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本人の許可を得ず写真や動画を撮影する行為は「肖像権」の侵害に該当する?しない?

2022.09.24

写真週刊誌やテレビのワイドショーなどでは、不祥事やトラブルに関する写真や動画が、当事者に無断で撮影・公開されるケースがあります。

写真や動画の無断撮影・公開は、本人の名誉やプライバシーを侵害しているように思われますが、法的に問題ないのでしょうか?

1. 本人に無断で写真・動画を撮るのは違法?問題ない?

本人の許可を得ずに写真や動画を撮影する行為については、いわゆる「肖像権」の侵害が問題になります。

「肖像権」とは、容貌を勝手に撮影されたり、自分の写真などを勝手に商業利用されたりしない権利です。「人格権」と「パブリシティ権」の2種類に分類されますが、報道目的で撮影される写真や動画については、主に人格権の侵害が問題となります。

1-1. 無断撮影に関する違法性の判断基準

最高裁平成17年11月10日判決の事案では、刑事被告人の法廷における姿を写真週刊誌の記者が撮影した行為につき、人格権の侵害が問題となりました。

最高裁は、「肖像権」という言葉を用いてはいないものの、

「人は、みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有する」

という従前の最高裁判例を引用しました。そのうえで、

「人の容ぼう等の撮影が正当な取材行為等として許されるべき場合もある」

として、無断撮影について不法行為(民法709条)が成立するかどうかは、以下の事情を総合考慮したうえで、人格的利益の侵害が社会生活上受任の限度を超えるものといえるかどうかによって判断すべきと判示しました。

・被撮影者の社会的地位
・撮影された被撮影者の活動内容
・撮影の場所
・撮影の目的
・撮影の態様
・撮影の必要性
など

1-2. 最高裁の判断から考える、無断撮影が違法かどうかのボーダーライン

本人に無断で写真や動画を撮影することが違法かどうかは、上記の事情を総合的に考慮したケースバイケースの判断となるため、一概にはいえません。しかし、前掲の平成17年最高裁判決における事実認定と当てはめると、一定の参考になります。

同最高裁判決の事案では、無断撮影が刑事被告人の動静を報道する目的でなされました。さらに、無断撮影が行われたのは裁判所の法廷で、傍聴人に公開された場所でした。

しかし最高裁は、以下の3点を理由に挙げて、無断撮影を違法であると結論づけました。

①裁判所の許可を受けることなく、小型カメラを法廷に持ち込み、刑事被告人の動静を隠し撮りしたのであり、撮影の態様は相当なものとはいえない

②刑事被告人は手錠をされ、腰縄を付けられた状態の容ぼう等を撮影されたものであり、このような様子をあえて撮影する必要性も認めがたい

③刑事被告人は、写真撮影が予想される状況の下に、任意に公衆の前に姿を現したものではない

特に①や③の判示からは、隠し撮り・不意打ちのような形で行われた無断撮影は、不法行為に該当し違法となる可能性が高いことが読み取れます。

また、①で示された「裁判所の許可を受けることなく」という条件からすると、路上やオープンな施設などでの無断撮影よりも、撮影禁止の施設内における無断撮影の方が、違法と判断される可能性が高いでしょう。

たとえ報道目的であっても、無断撮影が常に正当化されるわけではなく、撮影時の状況に応じて違法性の有無が判断されます。

2. 写真・動画を本人に無断で掲載・放送するのは違法?問題ない?

撮影した写真や動画を、本人に無断で掲載・放送する場合には、肖像権の侵害とは別に、名誉毀損とプライバシー権侵害が問題になります。

2-1. 名誉毀損・プライバシー権侵害に当たる場合は違法

写真・動画の無断掲載・放送につき、名誉毀損やプライバシー権侵害が成立する場合、行為者は被害者に対して不法行為に基づく損害賠償責任を負います。

また、名誉毀損については刑法上の「名誉毀損罪」が成立し、「3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金」に処される可能性があります(刑法230条1項)。

2-2. 名誉毀損(罪)の成立要件

刑法上の名誉毀損罪は、以下の要件をすべて満たす場合に成立します。

①公然と行われた言動であること
②言動の中で、何らかの事実を摘示したこと
③当該言動が、他人の社会的評価を下げる内容のものであること
④①~③の事実を認識・認容していたこと(犯罪の故意)

ただし、以下の要件をすべて満たす場合は、名誉毀損罪は成立しません(公共の利害に関する場合の特例、刑法230条の2)。

(a)言動が、公共の利害に関する事実に関係すること
(b)言動の目的が、専ら公益を図ることにあったと認められること
(c)言動の中で摘示した事実について、真実であることの証明があったこと

また、(c)の真実性の証明については、摘示した事実が真実だと誤信したことにつき、確実な資料・根拠に照らして相当の理由がある場合は、名誉毀損罪が不成立となります(最高裁昭和44年6月25日判決)。この場合、犯罪の故意が否定されるからです。

なお、刑法上の名誉毀損罪が成立しなくても、写真・動画の無断掲載・放送に違法性があり、かつ被害者に損害を与えた場合には、不法行為に基づく損害賠償が認められる余地があります。

2-3. プライバシー権侵害の成立要件

プライバシー権侵害は、プライバシーに関する事実を公表されない法的利益と公表する理由を比較衡量して、前者が優越する場合に成立すると解されています(最高裁平成6年2月8日判決、最高裁平成15年3月14日判決)。

したがって、報道目的で写真・動画を無断掲載・放送する行為も、被害者に重大な不利益を与えてまで報道する必要性がないと判断されれば、プライバシー権侵害による損害賠償の対象です。

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
https://abeyura.com/
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