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トヨタが導入した新たな人事評価基準「人間力」とは?

2022.09.25

近年、人事評価制度に多様な評価項目が盛り込まれ、会社員は自分の評価を上げるチャンスだ。一方で、「この評価はどうすれば上げられるのか?」と迷う項目もあるだろう。特に最近では「人間力」といった人としての能力が、評価基準の大きなポイントになってきている。

日本の大手企業も評価項目に積極的に取り入れる「人間力」。一体どんな意図や具体的な評価がされるのか? 2020年から「人間力」を評価基準に加えたトヨタ自動車の例とともに、専門家の意見を紹介する。

トヨタが「人間力」を評価基準に追加

トヨタ自動車が近年、人事評価制度を刷新したことは大きなニュースとなった。従来の職能ごとの一律的な昇給をなくし、評価に基づく賃金項目、つまりより個人に焦点を当てる職能給に一本化した。

その個人の職能評価の基準に「人間力」が加えられたことは、特に注目されている。

具体的には、“誰かのために”といった「貢献意識」と相手の意見を丁寧に聞いて「謙虚に学ぶ姿勢」を指す。相手を思いやり、自分はできていないことを理解し、学び成長しようとする努力などが求められる。もちろん業務の実行力は別途、評価基準にあるが、マインドが重要になるこの評価基準は、新しいものといえる。

人間力を評価基準に入れた理由についてトヨタ自動車に尋ねたところ、「自動車業界を取り巻く100年に一度の大変革期を乗り越えるため、自分たちが経験したことがない分野においても、周囲から謙虚に学び、仲間づくりをして、乗り越えていかなくてはならないため、その基礎力としての人間力を評価に導入しました」と回答。

また導入後、何らかの効果が起きているかと尋ねたところ、「周囲から頼られ信頼される人物になるための意識向上や努力促進が、組織内に顕在化するとともに、職場活性化につながっています」とのことだった。

トヨタを皮切りに、日本の他企業でも今後、人間力の評価は取り入れられていくと考えられる。

「人間力」の評価基準 ビジネスパーソンはどう対応?

一人のビジネスパーソンとして、会社員として、「人間力」という明確な基準が盛り込まれ、評価されることになると、個人も方針を変えざるを得なくなるだろう。今後、どのように対応すべきか。組織・人事コンサルティングを行うパーソル総合研究所に在籍し、近年の人材事情に詳しい上席主任研究員 小林祐児氏に意見を聞いた。

【取材協力】

小林 祐児氏
パーソル総合研究所 上席主任研究員
NHK 放送文化研究所に勤務後、総合マーケティングリサーチファームを経て、2015年入社。労働・組織・雇用に関する多様なテーマについて調査・研究を行っている。専門分野は人的資源管理論・理論社会学。著書に「早期退職時代のサバイバル術」などがある。
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/profile/yuji-kobayashi.html

●「うまくやる力」は従来から存在していた

小林氏によれば、「人間力」の評価基準は完全に新しいものではないという。

「日本企業は従来より『人間力』のような抽象的な能力を重視してきました。日本企業の評価制度の特徴は、評価の基準が特定のジョブ=職務に紐づいていないことです。職務の範囲があいまいで、業務命令で異動・配転がある日本企業は、伝統的に『どの部署でもうまくやれる人』を重視してきましたし、それは今もさほど変わっていません。こうした一群の能力を、私はざっくりと『うまくやる力』と呼んでいます。

こうした抽象的な『うまくやる力』は、時代とともに重視点を変えてきました。かつては『情意』と呼ばれるような、仕事に対する態度、姿勢について評価していました。実直さやコツコツ努力する力なども評価されました」

●現代的な「人間力」とは

現在、評価基準としての「人間力」とは具体的にどのような力を指すのか。

「人間力のような抽象的な仕事能力は、端的に言えば広義の『コミュニケーション能力』であることが多いです。多様な価値観を持つ人々と働くためには、コミュニケーション能力が必須だからです。トヨタ自動車の場合は、『周囲へ好影響を与え、頼られ・信頼される力』といった他者への影響力の高さを重視しているようですが、これも広義にはコミュニケーション力でしょう。

また『問題解決力』や『批判的思考力』のような創発的な思考ができることもよく求められるものです。日本企業は、イノベーションのような新しい領域を生み出す力を一般従業員にも広く求めるからです。このような傾向は今後も続くでしょう。

人間力のような抽象的能力は、厳密に測定することができません。測定できないからこそ、日本の職能等級制度は『年功』的に推移してきました。人間力や問題解決力が年齢によって衰えるようなことはあまり想定できないからです。具体的なジョブと紐づいていない「うまくやる力」は、このような蓄積のロジックを持ちます」

●「人間力」の評価を高めるには?

ビジネスパーソンは今後、人間力の評価を上げるためには、何に取り組んでいけばいいだろうか。

「昨今は、コミュニケーション能力が求められるシーンが、職場の内部から外部へと広がってきたことが変化と言えるでしょう。社内の仲間内だけの協調的なコミュニケーション力から、顧客はもちろん、社外の取引先やオープンイノベーションのパートナーなど、社外に開かれた人脈構築力がより求められるようになってきたと思います。

ビジネスパーソンとしては、社外の人脈で多様な人とかかわりを持つこと、地域のコミュニティなどで肩書とは関係のない人のコミュニケーション経験を持つことなどにより、人間力を鍛えることができるでしょう。昔からの学友や同期といった組織のハコが与えてくれるような人間関係に閉じこもっていても、柔軟な発想も多様な人と渡り合えるコミュニケーション力も身に付きません」

●「人間力」向上により期待できる市場価値

市場に視野を広げてみると、人間力を上げることでどのような市場価値が生まれるか。

「人間力がない人を考えてみればわかりやすいです。プログラミングスキルや統計スキルなど、特定領域の専門スキルに寄りかかって、人とうまくコミュニケーションできない人は、社内においても市場においても評価されないのは明らかです。90年代から、マネジメント層以外のエキスパート職や専門職制度が広がりましたが、そうした専門職も上位グレードに昇格するためには、広い範囲の人々に影響を及ぼすことが含まれることがほとんどです。

特に対外折衝力、自己アピール力、協調性などのコミュニケーション力は、採用面接でも表出しやすい能力ですので、採用面接での合否にも影響しやすい力だと思います」

人事評価基準の中でも、「人間力」はいま、ホットな項目といえる。そして磨くことで、現在在籍する社内評価のみならず、広く市場価値のある人材になっていくことができそうだ。

取材・文/石原亜香利

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