれたばかりの稚魚に大きな微塵子を与えると、食べられずストレスになるおそれがあるため注意しましょう。
微塵子の飼育方法や繁殖方法
微塵子を飼育するときは、水と容器・餌を準備しましょう。微塵子は、塩素を苦手としています。飼育に使用する水は、必ずカルキ抜きするようにしてください。
微塵子の繁殖に最適な水温は、20℃程度です。水温が高すぎると生きていけないので、直射日光が当たる場所などで飼育するのは避けましょう。また、水温が下がりすぎると繁殖力が低下するため、ヒーターなどで一定の温度を保てるように工夫が必要です。
微塵子は植物プランクトンを食べるので、植物プランクトンが含まれている生クロレラ水やグリーンウォーターで育てるのがおすすめです。入手しやすい餌としてドライイーストが使われることもありますが、水質が悪化するおそれがあるため、使いすぎないように気を付けてください。
微塵子は、雌だけで繁殖していきます。日照時間や水温など特定の環境下では、雄が生まれることで受精卵を作って繁殖しますが、環境が良ければどんどん増やすことができます。ただし、水槽の大きさに対して微塵子の数が多すぎると、水中の酸素を消費して全滅するおそれがあるため注意しましょう。
構成/編集部