山茶花の読み方はなんとなくイメージがついても、そのものが何を指すのか、意味や由来まで合わせて正確に答えられる人はそう多くありません。山茶花と名付けられた由縁や歴史、ツバキとの違いなど山茶花について詳しく解説します。
山茶花は「サザンカ」と読む
山茶花は決して難しい漢字の組み合わせではありませんが、すらすらと読めない人は少なくありません。字の並びを見ても読み方が連想しにくいのはなぜなのでしょうか。そうなった経緯は長い歴史の中にあります。
なぜ山茶花と書くの?
サザンカはツバキやチャノキの仲間で、日本では西南地域に古くから生息する野生の常緑小高木(ヒイラギ)です。中国ではツバキを「山茶花(サザンカ)」と名付けていたため、ツバキに似たサザンカに山茶花を付けたとされます。
江戸時代初期の園芸書に「茶山花」と書かれているものもあることから、長い歴史の中で誤記が重なり「サザンカ」と読まれるようになったと考えられています。
山茶花の分布・開花時期・基本情報
山茶花はもともと野生の植物でしたが、今ではおよそ300の品種が作られており、基本情報は以下のようになります。
学名 |
Camellia sasanqua |
開花時期 |
サザンカ系園芸品種群:10~12月 カンツバキ系園芸品種群:11月~3月 ハルサザンカ系園芸品種群:12月~4月 |
和名 |
サザンカ(山茶花) |
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科名/属名 |
ツバキ科ツバキ属(カメリア属) |
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原産地 |
本州の山口県、四国、九州、沖縄 |
庭木や街路樹として利用されることが多い常緑樹で、鉢植えや地植えで栽培できます。
山茶花の歴史
山茶花は長らくツバキと混同されていました。万葉集に山茶花の記述があるものの、江戸時代初期まで山茶花の名は文献には登場しません。江戸時代に入り、11代将軍・徳川家斉が山茶花を好んだことから盛んに栽培されるようになりました。
現代では山茶花は街路樹として利用されることもあります。これは山茶花が大気汚染や酸性雨に反応しやすいことを利用したもので、環境悪化のサインを送る役目を果たしているのです。
山茶花を観察しよう
昔からツバキと同種とみなされていた山茶花。ツバキとの違いと山茶花を観察するときの注意点を紹介します。
山茶花とツバキとの違い
山茶花とツバキの違いは主に3点あります。
花の形
山茶花とツバキの花を横から観察すると、山茶花の花は扁平(へんぺい)な形で花びらは横に広がっているのに対し、ツバキの花は立体的で厚みがある形となっています。
葉の形と色
山茶花の葉はふちが大きくギザギザしていて、ツバキは山茶花に比べ滑らかです。葉を日に透かして見ると、山茶花は中心が黒っぽいのに対し、ツバキは葉脈が透けているのが見てとれます。
花の散り方
山茶花は花びらが一枚ずつ落ちるのですが、ツバキは花の付け根から花ごと落ちるのが特徴的です。このようによく観察すると、山茶花とツバキがまったく違う植物であることがよくわかります。
山茶花を触るときは見るときはチャドクガに注意
山茶花を観察するときは、素手で触れないように注意しましょう。チャドクガの幼虫が潜んでいるかもしれないからです。
チャドクガの幼虫である毛虫に触れると、かゆみを伴う赤い丘疹(きゅうしん)が現われます。かゆみが治まるまでに10日~2週間はかかるため、皮膚科の診察と治療を受けたほうがよいでしょう。
山茶花の手入れの際は、ゴム手袋や軍手の着用をおすすめします。
山茶花の花言葉
山茶花は秋から初冬にかけて愛らしい花を咲かせます。そんな山茶花の花言葉を見ていきましょう。
花の色で違う山茶花の花言葉
山茶花全体には、「ひたむきさ」「困難に打ち勝つ」といった芯の強さや凛としたイメージの花言葉があります。ピンク・白・赤の三色それぞれの花言葉は以下のようなものがあります。
ピンク |
永遠の愛 |
白 |
あなたは私の愛を退ける・愛嬌(あいきょう) |
赤 |
謙譲・あなたがもっとも美しい |
山茶花の雑学
「山茶花の垣根に人を尋ねけり」これは正岡子規が山茶花を詠んだ俳句です。歌謡曲の曲名になるほど山茶花は人々にさまざまな形で愛されてきました。
やさしい効能と香り高き山茶花茶
ツバキ科の植物である山茶花には、種から抽出される山茶花油や山茶花茶があります。
山茶花油
山茶花の油にはツバキ油と同じようにオレイン酸が多く含まれており、肌や髪を乾燥から守り柔軟性やツヤを与える効果が期待できます。
山茶花茶
山茶花茶は鹿児島県や宮崎県周辺で古くから愛されてきたお茶です。山茶花の新芽を摘んで乾燥させ、沸騰したお湯を少し冷まして注ぐと、香りゆたかな山茶花茶を楽しめます。
全国にある山茶花の代表的な名所
山茶花は日本全国の公園、寺社仏閣でも見ることができます。
三重県 飯南町粥見 |
高さ約12m・幹まわり約150cm・枝はり約15m・推定樹齢150年以上 天然記念物 開花時期:11月下旬~12月上旬 |
東京都 亀戸中央公園 |
50種約4,000本が植えられている 開花時期:11月初旬~1月末 |
福岡県 石垣山観音寺 |
高さ約8m・幹まわり158cm・推定樹齢350年のハルサザンカ(久留米市指定天然記念物) 開花時期:2月~3月 |
紹介したほかにも、山茶花を楽しめる名所は数多くあります。日本の固有種である山茶花を愛でながら、昔の人々のように風流をたしなんではいかがでしょうか。
構成/編集部