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著作権マーク(C)、登録商標マーク(R)、商標マーク(TM)はなぜ記載しなければならないのか?

2022.09.25

ゲームやキャラクターに関する記事や広告などでは、「(C)」「(R)」「TM」などの表示が行われることがあります。

これらはいずれも、商品の権利などに関する表示ですが、なぜ記載されているのでしょうか? 記載する必要はあるのでしょうか? 法的な観点からまとめました。

1. 権利等に関するさまざまな表示の意味

ゲームやキャラクターなどの商品・創作物については、権利等に関するさまざまな表示が行われることがあります。主な権利等に関する表示は、以下のとおりです。

①著作権マーク「(C)」
「Cマーク」「マルシー表示」などと呼ばれることもあります。「C」は”copyright”の頭文字で、著作権の保護対象であることを示すマークです。

②登録商標マーク「(R)」
「Rマーク」「マルR」などと呼ばれることもあります。「R」は”registered trademark”の頭文字で、登録された商標であることを示すマークです。

③商標マーク「TM」
「TM」は”trademark”の略称で、商標であることを示すマークです。主に未登録の商標について付されます。

2. 「(C)」「(R)」「TM」などはなぜ記載されているのか?

「(C)」「(R)」「TM」などの表示は、日本の法律において義務付けられたものではありません。しかし一部の事業者では、以下の理由からこれらの表示を商品・サービスに付している例が見られます。

2-1. 条約や米国法における取扱いを受けた慣習

著作権マーク「(C)」については、著作権の保護に関する「万国著作権条約」(1955年発効)において、権利保護を受けるための要件として規定されています。

万国著作権条約のように、著作権の発生に登録や著作権マークの表示を要する方式は「方式主義」と呼ばれています。

これに対して、同じく著作権の保護に関する「ベルヌ条約」(1887年発効)では、登録や著作権マークの表示を不要とする「無方式主義」が採用されています。

アメリカは、国内において伝統的に方式主義を採用していたため、ベルヌ条約を批准せず、万国著作権条約のみを批准している状態でした。

これに対して日本は、ベルヌ条約と万国著作権条約の両方を批准していました。

日本における著作権は無方式主義ですが、万国著作権条約における保護要件を満たせば、アメリカなどのベルヌ条約未批准国でも著作権の保護を受けることができます。

そのため日本でも、著作物について著作権マークを表示する例が多数見られるようになりました。

しかし、アメリカは1989年にベルヌ条約を批准したほか、未批准であった中南米諸国も次々にベルヌ条約を批准し、無方式主義に移行しました。その結果、現在ではほとんどの国がベルヌ条約を批准しています。

ベルヌ条約がスタンダードになったことにより、万国著作権条約の保護を受けるために著作権マークを表示する意義は薄れました。しかし、万国著作権条約時代の名残で、現在でも著作物に著作権マークを表示している事業者が多数あります。

これに対して登録商標マーク「(R)」については、アメリカの商標法において、表示により商標権侵害に関する相手方の悪意を推定させる効果が認められています。

日本の商標法では、商標登録表示は商標権者等の努力義務にとどまりますが(商標法73条)、アメリカにおける取扱いに倣った表示を行う事業者が多数存在する状況です。

2-2. 商標の普通名称化を防ぐため

登録商標マーク「(R)」や商標マーク「TM」については、商品やサービスの名称が一般化してしまい、商標としての機能を失うことを防ぐ目的で付されることがあります。

たとえば「エスカレーター」という語は、元々アメリカ企業のオーチス・エレベーター社の登録商標・商品名でした。

しかし現在では、エスカレーターといえば「階の間を行き来する昇降装置」を意味する普通名称であり、特定の商品を指すものであるとは一般に認識されていません。

このように、商品・サービスが非常に幅広い認知度を獲得した場合、その名称が普通名称化してしまい、商標としての機能を失ってしまう可能性があります。

このような事態を避けるために、自社の商標であることをアピールする狙いで、登録商標マークや商標マークが付されるケースも多いです。

3. ゲームやキャラクターの紹介記事では、「(C)」「(R)」「TM」などを記載すべきか?

「(C)」「(R)」「TM」などの表示は、商品やサービスを提供する事業者が、自社の権利を守るために付すマークという位置づけです。

ゲームやキャラクターを紹介する記事の中で、「(C)」「(R)」「TM」などの表示を記載している例をよく見かけます。

しかし、商品やサービスを提供する事業者ではない記事の執筆者は、これらの表示を記載する必要はありません。法的に表示を義務付けられてはいませんし、表示しても自分の権利を守ることに繋がるわけではないからです。

もしゲームやキャラクターの紹介記事の中で「(C)」「(R)」「TM」などの表示が記載されていれば、それは慣習に基づくものか、あるいはメーカーに対する自主的な配慮に基づくものであると考えられます。

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
https://abeyura.com/
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